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ビジネスで役立つ!ことばのお作法

第10回 あいさつ・お礼編 印象を変える手書きの一言

第10回 あいさつ・お礼編 印象を変える手書きの一言

プロフィール
山田敏弘(やまだ・としひろ)岐阜大学教育学部シニア教授(専門:日本語学・方言学)
1965年岐阜県生まれ。名古屋大学卒。名古屋大学大学院博士課程前期課程修了。大阪大学大学院博士課程前期課程を経て博士取得(文学)。国際交流基金派遣日本語教育専門家としてローマ日本文化会館で勤務経験を持つ。著書は「国語を教える文法の底力」「国語教師が知っておきたい日本語文法」(くろしお出版)、「日本語のしくみ」(白水社)、「日本語のベネファクティブ」(明治書院)、「その一言が余計です。」(ちくま新書)、「あの歌詞は、なぜ心に残るのか」(祥伝社新書)など。

事例 アイコン

□何かをしてもらっても、忙しくてついお礼を忘れてしまう
□お礼は品物を送っておけば十分だと考えがちだ
□字が下手なので、手書きで何か書くことがほとんどない

 上記の3つの選択肢のうち、該当するが項目がひとつでもあった人は、ビジネスでも何でも伸び悩む可能性が高いと言えそうです。なぜ、そう言えるのでしょうか。

 いかなるときでも、最低限のマナーとしてお礼は大事ということです。私も仕事柄、新聞や雑誌の取材を受けることがありますが、一生懸命に考えて文章を送っても、「届きました」というメールの返事さえない担当者もいます。それでも後日、考えた文章が掲載されている見本紙(誌)が送られてきたときに、「ありがとうございました」と一言が添えてあるだけで、受け取る側の気持ちは変わります。いつかまた、一緒に仕事をするきっかけにつながるかもしれません。

 皆さんにもきっと、口頭で直接ではなくても、ありがとうという趣旨のメモ書きが添えてあるだけで、気分が良くなった経験があるはずです。むしろ気持ちを伝えるのに、手書きのひと言が口頭以上に効果的なケースもあります。

 人は他人から何かをしてもらったとき、お礼を言う人と言わない人に分かれます。ビジネスでも人生でも、成功するのは言うまでもなく「お礼を言う人」。マナーはさることながら、お礼の一言は次なるビジネスチャンスへの「ファストパス」となりえるからこそ、忘れてはならないのです。

 お礼は、ちょっとした心遣いで差がつきます。その点では手書きが一番。手紙はおっくうだという人もハガキか、せめて一筆箋を机の中に用意してみませんか。ハガキの簡単な礼状であれば短時間で書けますし、何か物を送るにしても手書きの一筆箋が添えてあれば、受け取った人は丁寧な印象を受け、うれしくなることもあるでしょう。

 女性に比べ男性は、小学校の国語(書き方)の先生に「字が下手」と言われてしまった経験を持つ人が多いのではないでしょうか。そのせいで手紙を書くのを躊躇する人も少なくないと思いますが、字は個性が表れる代表的な要素。第8回でも例に出した坂本龍馬は、個性のある独特な字体で多くの人に書状を送っています。漢文体の硬い手紙も多いですが、姉の乙女には土佐方言を交えて気楽な気持ちで本心を書いています。誰でも、その人らしい字があるものです。龍馬を見習って筆まめになりましょう。書きやすいペンを探して傍らに用意しておくと、自然と筆が進むようになるかもしれません。

 日本型ビジネスは情のビジネスとよく言われます。手書きの文字は情に訴えます。デジタル化社会となり、日ごろのやり取りがメール全盛となってしまった時世だからこそ、ときにはアナログに手書きの一言で気持ちを伝える機会を持ちましょう。

お礼は人間関係を良好にする第一歩。
手書きで一筆したためてみることも、お忘れなく。