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第26回<前編>株式会社よりそう 芦沢雅治氏

第26回<前編>株式会社よりそう 芦沢雅治氏
<はじめに>

出生数が3年連続で100万人を割り込み、3人に1人が高齢者となる日本。2040年には、年間死者数が160万人を超える「多死社会」を迎えるといわれている。
ライフスタイルの多様化とともに、伝統にとらわれない「終活」に注目が集まるなか、葬儀や埋葬にまつわる環境も大きく変わろうとしている。今回紹介する株式会社よりそうの代表、芦沢雅治氏はいち早くエンディング市場の可能性に気づいた1人。同氏に創業の経緯などを聞いた。

留学先でインターネットに出会いビジネスに開眼

―― 葬儀に関するビジネスに関与されるまでの経歴を教えてください。

芦沢 高校を卒業した2004年にカナダに語学留学して、翌年アメリカのオクラホマ州に渡り大学に進学しました。その後、インターネットに出会い帰国し、日本で情報サイトを運営したり、並行してNPO法人を運営したりしていた時期もあります。
その後、会社を立ち上げ、複数の口コミサイトを運営するようになり、11年から葬儀を中心としたエンディング事業にシフトし、現在に至っています。

―― なぜ、海外に行かれたのですか?

芦沢 一言でいうと、海外に出れば自分が何者なのかわかるかもしれないと思ったからです。幼い頃から世の中の格差や不平等といった社会の「不」の側面を、なんとかして解決したいという思いが強かったのですが、その一方で自分には人に流されやすい面があることを自覚していました。それで海外に出て環境を変えれば自分が何者なのか見極められると考え、留学することに決めたのです。

―― 海外での生活はいかがでしたか?

芦沢 私が留学していた2000年代前半は、日本ではソフトバンクや楽天、ライブドアが台頭していた時期で、世界中でインターネットビジネスに注目が集まっていました。インターネットを活用すれば元手が少なくてもビジネスを興せることを知った私は、早速アメリカ人のルームメイトに声をかけ、日本人向けのSkype英会話サービスを提供したり、英語の学び方を教えるサイトを立ち上げ、メルマガを発行したりし始めました。

―― 手応えはありましたか?

芦沢 最初こそ苦戦しましたが、半年くらい経つと収益が出始め、大きな可能性を感じました。しばらくは勉強と仕事を両立していたものの、急成長するインターネットの魅力には逆らえません。収益を上げれば社会貢献もできるという思いも高まっていたこともあり、思い切って大学を辞め、日本でインターネットビジネスに取り組むことに決めました。

―― 日本に戻ってからはどのような活動を?

芦沢 まずは自由になる資金を得るため、健康や金融、保険にまつわる情報サイトの運営を始め、その後、念願だったNPO法人も立ち上げました。仲間数人と歯科医院を回って廃棄される義歯を集め、貴金属をリサイクルして得た資金で海外の貧しい地域に住む子どもたちのために学校を贈る活動です。
ただNPOに関しては、無償ボランティアと人々の善意を前提とした事業設計では、永続的な体制をつくることはかなり難しいことがわかりました。それでまずはビジネスでしっかり稼げる仕組みをつくってから、社会貢献に取り組もうと考えを改め、「よりそう」の前身となる「みんれび」という会社を立ち上げたのです。

―― 「みんれび」では、口コミサイトを多数立ち上げたそうですが、具体的にはどのようなビジネスに取り組まれたのですか?

芦沢 サイトをつくることは得意でしたから、情報の非対称性が大きく、地域に根差した口コミサイトをいくつも立ち上げて運営していました。歯科医や介護施設、結婚式場など、たくさんのジャンルを扱うなかで、とりわけニーズを感じたジャンルが葬儀社の口コミサイト「葬儀レビ」だったのです。

―― 「葬儀レビ」は、ほかのジャンルとはどう違ったのでしょう?

芦沢 葬儀社の名前と連絡先の情報、口コミを投稿する機能しかないシンプルなサイトだったにもかかわらず、ごく初期の段階から「葬儀社を紹介してくれないのか」といったお問い合わせをいただいていたからです。
その後、詳しく調べてみると、葬儀と周辺領域で4兆円程度の市場規模があるのに、葬儀や埋葬関連の情報を一元的に提供してくれるサービスはなく、一般の人はそれぞれの業者が提示する価格が、適正かどうかを判断できないといった問題があることがわかってきました。

―― 葬儀は身内が亡くなってから準備するのが一般的ですし、核家族化が進み葬儀に慣れている人は少ないでしょうからね。

芦沢 そうなんです。最初の頃は、お客様の問い合わせ電話を24時間、365日、自分の携帯電話に転送して、常に持ち歩いていた葬儀社リストを見ながら対応していたのですが、すぐに1人では対処しきれないほどのお問い合わせをいただくようになりました。 当初は「ネットで集客なんてできるわけない」といっていた葬儀社さんも、この状況を見て可能性を感じてくださるようになり、営業開始から約1年で、300社ほどの葬儀業者さんとご契約していただくことができました。

―― なぜ御社はこれほどのニーズを獲得できたのでしょう?

芦沢 09年から10年にかけて、スマートフォンが広く普及し始めたのは幸運だったと思います。みなさんにもご経験があると思いますが、わからないことがあったらまずはスマホで検索しますよね。とくに葬儀のニーズは突発的に発生するため、スマホとの相性もよかったのではないでしょうか。

―― それで口コミサイト事業からエンディング事業へとシフトしたのですか?

芦沢 少しずつ軸足を移していきました。かつて葬儀社選びといえば、知り合いのツテをたどるか、電話帳を開いて見つけた業者に連絡をとり依頼することが普通でした。しかしスマホの登場によって、情報の入手も比較も容易になるなど状況は大きく変わりました。
とくに、葬儀にまつわる情報は非対称性が大きい分野ですから、必要な情報をワンストップで届けられれば、多くの人によろこんでいただけるはずです。社会的な意義もある仕事だと確信し、葬儀領域に本腰を入れることにしました。


〜後編につづく〜

株式会社よりそう 代表取締役

芦沢雅治氏

1985年生まれ、岐阜県出身。2004年、高校を卒業しカナダへの語学留学後、アメリカ・オクラホマ州に移り大学に進学。大学在学中にネットビジネスに出会い、2006年に帰国しインターネットメディア事業を興す。08年、海外での学校建設を支援するNPO法人「SMILE」を設立し、09年には比較サイト運営の「みんれび」(現よりそう)を立ち上げる。11年から本格的に葬儀事業に進出し、「お坊さん便」「よりそうのお葬式」「海洋散骨Umie」「宇宙葬Sorae」など独自サービスを展開。現在は葬儀に加え、墓地・墓石の仲介、仏壇・仏具の販売、相続相談など、エンディング領域においてさまざまなサービスを展開している。