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数字を読み解く

内需型産業の中途採用増は今年への期待の表れ、活性化した中途採用市場の形成には道遠し

内需型産業の中途採用増は今年への期待の表れ、活性化した中途採用市場の形成には道遠し

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 厚生労働省が5月初めに公表した2015年3月の有効求人倍率は1.15倍となり、好景気だった2000年代半ばを上回り、バブル期並みに達しました。正社員の有効求人倍率も0.71と2月を0.01ポイント上回りました。これは正社員の調査を始めて以来、過去最高だった14年12月に並ぶ水準です。

 正社員の新規求人数は14年の夏以降ほぼ1になっており、15年3月は1.07になり、上昇傾向が続いています。また失業率も3.4%と完全雇用状態になっています。雇用状況の改善というよりも逼迫状態になっており、15年度の中途採用も増えそうです。日本経済新聞社が上場企業などを対象にした調査によると非製造業の採用計画は前年比11.1%増、製造業も同4.0%増となっています。

 背景には非製造業の業績回復への期待があります。14年度は消費増税で賃上げ分が相殺され、実質所得がマイナスになりました。そのため国内消費が低迷しましたが、15年4月以降は増税の影響が一巡します。さらに原油安の影響で物価に押し上げ圧力がかかり始めています。この2つの要因で今春の賃上げは、実質的な所得を確実に高めます。すでに3月の実質消費支出は前月比2.4%増になっており、回復基調に入っていると判断できそうです。内需型の産業が「今年度こそ」と期待していることが中途採用増にも表れているわけです。

 ただ国内の非製造業の生産性は一部の企業を除き、必ずしも高くありません。米国に比べるとその水準は半分程度です。これは給与水準にも反映されるので、転職環境としては手放しで喜べるものではありません。総合スーパーや外食産業の出店増などに伴う中途採用増は、所得環境を大きく好転させる転職市場が形成されつつあるとは言いがたいでしょう。日本の非製造業が米国並みの生産性水準を達成するため、専門家を外部から招き入れるようになれば、もっと活性化した中途採用市場が形成するのですが……。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)