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イノベーションを興す次世代リーダーたちの視点

第26回<後編>株式会社よりそう 芦沢雅治氏

第26回<後編>株式会社よりそう 芦沢雅治氏
<はじめに>

前編は、留学からインターネットビジネスに魅せられた経験や、口コミサイト事業から葬儀を核としたエンディング領域にシフトするきっかけなどについて聞いた。後編では、エンディングビジエンスの可能性や展望などについて聞いていく。

終活の総合的なサービスプラットフォームをつくる

―― 葬儀をはじめ、エンディング領域でのサービスは、口コミサイトなどとは違い、リアルとの密接な連動が欠かせません。苦労した点は?

芦沢 葬儀という緊急性の高いニーズに応えるためには、インターネットによる情報提供に加え、24時間、365日体制でお問い合わせに対応するコールセンターが必要です。当初は資金が乏しく私1人でお問い合わせに対応していた時期もあったのですが、すぐに限界がやってきます。
収益が得られるようになってからは、外部のコールセンター業者の力も借りながら、安定的にサービスを提供できる体制を整えることができましたが、何しろなにもかもが未経験です。その段階に至るまでがとても大変でした。

―― このほかの面で大変だったことは?

芦沢 検索エンジンのアルゴリズムが変更になって、問い合わせ件数が急に減ってしまったり、社員を採用してもマネジメントが行き届かず辞めてしまったりと、思うようにならない時期もありました。あらゆる面で歯車がかみ合うようになったのは最近のことです。ようやく先々を見据えて事業に向き合える体制が整いつつあると感じています。

―― 今年の夏に、総額20億円の資金調達に成功したことも関係していますか?

芦沢 そうですね。葬儀に対するニーズも多様化していますし、葬儀以外にも私たちが取り組むべき課題は山積しています。調達した資金を有効に使って、1つでも多くの課題を解決していければと思っています。

―― 仏壇・仏具の販売や墓地や墓石の仲介なども手がけていますね。

芦沢 はい。でも、もう少し引いた視点でエンディング領域を捉えると、高齢者介護や独居老人の問題もありますし、葬儀の後、ご遺族には財産分与や相続手続きなど、頭の痛い問題が待ち構えています。
私たちは「よりそう」を、エンディング領域における困りごとすべてにお応えできるワンプラットフォームにしたいと考えているのは、こうした多様なニーズに幅広くお応えするためなのです。

―― 高齢化は先進国共通の課題です。グローバル展開するお考えは?

芦沢 将来的にはありえるのではないかと考えています。「よりそう」はブランドとサービスフォームを提供し、葬儀の実務は葬儀社さんが担います。つまり民泊のAirbnb、ライドシェアのUber、ホテル予約サービスのOYOと同じ構造を持ったビジネスです。
各国で展開されている地場の葬儀社さんと提携できれば、「よりそう」を海外展開することも十分可能だと思っています。

―― 起業されて約10年。これからどんなふうにビジネスを大きくしていきたいとお考えですか?

芦沢 私はソフトバンクの孫さんを経営者としてとても尊敬していることもあって、ことあるごとに、孫さんが自分と同じ年齢のとき何を成し遂げていたか比較しています。すでに何十倍も差が開いてしまっていますが、少しでもこの差を詰められるよう努力していきたいですね。
葬儀や関連領域の市場規模は4兆円といわれています。このうち10%でもとれれば4000億円。決して達成できない数字ではないと思っています。

―― 世界の「不」を解消するという夢は、いまもまだお持ちですか?

芦沢 はい。まだまだやりたいことの数パーセントも達成できていませんが、まずはエンディング領域で確固たる地位を築き、世の中にはびこるさまざまな課題の解決に貢献したいと思っています。

―― 最後に悩める読者にメッセージをお願いします。

芦沢 私は社会に貢献したいという思いを抱えながら、長い間、自分が何者なのかわかりませんでした。それでも諦めずに試行錯誤したことで、ようやくエンディング領域という本気で取り組めるビジネスを見つけたわけです。じっとしていても自分の使命はなかなか見つかりません。まずは行動を起こすことが大事だと思います。

―― 貪欲に動き続けた結果、目指すべき対象が定まり、経験を積むことで目標の解像度が高まっていったような印象を受けます。

芦沢 決して「これがゴールだ」とわかった上で挑戦したわけではなくて、たくさんの情報に触れ、人と出会い、やっと本気で取り組める目標が見つけたというのが正直なところです。
孫さんは、10割のうち3割は守り、7割は損をしても構わないという覚悟で投資を行っているそうです。大事なのは事前にどこまで冒険できるか、どこまでリスクをとれるか冷静に計算した上で失敗を恐れず、やるべきことを最短で回すことなのだと思います。


<取材後記>

日本の高齢者率は2040年には35.3%に達するといわれている。芦沢氏は少子高齢化の先に待ち構えている多死社会の到来を見越し、これまで葬儀にまつわるワンストップサービスの確立に取り組んできた。芦沢氏は「よりそう」を葬儀に限らず、人々が安心して老後を送るために欠かせない、終活の総合的なサービスプラットフォームに育てたいと意気込む。若き日に夢見た社会貢献の道は、エンディング領域に向かって伸びている。


〜前編はこちら〜

株式会社よりそう 代表取締役

芦沢雅治氏

1985年生まれ、岐阜県出身。2004年、高校を卒業しカナダへの語学留学後、アメリカ・オクラホマ州に移り大学に進学。大学在学中にネットビジネスに出会い、2006年に帰国しインターネットメディア事業を興す。08年、海外での学校建設を支援するNPO法人「SMILE」を設立し、09年には比較サイト運営の「みんれび」(現よりそう)を立ち上げる。11年から本格的に葬儀事業に進出し、「お坊さん便」「よりそうのお葬式」「海洋散骨Umie」「宇宙葬Sorae」など独自サービスを展開。現在は葬儀に加え、墓地・墓石の仲介、仏壇・仏具の販売、相続相談など、エンディング領域においてさまざまなサービスを展開している。