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第21回 ほう・れん・そう編 答えは相談者の胸の内に

第21回 ほう・れん・そう編 答えは相談者の胸の内に

プロフィール
山田敏弘(やまだ・としひろ)岐阜大学教育学部シニア教授(専門:日本語学・方言学)
1965年岐阜県生まれ。名古屋大学卒。名古屋大学大学院博士課程前期課程修了。大阪大学大学院博士課程前期課程を経て博士取得(文学)。国際交流基金派遣日本語教育専門家としてローマ日本文化会館で勤務経験を持つ。著書は「国語を教える文法の底力」「国語教師が知っておきたい日本語文法」(くろしお出版)、「日本語のしくみ」(白水社)、「日本語のベネファクティブ」(明治書院)、「その一言が余計です。」(ちくま新書)、「あの歌詞は、なぜ心に残るのか」(祥伝社新書)など。

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ご連絡いただきありがとうございます。
いただいた原稿は**日までにお戻しする予定です。
よろしくお願いいたします。

 大学法人に奉職している私には商談の経験がありません。それだけに今回は客(依頼者)としての立場で、どのような関係に好感度を抱いているかお話ししようと思います。

 大学教員には、少額であれば予算執行が認められています。パソコン関連用品から報告書の印刷まで、年間数十万円というわずかな金額とはいえ、いろいろな営業担当からお声がけをいただきます。

 この担当なら任せてもいいと感じる一番の要素は「すぐに連絡をくれること」です。私からの連絡は急ぎでなければメールで行うのが一般的ですが、その連絡に対して1日以上待たされることは、ほとんどありません。簡単なメールで構わないので、お願いした仕事の進捗状況を客に知らせておくことが大切だと思います。

 例えば「ご連絡いただきありがとうございます。いただいた原稿は**日までにお戻しする予定です。よろしくお願いいたします」というメールには、簡単ですが報告だけでなく、感謝とお願いが含まれています。それだけの返事が早急に届くだけで信頼できると感じられるのです。

 もちろん、その担当にすぐ何かを依頼するようになったわけではありません。まめに顔を出してくれる中で、ちょうどよいタイミングで来てくれたときに頼みごとをして、そこからいろいろと依頼するようになりました。俗に「foot in the door」と言われる方法ですが、「ちょっと相談に乗ってもらえませんか」と商談とは思わせない雰囲気で姿を現したのがきっかけでした。

 大学で仕事を多く任される人物はだいたい、世話好きでとりあえず何でもやってみようと思っているタイプに多いので、売り込みではなく相談があると言って研究室を訪れるのは効果的な営業手法になるでしょう。私は、まんまとその担当の術中にはまったということかもしれません。それでも、しょっちゅう顔を出してもらえれば悪い気はしません。断っておきますが、盆暮れの付け届けはありませんのでご心配なく。

 さて、実際の商談ですが、長い目で考えてくれる担当Aと一回一回にこだわる担当Bがいます。予算が限られている世界ですから、今回はあまり利益が出なくても引き受けておくことでつないでおこうと思ってもらえれば、こちらもそのことは忘れません。次はまず、担当Aに相談するのが人情というもの。一回の利益にこだわる担当Bは、会社に言われているからこだわらざるをえないのでしょう。つまり、担当Bではなくてもその会社とは取引ができるということですから、担当Bに情は湧きません。釈迦に説法かもしれませんが、たまには「負けるが勝ち」と客の側になってみるのも一計です。

 日本型ビジネスは情のビジネスとも言われます。長期的に信頼関係を築けるよう、あせることなくお互いの距離を少しずつ縮めていきましょう。

まめなコンタクトは長けた営業トークに勝るとも劣らず。言葉の使い方も人との接し方も丁寧さは効果的ということをお忘れなく。