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ビジネスで役立つ!ことばのお作法

第1回 面接編 宛名の極意は水戸黄門

第1回 面接編 宛名の極意は水戸黄門

プロフィール
山田敏弘(やまだ・としひろ)岐阜大学教育学部シニア教授(専門:日本語学・方言学)
1965年岐阜県生まれ。名古屋大学卒。名古屋大学大学院博士課程前期課程修了。大阪大学大学院博士課程前期課程を経て博士取得(文学)。国際交流基金派遣日本語教育専門家としてローマ日本文化会館で勤務経験を持つ。著書は「国語を教える文法の底力」「国語教師が知っておきたい日本語文法」(くろしお出版)、「日本語のしくみ」(白水社)、「日本語のベネファクティブ」(明治書院)、「その一言が余計です。」(ちくま新書)、「あの歌詞は、なぜ心に残るのか」(祥伝社新書)など。

 文化庁の国語に関する世論調査(2013年度)によると、「〜る」「〜する」を名詞や英単語に付けて動詞化する造語が世代を超えて使われているという結果が出ました。「愚痴る(ぐちる)」「事故る(じこる)」「サボる」あたりの言葉は、耳障りになることなく浸透していると言えそうですが、ビジネスシーンで「アポる」「コピる」などと聞こえてきたら、どのように感じるでしょうか。
 言葉は時代とともに進化しますが、言葉の使い方も基本的なビジネスマナーを身に付けているかどうか判断する上では重要な要素になります。そこで、気持ちよく聞こえる言葉の使い方の一助になるよう「ビジネスで役立つ!ことばのお作法」と題し、転職活動やビジネスにおけるシーンごとに事例を踏まえて紹介するコラムを連載します。執筆者は岐阜大学教育学部シニア教授、山田敏弘さんです。ぜひ、参考にしてください。

事例 アイコン

1.○○株式会社 ○○部○○課 ○○○○課長様
2.○○株式会社 ○○部○○課 ○○○○課長殿
3.○○株式会社 ○○部○○課課長 ○○○○様

 昨今、メールで面接説明会に申し込むことも普通のこととなりました。そのときに気をつけたいのが宛名の書き方です。1〜3のうち、正しい書き方はどれでしょうか。
 正解は3です。「殿」は「様」ほど高くない、軽い敬意を表す言い方です。現在でも官公庁などで用いられることはありますが、面接をお願いするメールで用いることは適切ではありません。向田邦子の「字のないはがき」では、実父からの手紙の宛名が「向田邦子殿」となっていたと書かれています。「殿」は身内にも使える軽い敬意を表す言葉なのです。
 また、肩書きと敬称の「様」を併用するときは、肩書きを先に記してから名前を書き、「様」を添えます。長寿番組として人気のあった時代劇「水戸黄門」に出てくるおなじみの決めゼリフ「先の副将軍 水戸光圀公であらせられるぞ」も、肩書き+名+敬称で言っていたことを思い出してもらえれば十分です。

 言葉の使い方には流行もあり、昨今では会社名や部署名に「様」を付けるのも見受けられるようになりました。確かに「○○株式会社 ○○部○○課様」のような付け方は一部で通用していますが、組織名・団体名には「御中」を付けるのが基本。「○○株式会社 ○○部○○課御中」とするのが適切です。
 特に、面接のように相手がどのような立場の人かよく分からない場合には、伝統的な表現が無難です。少なくとも「御中」を付けて、マナー違反をとがめられることはありません。自分の流儀に慣れている人も新たな一歩を踏み出すときには、基本のマナーに立ち返りましょう。

面接は新たな出会いの場。
基本マナーを正しく使いましょう。