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景気動向から転職市場を斬る

第10回2018年下半期

第10回2018年下半期

好調な人材市場の裏で景気動向には不透明感も

 厚生労働省がこのほど発表した2018年12月の有効求人倍率(季節調整値)は、1.63倍で前月と同じ水準となった。新規求人倍率(同)は2.41倍で前月を0.01ポイント上回っている。12月の有効求人(同)は前月に比べ1.7%増となり、有効求職者数(同)も同様に1.7%増となっている。
 こうした数値が示すように、市場での「人手不足」は終わりが見えず、再雇用ばかりでなく定年延長の検討に加えて、政府は12月に外国人労働者の受け入れ増を図るために「改正出入国管理法」を成立させている。

18年10-12月の実質GDPは2期ぶりのプラスに

 総務省統計局が発表した、2018年12月の労働力調査によれば、完全失業率は前月比0.1ポイント改善し2.4%となった。これにより年平均でも2.4%となり、2011年の5.1%以来、2016年の3.1%、2017年2.8%などと下降を続け、8年連続の減少となっている。

 同月の完全失業者数は159万人となり、103カ月連続で減少。前年同月比では15万人減少している。就業者数は6656万人で同114万人の増加。雇用者数は5963万人で同100万人の増加となり、ともに72カ月連続での増加となった。

 慢性的な人手不足を背景に好調な転職市場だが、ここにきて景気動向にやや陰りが見えてきた。内閣府が発表した2018年12月の景気動向指数によれば、先行指数と一致指数、遅行指数のいずれも下降となり、いずれの指数も3カ月後方移動平均ともに7カ月後方移動平均が下降している。こうした状況から景気動向指数(CI一致指数)は「足踏み」という判断となった。

 同じく内閣府がこのほど発表した、2018年10-12月のGDP(1次速報値)によれば物価の変動を除いた実質GDP成長率(季節調整値)は0.3%増(年率換算1.4%増)となり、物価分を上乗せした名目GDP成長率は0.3%増(同1.1%増)と2期ぶりのプラス成長となった。GDPの5割超を占める個人消費は18年夏の自然災害による落ち込みから回復し、実質0.6%増、住宅販売も実質1.1%増、民間の設備投資も実質2.4%増となっている。

米中貿易摩擦の影響で景気減速を懸念する声も

 その一方で、景気の減速を懸念する声は多い。景気の先行きの不透明感を助長するのが、米中貿易摩擦や英国のEU離脱。中国税関総署が発表した19年1月の貿易統計(ドルベース)によれば、対米輸出は前年同月比2.4減、輸入は41.2%減となっている。こうした問題は日本の経済にも大きな影響を与える。かつて中国にこぞって進出した日本の製造業の中には、中国の最低賃金が連続して上昇していることから、すでに自社工場は中国を撤退し、東南アジアなどに移転を終えた企業がある一方で、電子機器業界では中国国内の電子機器の受託製造サービス(EMS)を活用している企業も多い。

 中国からの電子部品や機器の輸出について、米国での関税が引き上げられたことで、中国の提携先から米国への直接輸出だけでなく日本を経由する場合でも報復関税が適用される。このため日本国内の工場を増設してまで、中国生産を縮小する企業も出てきた。人件費は日本のほうが高いが、関税の上乗せ分を考慮すれば日本国内で生産し、対米輸出にしたほうが有利という判断だ。これにより増産に必要な労働力を調達が必要になっている。

 中国の景気減速も懸念される。しかし半導体や電子機器分野は、短期的に一服感はあっても、長期的なトレンドで伸長を続けるという見方が、産業界では根強い。IT(情報技術)の革新でIoTや自動化などというニーズは続くからだ。

IT、ロボティクスによる無人化で人手不足に対応

 自動化に対するニーズは幅広い産業で拡大している。ITの進歩によるところが大きいが、直接的な要因として挙げられるのが「人手不足」だ。自動化やロボット化は、もはや製造業にとどまらず接客を重視するサービス業にも広がっている。

 流通小売業でも自動化に対するニーズは強い。少子高齢化や人口減少で消費量の減少が懸念されるが、同時に人口減は労働力の減少にも表れてくる。すでに流通小売業ではパート社員を集めるのにも苦労する状況。地方であってもパート賃金を引き上げなければ、必要な労働力を集めるのは至難の業だ。コンビニやスーパーをはじめ、流通小売店舗の入り口付近に「正社員・アルバイト・パート募集」というポスターを見る機会も多くなった。

 労働力が集まらないならば、人の行う作業をシステムやロボットに置き換えるしかない。セルフレジやセミセルフレジは普及してきたが、さらに米国の「アマゾン・ゴー」、中国の「ビンゴボックス」のような無人店舗の要素技術開発が進み、実験段階から実用化も始まっている。無人化という波は、確実に日本市場にも到達する。店舗関連のシステムベンダーでは、すでに実用的な無人化技術の開発を完了したところも多い。

 国内では、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催や国土強靭化需要で、土木・建設分野は労働力も資材も不足している。2011年3月の東日本大震災以降、各地で相次いだ大規模地震や豪雨被害などの復旧・復興も、こうした理由で滞りがちだ。

 景気動向が不透明感を増す理由には、国際情勢などが挙げられがちだが、人口減少と労働力不足がすでにジワリと効いている。そのために定年延長に加え、「入管法」を改正してまで外国からの労働者受け入れ拡大に躍起になっている。

有効求人倍率と完全失業率の推移(2010~2018年)
有効求人倍率と完全失業率の推移(2018年7~12月)

有効求人倍率有効求人倍率 完全失業率完全失業率

出所:厚生労働省(有効求人倍率)と総務省(完全失業率)の発表資料を基に作成

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