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ビジネスで役立つ!ことばのお作法

第5回 電話・メール編 言葉は安易に抜かない

第5回 電話・メール編 言葉は安易に抜かない

プロフィール
山田敏弘(やまだ・としひろ)岐阜大学教育学部シニア教授(専門:日本語学・方言学)
1965年岐阜県生まれ。名古屋大学卒。名古屋大学大学院博士課程前期課程修了。大阪大学大学院博士課程前期課程を経て博士取得(文学)。国際交流基金派遣日本語教育専門家としてローマ日本文化会館で勤務経験を持つ。著書は「国語を教える文法の底力」「国語教師が知っておきたい日本語文法」(くろしお出版)、「日本語のしくみ」(白水社)、「日本語のベネファクティブ」(明治書院)、「その一言が余計です。」(ちくま新書)、「あの歌詞は、なぜ心に残るのか」(祥伝社新書)など。

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○○株式会社 営業2課 田中さま
いつもお世話になってます。△△の小林です。プロジェクトの件で、ご相談したいことがあるんですが、お暇な時間はありますでしょうか。ご連絡ください。

 今では当たり前の連絡手段になったメール。ビジネスにおいてメールのマナーが取り上げられることはしばしばですが、明確な答えがないのも事実です。上記の例文を基に、改善するべき点を順番に考えていきます。

 まずは宛名。これは、友だち同士のメールでしょうか。「田中さま」と「さま」をひらがな書きするのは、ビジネスメールでは避けましょう。やわらかさを表出したいという意図は理解できますが、正式ではない印象を与えます。また、大切な相手であれば、下の名前を抜かずにフルネームで「田中一郎様」とすることで、相手を丁重に扱っていることが印象づけられます。
 次に冒頭。「いつもお世話になっています」という表現自体は、ビジネスで広く用いられますが、ここでは、「なってます」が気になります。話し言葉でついつい抜いてしまいがちな「い」も、書き言葉では省略しないように注意します。もちろん、より丁重に「なっております」とするのもよいでしょう。「あるんです」も、書き言葉では「あるのです」にします。いわゆるら抜きことばも同様に、小さな言葉は正式さの証し。面接でも注意したい点ですので、言葉を安易に抜かないよう注意しましょう。
 最後は致命的な欠点ですが、「いつ、お暇ですか」という聞き方にあります。「いつ」など疑問詞を含む疑問文は、その他の部分が真であることを前提としています。つまり、この場合は「田中さんには暇な時間がある」と考えているからこそできる問い方ということになってしまうのです。相手が忙しいかもしれないと配慮して、「お時間をいただけないでしょうか」としてはいかがでしょうか。締めの一文にある「ご連絡ください」もいただけません。このような依頼表現の待遇性については、次回にお話ししたいと思います。

 日々膨大なメールと格闘する中で身に付いてしまった我流の書き方を、改めて見直す機会を持つといいでしょう。

時間に追われていても、
いい仕事をするには息抜きも大事。
しかし、言葉も息抜きも「抜きすぎ」にはご注意を。