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ビジネスで役立つ!ことばのお作法

第18回 商談・打ち合わせ編 見えないところにこそ心配りを

第18回 商談・打ち合わせ編 見えないところにこそ心配りを

プロフィール
山田敏弘(やまだ・としひろ)岐阜大学教育学部シニア教授(専門:日本語学・方言学)
1965年岐阜県生まれ。名古屋大学卒。名古屋大学大学院博士課程前期課程修了。大阪大学大学院博士課程前期課程を経て博士取得(文学)。国際交流基金派遣日本語教育専門家としてローマ日本文化会館で勤務経験を持つ。著書は「国語を教える文法の底力」「国語教師が知っておきたい日本語文法」(くろしお出版)、「日本語のしくみ」(白水社)、「日本語のベネファクティブ」(明治書院)、「その一言が余計です。」(ちくま新書)、「あの歌詞は、なぜ心に残るのか」(祥伝社新書)など。

事例 アイコン

素材敬語:尊敬語、謙譲語
対者敬語:丁重語、丁寧語

 商談や打ち合わせについて、前回に続いてもう一つ気を付けたいのは噂話です。たとえば大切な商談が会議室でまとまろうとしているとき、廊下で「あの○○社の担当者、よく分かっていないみたい……」というような会話が聞こえたらどうでしょうか。たとえそれが事実であっても、せっかくの苦労が水の泡になることもあります。

この担当なら任せてもいいと感じる一番の要素は「すぐに連絡をくれること」です。私からの連絡は急ぎでなければメールで行うのが一般的ですが、その連絡に対して1日以上待たされることは、ほとんどありません。簡単なメールで構わないので、お願いした仕事の進捗状況を客に知らせておくことが大切だと思います。

 敬語は二層構造です。一つは、話し相手に対する敬語です。「です・ます」のような丁寧語はもちろん、聞き手に対する敬語は、敬語の使い方がどんなに初心者でも気を付けます。「そうおっしゃられましても」のような二重敬語や、「お求めできますよ」のように謙譲語と尊敬語を取り違えた形であっても、敬意は込められています。敬語を使ってくれていると聞き手が感じればよいのですから、間違っていても一生懸命に敬語を使えば傷は少ないのです。

 もう一つ、敬語には素材に対する敬語というものがあります。たとえ話し相手が気の置けない同僚であっても、話の中に出てくる人物が顧客の企業であったりするときには気を付けなければなりません。「商談が終わったから、もう帰るみたいよ」と敬語なしで言っても、聞き手の同僚は許してくれるかもしれませんが、やはり「帰る」という動作をする他社の人が聞いたら気を悪くします。このような登場人物という素材に対する敬語は案外、忘れがちですが、「お帰りになるみたいよ」と、裏表のないところを見せることも必要なのです。

 先に例に挙げた会話のように「よく分かっていないみたい」については、やはり尊敬語を使って「お分かりになっていないみたい」とするのが最低限必要です。事実に変わりはないかも知れませんが、ここは話し手側を主語にしてみましょう。「我が社にまだ十分に理解できていない点がある」と言えば、落ち度がこちら側に移ります。それが肝要なのです。

 担当者が奔走してまとめた話を、周辺の人がぶちこわすなんてことはよくあります。せっかく来ていただいた講師が、受付の無愛想な対応で気を悪くしないよう、事情を一番よく理解している人が玄関で出迎えるなどということは、私たち大学教員にとっても日常的です。商談は社を挙げて取り組むものと心得て、最新の注意を払いましょう。

壁に耳あり障子に目あり。
噂話をするなら商談の後、くれぐれも慎重に。