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景気動向から転職市場を斬る

第11回2019年上半期

第11回2019年上半期

景気動向は堅調だが人手不足感の解消にはほど遠い

 厚生労働省がこのほど発表した2019年6月の有効求人倍率(季節調整値)は、1.61倍となり前月を0.01ポイント下回った。新規求人倍率(同)は2.36倍と前月に比べ0.07ポイント下回る結果となった。米中貿易摩擦の行方や過去最悪と言われる日韓関係など、国内景気に影響を与える問題が取り沙汰されているものの、少なくとも現段階では「人手不足感の解消」はほど遠いというのが数値からもみて取れる。

スキルを持つ人材は採りたいが、優秀な人材に辞められるのも悩み

 厚生労働省の一般職業紹介状況(19年6月分)をみると、有効求人倍率や新規求人倍率は相変わらず高水準で推移している。正社員有効求人倍率は(同)は1.15倍で前月と同水準、有効求人(同)は前月に比べ0.7%減、有効求職者(同)は0.5%増となった。

 また6月の新規求人(原数値)は前年同月比で4.2%減。産業別では教育・学習支援業同4.6%増、医療・福祉同1.6%増などで増加になったものの、製造業は同12.5%減、サービス業同9.3%減、卸売業・小売業同6.1%減、運輸・郵便業同5.2%減、宿泊業・飲食サービス業同5.2%減など減少となる業種も増えている。

 実際にあるメーカーの人事担当者に聞くと、「採用数は増やしたい。しかし人手不足の中で採用に関わる経費もかさんでいる」と嘆く。中堅のソフトベンダーでは「20人採用しても20人が退職する。純増はゼロ」というのが現実だ。中途採用を確保したいのは本音だが、人手不足ゆえに採用の経費も増大している。

 「スキルを持った人材を採用したいが、同時にスキルのある人材に辞められるのが怖い。採用できても研修費などのコストが発生する。コストをかけても、すぐに辞められるケースもある」と頭を抱える採用担当者は少なくない。

副業の解禁など働き方改革を推進して働きやすさをアピール

 優秀な人材、経験を積んだ人材に辞めてほしくないというのが企業の偽らざる本音。そのために待遇改善や“働き方改革”に積極的に取り組む企業は多い。中小のあるメーカーでは、「夫の転勤で仕事から離れざるを得ない妻もいるだろう。小さい子供に手がかかるために休みがちで、同僚に申し訳ないという気持ちを持ってしまう社員もいる」とし、辞めてほしくないので「テレワークの制度を急遽、実験している」という。

 給与が保証され、在宅でも慣れた仕事ができるなら辞める必要はない、と考える働き手は着実に増えている。企業側もその人材が抜けた後の心配をせずに済む。また収入アップという点で、給与の引き上げだけでなく、副業を認める動きも広がりつつある。

 人手不足対策でAIやIoT、RPAの導入も、引き続き検討課題の上位に位置する。ただ自動化・省人化が機能するまでチューニングのための時間が必要であり、結局はどこかで人が介在する必要が出てくる。そのコストをかけられる大企業は別として、日々の業務を簡素化し、現有の人材で賄えるように業務改革を行うという選択肢も不可欠になる。

 物流業界ではトラックドライバー不足が言われるようになって久しい。鉄道貨物協会がこのほど発表した将来予測では、28年度にトラックドライバー不足が約28万人に達するとしている。17年にボストンコンサルティンググループも同様のレポートをまとめており、それによれば27年度のトラックドライバー不足を約24万人と推定した。確実に20万人をはるかに超えるトラックドライバーが不足に見舞われる。

 物流や流通の業界では、倉庫の自動化を早い段階から進めてきた。マテハン機器も発展し、ほとんどの倉庫業務はコンピューターで管理され、完全自動化できるレベルにある。しかし倉庫がいくら自動化されても、それを運び出す、あるいは倉庫に届ける荷役を担うトラックドライバーや荷役機械のオペレーターがいなければ、流通の機能はマヒしてしまう。

米中貿易摩擦の動向や日韓関係の悪化が不安材料

 内閣府が8月9日に発表した19年4-6月の国内総生産(GDP・季節調整済み)は、実質GDP成長率が0.4%(年率1.8%)、名目GDP成長率は0.4%(年率1.7%)となった。景気動向は緩やかに成長している。

 その一方で米中貿易摩擦の動向や、過去最悪と言われる日韓関係を心配するむきもある。とくに電気・電子産業では米国の関税引き上げで、減速感が高まっている中国経済がさらに悪化する懸念や、半導体関連材料3品目の韓国への輸出厳格化が、半導体市況に与える影響も無視できないという識者もいる。

 すでに中国のスマホ市場の低迷で、半導体装置業界の業績に影響が出ている。エンジニアを派遣する企業では「半導体装置メーカーの一部では、派遣契約解消の動きも出つつある」としている。

 18年12月に、慢性的な人手不足解消を狙って外国人労働者の受け入れを拡大するために「改正出入国管理法」が成立し、19年4月から施行された。特定の産業に限り、在留期間を定めて外国人労働者の受け入れを促進するのが狙いだが、例えば知的労働であるソフトウェア開発や単純労働が主体ながら流通業は特定業種に含まれていない。真に受け入れを求めている業種が選ばれていなければ、人手不足の解消には到底つながらない。

 働き方改革の推進を狙って、19年4月からまず大企業で「原則月45時間・年360時間」とする時間外労働の上限規制が始まった。20年4月からは中小企業も適用範囲となる。持続的な経済成長を果たすためには、労働を取り巻く環境について「人手不足の解消」と「働き方改革の推進」という2つの課題を両立させていくかにかかっている。

有効求人倍率と完全失業率の推移(2010~2018年)
有効求人倍率と完全失業率の推移(2019年1~6月)

有効求人倍率有効求人倍率 完全失業率完全失業率

出所:厚生労働省(有効求人倍率)と総務省(完全失業率)の発表資料を基に作成