ビジネスパーソンのキャリアアップ・転職について考えるニュース・コラムサイト

ビジネスで役立つ!ことばのお作法

第13回 会議編 視覚に訴える要素を全面に

第13回 会議編 視覚に訴える要素を全面に

プロフィール
山田敏弘(やまだ・としひろ)岐阜大学教育学部シニア教授(専門:日本語学・方言学)
1965年岐阜県生まれ。名古屋大学卒。名古屋大学大学院博士課程前期課程修了。大阪大学大学院博士課程前期課程を経て博士取得(文学)。国際交流基金派遣日本語教育専門家としてローマ日本文化会館で勤務経験を持つ。著書は「国語を教える文法の底力」「国語教師が知っておきたい日本語文法」(くろしお出版)、「日本語のしくみ」(白水社)、「日本語のベネファクティブ」(明治書院)、「その一言が余計です。」(ちくま新書)、「あの歌詞は、なぜ心に残るのか」(祥伝社新書)など。

事例 アイコン

■レジュメ(résumé)

  1. 概要、要約、摘要(特に研究発表や論文、口頭発表の内容を簡潔にまとめたもの)
  2. 履歴書(特にビジネス用語として)

 大量の資料を持ち帰ったのは、もはや過去のこと。現在では資料をタブレット端末やパソコンで閲覧し、ペーパーレス化を図っている会社や組織が多く見られます。しかし、レジュメだけは紙を使うところも多いようです。

 レジュメとは、フランス語のrésumer(要約する)の過去分詞で、「要約されたもの」の意味。「新宿」を「しんじく」、「手術」を「しじつ」と言うように、「ジュ」が「じ」に直音化すれば「レジメ」ともなります。どちらでも同じ意味ですので、ご心配なく。

 プレゼンや研究発表では「要約」の原義が生きていて、節として分けられた観点に、それぞれ言いたいことがまとめて述べられています。データや他者の説を引用し、自分の考えを述べるのがレジュメの役割です。ビジネスでは、これが「議事次第」のような項目一覧の意味でも用いられますが、これは日本でしか通じない独特な用法ですから、本来は分けて考えるべきものと言えます。ちなみに、英語ではrésuméという言葉を履歴書(curriculum vitae)の意味で使うことがあるので、ご注意を。

 さて、会議でプレゼンをする際に用いるレジュメで気を付けたいことは何でしょうか。紙でもプレゼンソフトでも同じ過ちが、よく見受けられます。それは盛り込みすぎの一語に尽きます。

 話す言葉と目で追う言葉、どちらが多くの情報を伝えるか考えてみてください。音声言語のほうが圧倒的に多くの情報を伝えます。それと同じ内容を紙やプレゼンのスライドに込めても、あまり意味はありません。むしろ、視覚に訴える要素こそ、紙やスライドに提示すべき情報になります。

 それが写真やイラスト、あるいは話の要点が絞られて図式化されたスライドなのかは、それぞれに話者の意図によって選択するべきものですが、要は、話し言葉でできない点を補完するものであってはじめて、レジュメで示すべき資料となるのです。

 話し言葉は線条的、つまり時間軸に沿って一次元に伝わります。話された内容相互の関係は、意識的に提示しなければ伝わりません。「まず」「次に」「最後に」のような順序を表す接続表現も、話し言葉を二次元化していくアイテムの一つですが、やはり視覚的に捉えられるに越したことはありません。

 それを、時間がくれば切り替わってしまうスライドよりも、見返したいときに見返せるレジュメに載せておけば、話全体を俯瞰し、なおかつキーワードで理解できることになります。細部は付録(appendix)の資料に任せ、レジュメでは要点のみを示す。これが会議で伝えたい内容を理解させるレジュメの作り方の基本です。

レジュメは要約。
盛り込みすぎることなく要点を図式化し、
論点の相互関係が見通せるものに。