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数字を読み解く

個人消費に影響大きい実質賃金、景気回復の恩恵が大企業以外にも波及

個人消費に影響大きい実質賃金、景気回復の恩恵が大企業以外にも波及

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 東京では梅の香りが漂い始め、日に日に春めいてきましたが、2015年度は個人も経済面で春を実感する年になりそうな予感です。今回は2月下旬に公表した日本経済研究センターの短期経済予測から今後の賃金に関する予測を紹介します。

 日本の実質賃金は11年度から4年連続で低下する見通しで、個人消費低迷の原因となっています。14年度は消費税引き上げもあり、顕著に落ち込み、個人にとっては回復感に乏しい年になったわけです。実質賃金は実際に手にした名目賃金を消費者物価で割り引いたものですが、これを細かく要因分解しますと、労働生産性に労働分配率と交易条件(輸出物価/輸入物価)を掛け合わせた値です。

 それぞれの要素を見ていきますと、労働生産性はリーマンショックの影響が大きく表れた09年度以外はプラスの伸びを維持しています。今後も好調な企業収益が続くと考えられ、伸び率も改善する可能性が高いでしょう。交易条件は原油価格だけでなく、天然ガス価格も下がりはじめ、輸入物価の下がり方は円安下でも顕著になってきました。短期経済予測では4ー6月期には貿易赤字から黒字に転換するとみています。

 問題は労働分配率です。1990後半には54%前後で安定していましたが、2002年度から低下し、約2%ポイント低下しています。非正規雇用の増加や賃金水準の低いサービス業に従事する労働者が増えていることを反映した動きと考えられます。

 しかし1月の正規雇用者の有効求人倍率は14年12月に引き続き、0.7以上を維持し、増加が見込まれる情勢が続いています。そのため労働分配率も下げ止まりが期待でき、実質賃金の上昇による個人消費の増加が予測されます。消費主導の景気回復で、その恩恵は、大企業以外にも広がることが15年度は期待できるでしょう。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)