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第7回 電話・メール編 抑揚で肝心要を際立たせる

第7回 電話・メール編 抑揚で肝心要を際立たせる

プロフィール
山田敏弘(やまだ・としひろ)岐阜大学教育学部シニア教授(専門:日本語学・方言学)
1965年岐阜県生まれ。名古屋大学卒。名古屋大学大学院博士課程前期課程修了。大阪大学大学院博士課程前期課程を経て博士取得(文学)。国際交流基金派遣日本語教育専門家としてローマ日本文化会館で勤務経験を持つ。著書は「国語を教える文法の底力」「国語教師が知っておきたい日本語文法」(くろしお出版)、「日本語のしくみ」(白水社)、「日本語のベネファクティブ」(明治書院)、「その一言が余計です。」(ちくま新書)、「あの歌詞は、なぜ心に残るのか」(祥伝社新書)など。

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「お忙しいところ申し訳ありませんが、先日の面接の件でもう少し伺いたいことがあります。5日(金)17時にお時間をいただけるようでしたら伺いたいと思いますが、ご都合はいかがでしょうか」

 電話の音声は、携帯電話でも固定電話でもほぼ同じで、おおよそ300ヘルツから3400ヘルツまでしか聞こえないと言われています。そのため、これより低い冷蔵庫のブーンという音や鈴虫の声は、電話を通して聞こえないことがあります。

 男女差はありますが、人間の実際の音声はこれより広い音域をもちます。つまり、電話は実際の音声の一部しか伝えていないのです。電話を通すとこもった声になるのは、このためです。特に男性が普段、話し声の基本周波数は、これよりもやや低いとされます。もちろん、実際には周波数が複数のオクターブにもなる倍音も聞こえますので、電話で男性の声が伝わらないわけではありません。

 このことを踏まえて、電話で伝わりやすい音声を考えてみましょう。上の文で確実に伝えたい部分をどのように伝えたらよいかというと、まずは、ゆっくり、はっきり話すことです。次に、少し高い声で話してみましょう。このような際立たせ方を「プロミネンス」といいます。問いに対する答えの部分や、特に強調したい部分には、このプロミネンスという技法を用います。皆さんも日ごろ、強調したい部分に自然とアクセントを置いたりしていませんか。重要な点は、プロミネンスで際立たせるのが有効なのです。

 プロミネンスは内容を正しく伝える際にも重要となります。「一昨日、1次面接を受けた会社から、2次面接の連絡があった」は、「1次面接を」にプロミネンスを置けば、その直前に切れ目があると感じるため「一昨日」は「2次面接の連絡があった」にかかるよう捉えられますが、「1次面接を」にプロミネンスがなければ、「一昨日」は直後の「1次面接を受けた」にかかると感じます(反対に音声がない場合に、書いただけでは正しく伝わらない可能性もあります)。

 電話で伝わりにくい音声は、ほかにもあります。サ行音やハ行音の子音は、口腔内で摩擦をつくり、音を出します。無声摩擦音は特に、電話では伝わりにくい音です。音にはソノリティー(sonority)という階層があり、最も伝わりやすい母音から最も伝わりにくい無声破裂音まで、さまざまな音があります。無声摩擦音と無声破擦音を含む「シチ(shichi)」よりも、すべて有声音の「ナナ(nana)」のほうが聞こえやすく、雑音の中でも伝わりやすくなります。「シチジ」よりも、あえて「ナナジ」と言ったほうが伝わりやすい場合もあることを頭に入れておくと、「正しさ」と「伝わりやすさ」を上手に使い分けることができます。

よりよく伝えるには音の特性をよく知り、
抑揚や言葉選びに注意しましょう。