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第25回<前編>株式会社タベルモ 佐々木俊弥氏

第25回<前編>株式会社タベルモ 佐々木俊弥氏
<はじめに>

国連の予測によると、現在77億人とされる世界人口は、このままのペースで増加し続けると2050年には97億人に達する見込みだという。急速な人口増加と新興国の経済発展は、肉や魚、穀物の需要を爆発的に増加させる。2030年には、タンパク質の需給バランスが崩れ始めるという予測があるほど、食糧危機は差し迫った課題となっている。今回紹介するタベルモは、タンパク質の含有率が乾燥重量の65%に達する微細藻類「スピルリナ」を活用し、迫りくる「タンパク質危機」を迎え撃とうとしているフードテックベンチャーだ。タベルモ代表の佐々木俊弥氏に創業の経緯などを聞いた。

バイオ研究者からフードテックベンチャーの経営者に

―― どうして生物学に関心を持たれたのですか?

佐々木 5歳の頃から緑が豊かな福島県伊達市で育ち、魚釣りや虫捕りなどを通じて自然に親しんだことが、生き物に向けるきっかけでした。小学校に上がる頃には、地球温暖化問題がニュースや教科書でも採り上げられていました。そして、子ども心に生活圏内の自然環境が悪化し、魚や虫が捕れなくなっている感覚もあったので、小さい頃から環境問題にも関心がありました。

―― その後、バイオ研究の道に進まれます。どういう経緯で針路を決められたのですか?

佐々木 高校時代、ヒトゲノム解析やDNAの組み替え技術などが注目されていました。そのとき高校の先生に「未踏領域を目指すならバイオには大きな可能性がある」と勧められたことが大きかったですね。引き続き環境問題にも関心がありましたし、尊敬する先輩もバイオの世界を目指していたこともあって、私もこの道を選びました。

―― 学生時代はどのような研究テーマに携わっていたのですか?

佐々木 学部時代は生態学を学び、メダカの性決定プロセスについて研究していました。魚の性別は水質環境によって大きく左右されるため、環境問題とも関わりが深い研究テーマだといえます。大学院では、生態学に続いて発生学を修めることも考えたのですが、最終的には応用微生物学の研究室を選びました。

―― なぜ応用微生物学を?

佐々木 生物への理解を深める方向に進むのか、それとも生物を利用して何かを生み出す方向に進むかで、ずいぶん悩みました。後者を選んだのは、環境問題を解決するには研究一辺倒ではなく、産業化することが重要だという思いがあったからです。研究対象をサトウキビや穀物などから燃料を得るバイオエタノールの基礎研究にしたのも、研究成果を社会に実装したいという思いからでした。

―― 博士課程修了後、就職されました。どのような思いがあったのでしょうか?

佐々木 環境負荷を減らし循環型の社会をつくるには、誰もが手に入れられる価格で供給する必要があります。実家が商売をしていたことや、以前からベンチャービジネスにも関心があったこともあり、いずれ自分で事業を興す心づもりで企業への就職を選びました。

―― それで現在の会社の母体となる会社に?

佐々木 そうです。当時私の指導教官を務めてくださった先生は、ベンチャー論の講義を担当し、各回著名な経営者を呼ぶなど研究者でありながらビジネス志向が強い方でした。私がちとせ研究所の前身であるネオ・モルガン研究所に就職したのは、講義担当者のひとりだった現ちとせグループCEO、藤田朋宏と出会ったことがきっかけです。

―― 就職されてからはどのようなお仕事を?

佐々木 入社当初はIHIや神戸大学と共同で、ボツリオコッカスという藻を利用して代替ジェット燃料を開発するプロジェクトに関わっていました。食用藻であるスピルリナの量産化プロジェクトに携わるようになったのは、その翌々年からでした。その後、2014年7月にこの事業がタベルモとして法人化されることになり、会社設立と同時に私が代表に就任しました。

―― 燃料から食品へ。藻の種類も用途も異なります。どのように受け止められたのでしょうか?

佐々木 代替燃料より食品のほうが製品化に近いぶん、ビジネスとしての面白みを感じました。生スピルリナを市販するにあたって、より質の高い生産工程の確立が急務となり、静岡県掛川市にある栽培施設に呼ばれたのが、スピルリナとの最初の出会いです。14年春のことでした。スピルリナは加工のしやすい粉末で提供されるのが一般的なのですが、どうしても味が落ちてしまいます。そこで私たちは無味無臭な生の状態での市販を狙っていたのです。


〜後編につづく〜

株式会社タベルモ

佐々木俊弥氏

1985年生まれ。新潟大学理学部を経て、奈良先端科学技術大学院大学に進学。応用微生物学を学ぶ。博士課程修了。博士(バイオサイエンス)取得。2012年、ちとせ研究所(旧ネオ・モルガン研究所)に入社。微細藻類の一種、ボツリオコッカスから炭化水素を抽出し、石油に代わるエネルギーを開発するプロジェクトに従事。14年からは、微細藻類のなかでも、タンパク質を豊富に含むスピルリナを使った食品開発プロジェクトに携わる。14年7月、ちとせグループ内へのタベルモ設立とともに代表に就任。