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景気動向から転職市場を斬る

第9回2018年上半期

第9回2018年上半期

定着率の向上のため待遇改善や勤務形態の多様化が顕著
「働き方改革」背景にテレワーク導入や週休3日制へチャレンジも

内閣府がこのほど発表した2018年4-6月の国内総生産(GDP)成長率(1次速報値)は、実質成長率0.5%(年率換算1.9%)となった。物価変動を織り込んだ名目GDP成長率は0.4%(同1.7%)となり、景気の好調がGDPでも鮮明となった。景気の好調さを背景に、多くの企業が好業績を享受する一方で、より一層“人手不足感”が強調されるようになってきた。

社員の教育・研修に加え、高齢者や主婦層にも触手を伸ばす

 厚生労働省がこのほど発表した、2018年6月の有効求人倍率(季節調整値)は前月比0.02ポイント上昇して1.62倍。新規求人倍率(同)は同0.13ポイント上昇の2.47倍。正社員有効求人倍率(同)は同0.03ポイント上昇の1.13倍などとなった。有効求人倍率が高水準で推移しており、前月の5月には1.60倍と1974年1月(1.64倍)以来、44年4カ月ぶりに1.6倍台となったが、6月はさらに上昇したことになる。

 有効求人倍率が高水準で推移しているだけでなく、総務省が発表した2018年6月の労働力調査によると、完全失業率(同)は前月に比べ0.2ポイント上昇し2.4%となったものの、就業者数は6687万人で前年同月比で104万人増加し、雇用者数も5940万人で同92万人増加となり、ともに66カ月連続の増加となった。完全失業者は168万人で同24万人の減少となり、97カ月連続の減少となっている。

 ちなみに6月の新規求人(原数値)は前年同月比0.2%増。産業別では建設業4.0%増、医療・福祉3.8%増、製造業3.5%増、運輸・郵便業2.0%増、教育・学習支援業0.5%増などが増加。一方で情報通信業11.2%減、宿泊・飲食サービス業3.2%減、学術研究・専門・技術サービス業2.9%減、卸売・小売業2.5%減などが減少となっている。減少といっても新規求人数の数値であり、求人自体は高水準で推移し、現に減少となっている業種でも“人手不足感”が払拭(ふっしょく)されたわけではない。

 多くの産業分野で、企業は人材の確保に躍起になっている。あらゆるものがネットにつながるIoT化などで好調なソフト開発業界では、技術者の中途採用が難しいことから専門知識を持たない人材を採用。社内でみっちりと教育・研修を施すことで、ソフトエンジニアやSEに育てるケースは珍しくなくなった。さらに高齢者や主婦層に目をつける企業もあるほどだ。

部門間で人材をやりくりするも、「多能工化」が不可欠に

 人材の採用とともに、定着率向上のために給与や手当のアップによる待遇改善も進められている。並行して若いファミリー層向けを中心として育児休暇の積極的な取得、育児や介護に必要ならば時短勤務やテレワークも選択可能といったような、“働き方改革”に着手する企業も増えている。そうした改革が定着率の向上だけでなく、転職希望者の誘引にも有利に働く。すでに労働時間の短縮や裁量労働の導入による「週休3日制」の実現に向けた検討を始める企業も出てきた。

 不足する人材を外注先に求めたり、M&A(合併・買収)で確保したりという手法に加え、「必要な人材を社内で調達する」という企業もある。新しい手法というわけではない。比較的人材に余裕がある部門から繁忙する部門に、一時的に人材を融通するという方法だ。ただ社内調達するためには課題もあり、様々な業務に対応するために「人材の多能工化」、つまりマルチタレント化が不可欠になる。人数を充足するだけでなく、スキルも当然ながら必要になるわけだ。

 高度な専門人材の不足が深刻化しつつある分野のひとつに人工知能(AI)がある。マーケティングなどビッグデータ分析、自動運転などAIに対するニーズが高まっている。AIといってもビッグデータ分析からディープラーニングのアルゴリズム構築など、それぞれで異なるスキルが必要になる。そうしたスキルを備えたデータサイエンティストが圧倒的に不足しており、AI普及の足かせになりかねない状況だ。

 AIが単なるブームからビジネスで不可欠な要素になりつつあり、急速に市場ニーズが高まっていることが挙げられるが、それを見越した人材育成や人材の供給体制が整備されてこなかった。技術者をアウトソースするだけでなく、今後、経営戦略の重要な要素なることが確実なAI分野だけに、社内にデータサイエンティストを抱えておくニーズもある。そのためデータサイエンティスト養成講座やセミナーなど、高度な専門人材の育成ビジネスが活発化している。

有効求人倍率と完全失業率の推移(2018年1~6月)有効求人倍率と完全失業率の推移(2008~2017年)

有効求人倍率有効求人倍率 完全失業率完全失業率

出所:厚生労働省(有効求人倍率)と総務省(完全失業率)の発表資料を基に作成