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景気動向から転職市場を斬る

第8回2017年下半期

第8回2017年下半期

景気の明るさの一方で人材不足が常態化
待遇改善や就業形態の多様化が必須に

厚生労働省がこのほど発表した2017年12月の有効求人倍率(季節調整値)は、前月比0.03ポイント上昇の1.59倍となった。新規求人倍率は(同)は2.42倍(前月比0.05ポイント増)、正社員の有効求人倍率(同)は1.07倍(同0.02ポイント増)と相変わらず高水準で推移している。すでに「人手不足」は当たり前の状況となり、企業では人材確保に躍起になっている。

自動車生産好調に加え、電子化進みデバイス需要拡大

 有効求人倍率が高い水準で推移していることを反映して、完全失業率は減少基調だ。総務省が発表した2017年12月の完全失業率は2.8%で前月に比べ0.1ポイントの上昇。完全失業者数は174万人で前年同月に比べ19万人の減少となり、91カ月連続での減少となる。17年の平均でも2.8%となった。16年に比べ0.3ポイントの減少である。就業者数は6542万人で前年同月に比べ52万人増。雇用者数は5863万人で同43万人増となり、ともに60カ月連続の増加となる。

 景気の動向も強含みだ。内閣府が発表した17年10-12月の国内総生産(GDP)の1次速報値は実質成長率プラス0.1%(年率換算プラス0.5%)、物価変動を織り込んだ名目GDP成長率は0.0%(年率換算マイナス0.1%)となった。

 国内では自動車生産が堅調に推移していることに加え、半導体や液晶は中国の政策的な投資の恩恵もあって、日本の電子材料、製造装置メーカーの繁忙が続く。半導体分野はクラウドの普及やIoT(モノのインターネット)化の波が押し寄せ世界のメモリー需要がひっ迫。DRAMやフラッシュも需給がタイトな状態が続いている。

 自動車分野は乗用車の生産台数が順調に増加し、17年は約835万台で前年を50万台近く上回った。単に生産台数が増大しているだけではない。エコカーを中心に自動車の電子化が進み、ADAS(先進運転支援システム)搭載車両も普及してきた。そのためパワー半導体や電子制御ユニット(ECU)、液晶、各種センサーなど車載向け電子デバイスの需要が拡大。同時に組み込みソフト開発も繁忙を極めている。

働き方改革も多くの企業で検討が始まる

 それに追い打ちをかけるのがIoT化だ。従来、情報化では後進的だった流通業でも「デジタルトランスフォーメーション」を合言葉に、人工知能(AI)を活用したダイレクトマーケティングの普及をはじめ、IT(情報技術)革新が加速する。

 このためITエンジニアやソフトエンジニアの不足が常態化している。常に中途採用を前面に打ち出しているが、十分なスキルを持った人材どころか、採用する頭数もそろえられないのが実情。転職先が豊富なため、離職者も増えているようだ。企業によっては「10人中途採用して10人が転職」というケースも起きている。確実に人材を確保するために、新たな動きを見せるソフト開発会社もある。人材調達を狙ったM&A(合併・買収)がそれだ。

 例えば1991年のバブル崩壊の直前、大型コンピューター中心からオープン系システムの普及が始まった時代に、大手コンピューターメーカーから独立して起業したソフト開発企業では、創業社長が70代前後になる。小規模では5~10人程度のエンジニアを擁し、非常にスキルの高い仕事をしている企業は意外と多い。

 そうした企業を丸ごと買収して要員を確保するケースが出てきた。買収までしなくても地方のSIと合弁会社を立ち上げ、出向形態で人材を流動的に配置するケースもある。そうでもしないと当面の人材確保はおぼつかない。中途採用の応募はままならず、ヘッドハンティングも成果が上がらないためだ。

 待遇改善も検討課題だ。「3%の賃上げ」がいわれているが、17年7月末に国際通貨基金(IMF)がまとめた年次報告書でも、「3%以上の賃上げ政策」を政府に求めている。人材の流動性が高まっている背景に、実質賃金の目減りを指摘する声もある。人材を確保するために給与体系の見直しをはじめ、待遇改善を掲げる企業も増えている。

 並行して、政府が提唱する「働き方改革」も多くの企業で検討が始まっている。副業を容認することは問題なしとはいえないが、テレワークや就業時間の多様化、さらに週休3日制の具体的な検討を行う企業も出てきた。ある電子機材メーカーでは営業はテレワーク選択の自由度を高めるのと同時に、管理部門などから週休3日制への移行を目指しているという。

 雇用環境の大幅改善とともに、待遇改善や就業形態の多様化も進む。それだけ選択のチャンスが拡大しているといえるだろう。

有効求人倍率と完全失業率の推移(2008~2017年)
有効求人倍率と完全失業率の推移(2017年6~12月)

有効求人倍率有効求人倍率 完全失業率完全失業率

出所:厚生労働省(有効求人倍率)と総務省(完全失業率)の発表資料を基に作成