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第8回 あいさつ・お礼編 締めくくりは未来志向で

第8回 あいさつ・お礼編 締めくくりは未来志向で

プロフィール
山田敏弘(やまだ・としひろ)岐阜大学教育学部シニア教授(専門:日本語学・方言学)
1965年岐阜県生まれ。名古屋大学卒。名古屋大学大学院博士課程前期課程修了。大阪大学大学院博士課程前期課程を経て博士取得(文学)。国際交流基金派遣日本語教育専門家としてローマ日本文化会館で勤務経験を持つ。著書は「国語を教える文法の底力」「国語教師が知っておきたい日本語文法」(くろしお出版)、「日本語のしくみ」(白水社)、「日本語のベネファクティブ」(明治書院)、「その一言が余計です。」(ちくま新書)、「あの歌詞は、なぜ心に残るのか」(祥伝社新書)など。

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○○○○様
いつもお世話になっています。
実家で作った干し柿が送られてきたので、
おすそわけいたします。
皆さんでどうぞ、召し上がってください。
山田敏弘

 12月は歳暮の時期ですが、中元や歳暮のような伝統的な習慣に関わらず、贈り物は昔も今も変わることなく社会の潤滑油となって人の心を潤します。贈り物を考えるとき、さりげなく言葉を添えるとさらに喜ばれます。長い手紙を添えるのは苦手という人も、数行で伝える一筆箋はコツさえ覚えておけば簡単に書けますので、ぜひ筆を取ってみましょう。

 一筆箋は、ひとつのことだけを書くもの。硬い時候のあいさつも、かしこまった「拝啓」など頭語を用いるかしこまった構成も必要ありません。相手の名前から書き始めれば十分で、失礼なことはありません。それでもあいさつの言葉から書きたいという人は、話し言葉と同じように「いつもお世話になっています」と始めてもいいでしょう。「お元気ですか」や「ごぶさたしています」でも、気持ちが込もっています。幕末の英雄である坂本龍馬さながらに「一筆啓上仕候」と書き始めるのも、たまには有効です。自分の気に入ったフレーズを参考に、気軽に書けばいいのです。

 用件は短くシンプルに。お礼、通知、近況報告など、最近では無料対話アプリのLINE(ライン)やフェイスブックなどの交流サイト(SNS)が活用されていることを手書きで伝えれば、字そのものがラインでいうスタンプとなって、受け手の心にあなたの印象を刻みます。

 敬語のマニュアル本には、「『去年』は縁起が悪いから『昨年』を使いなさい」「相手の名前は必ず上部に書きなさい」などと、禁止事項や決まりごとが多く書かれています。確かに、それらの配慮は最低限必要ですが、気にするあまりに手紙を書くのを躊躇してしまっては本末転倒です。さまざまな配慮は書き慣れてくれば自然と身に付いていくものですので、まずは気軽に書ける一筆箋から書き始めてみましょう。

 一筆箋や手紙を書くとき、私が気をつけていることがひとつだけあります。それは最後を過去形で終わらないことです。礼状でも「ありがとうございました」で終わってしまっては、過去を振り返っただけの印象を与えかねません。築いた関係を今後もつないでいきたいと思えばこそ、「今後ともよろしくお願いいたします」や「今度は、一緒に飲みに行きましょう」などという未来志向の言葉で締めくくりたいものです。

 手書きならではの良さが一筆箋にはあります。気持ちを大事に、気軽に書いてみましょう。

一筆箋は古くから存在するSNSのようなもの。
気軽に書いて、お世話になった人に贈り物と一緒に真心を届けましょう。