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数字を読み解く

円安差益による収益構造の改善で産業界の雇用拡大へ

円安差益による収益構造の改善で産業界の雇用拡大へ

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 11月は2015年4月から消費税率が10%に上がるのか、判断基準となる7−9月期の国内総生産(GDP)の成長率が公表されます。消費税は14年4月から5%から8%へ引き上げられましたが、この引き上げ分をカバーするほど賃金は上がらず、GDPの6割を占める消費は低迷しています。9月の家計調査では前年同月比でマイナス5.6%でした。4−9月の平均もマイナス5.3%です。

 賃金が増えず、消費が低迷したたまでは景気後退が避けられませんから日本銀行は追加の金融緩和を決めました。米国は量的緩和を終了しており、今回の緩和で円安が促され、日本の輸出企業は13年度と同様にもう一度円安差益を享受できる可能性が高いと言えそうです。

 日本の輸出数量は伸び悩んでいますが、輸出企業は数量を増やすよりも、円安差益による収益構造の改善を選択しています。政府は、収益環境の改善に伴ってもう一段の賃金引き上げ、雇用の拡大を産業界へ迫るつもりだと思います。

  国民の多くは、財政再建や社会保障財源の確保のために消費増税の必要性は理解していても、家計を直撃します。法人税率引き下げの議論も行われており、企業優遇ではないかとの反発が強まる恐れがあるからです。

 9月の有効求人倍率は3年4カ月ぶりに悪化しましたが、製造業の新規求人状況は前年同月比で7.3%増と8月1.6%増から再び上昇しています。円安による輸出企業を中心とした収益環境の好転、既述した政府の圧力で、雇用市場は「しばらく」改善すると考えられます。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)