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第24回<前編>株式会社ハッシャダイ 取締役COO/株式会社ハッシャダイファクトリー 代表取締役 橋本茂人氏

第24回<前編>株式会社ハッシャダイ 取締役COO/株式会社ハッシャダイファクトリー 代表取締役 橋本茂人氏
<はじめに>

地方に住む18歳から24歳までの中高卒者の若者を東京に集め、企業が求める人材に育て上げるスタートアップがある。非大卒者のための就活支援プログラム「ヤンキーインターン」を手掛けるハッシャダイだ。ハッシャダイの取締役で、子会社の代表取締役も務める橋本茂人氏自身は大卒だが、過去の経験から社会にはびこるさまざまな「格差」を体感してきたという。2018年3月に亀山敬司氏率いるDMMグループ入りするなど、新たな動きを見せ始めたハッシャダイはこれから何を目指すのか。橋本氏に聞いた。

予算の大半をブランディングに注ぎ込んだ理由

―― ハッシャダイの事業内容と橋本さんの役割を教えてください。

橋本 ハッシャダイは2015年9月から、非大卒領域の人材育成と就職支援事業を手掛けている企業です。私自身はハッシャダイの取締役と子会社のハッシャダイファクトリーの代表取締役を務めています。

―― 具体的には、どのようなお仕事を手掛けているのですか?

橋本 ハッシャダイは「ヤンキーインターン」というサービス名で、地方出身の中卒、高卒の若者を東京に集め、営業職を目指す「ビジネスコース」と、IT人材を目指す「エンジニアコース」の二本立てで、スキル研修と就業機会を提供しています。もう一方のハッシャダイファクトリーが提供するのは、交通費、滞在費が無料で全国のリゾート地に住み、就業者同士や地域の方々と交流しながら、働き、学べる「ハッシャダイリゾート」というサービスです。

―― 橋本さんがハッシャダイに入社された経緯は?

橋本 きっかけは大学時代に遡ります。僕が大学3年のころ、当時勤めていたバイト先で、後にハッシャダイを創業する久世と出会いました。このバイト先がちょっと変わった会社で、偏差値があまり高くない下位校や中堅校に通う学生を集め、営業経験を積ませて上位校の学生しか採用しないような一流企業に送り込むビジネスを行っていました。

―― 久世さんはどんな印象でした?

橋本 僕は久世より2学年上で、学生スタッフの取りまとめをしていたのですが、彼は入社から瞬く間に執行役員まで任されるほどで優秀でした。その後、久世は大学を中退し、地元の京都で働きながら仲間を集め、ハッシャダイの原型になる活動を始め、僕は大学を卒業して東京の会社に就職後、地元でフリーのマーケターとして働いていました。再度上京したタイミングが久世たちの東京進出と重なったこともあり、仲間に加わりました。当時からSNSマーケティングが得意だったので、久世がその経験を買ってくれたのです。

―― 以前から「格差」問題に関心があったのですか?

橋本 そうです。久世も僕も母子家庭で、いわゆるヤンキーが多いエリアで育ったんです。僕らはたまたま大学で学ぶ機会があったから見聞を広げられ、人生の選択肢を持つことができましたが、進学せず、地元に留まった友だちの多くはそうではありません。職業にしても、生活パターンにしても、限られた選択肢のなかから自分の人生を選ばなければならないわけです。こうした状況を何とかしたいという思いは、社会に出てからもずっと心の中でくすぶり続けいていました。

―― そう考えるに至ったエピソードがあれば、ぜひ教えてください。

橋本 大学2年のころだったと思います。地元の友だちと大学に入ってから知り合った友だちを引き合わせたことがありました。それぞれ気が良い人たちなので、仲良く遊べるものとばかり思っていましたが、現実には、お互いに住む世界が違うとばかりに、まったく交わろうとしなかったのです。とてもショックでした。最も身近な人たちの反応を通して、学歴格差、地域格差、情報格差、経済格差が、どれだけ多くの人たちを分断しているかを、まざまざと見せつけられた気がしたからです。

―― 代表の久世さんからの誘いに応じたのは、そうした経験があったからですか?

橋本 大学生に就業体験を提供し、大企業に就職させることができるのなら、生まれ育った地元に留まっている若者に同じ体験をしてもらうことも不可能ではないと思い、入社を決めました。常々、人に誇れる仕事がしたいと考えていましたし、久世とは大学時代に「いつか自分たちの手で学校をつくりたい」という話をしたこともあったので、決めるならいまだと。ですから躊躇なく入社を決意しました。

―― ヤンキーインターン事業の立ち上げで苦労されたことは?

橋本 売上を回収するまでは、インターン生の衣食住の費用や研修にかかる費用はすべて持ち出しになります。当時はすべて自己資金で賄っていましたから、予算管理はそれなりに大変でした。とはいえ、16年12月に社名を「ハッシャダイ」に改め、サービス名を「ヤンキーインターン」に決めた直後、予算の大半をウェブサイトの構築やブランディングに注ぎ込めたのは、自己資金だったからこそできた決断でした。

―― なぜ、限られた予算をブランディングに費やしたのですか?

橋本 これまで、さまざまな企業や行政機関が「若者支援」に取り組んできましたが、多くの事業が費用対効果に見合う成果が出せないまま縮小したり、撤退したりしています。それは、情報を届けるべき若者に寄り添った取り組みになっていなかったからです

―― 具体的に教えてください。

橋本 最近の若者はテレビをほとんど観ませんし、新聞や雑誌を読む機会もほとんどありません。ですから、これらのメディアにいくら広告予算を投下しても、若者は集まらないと判断しました。若者にとって一番身近なスマートフォンに対応したウェブサイトに、予算の大部分を「張った」わけです。PRにはSNSをフル活用しましたし、若者自身が助けられる側の存在だと自覚していない以上、「若者支援」という受け身な表現は逆効果になりかねません。そこで、スマートでステップアップをイメージさせる「CHOOSE YOUR LIFE」(自分の人生は自分で選べ)という前向きなメッセージを発信することにしました。

―― 結果はいかがでした?

橋本 おかげさまで僕らの読みが当たったようで、すぐに多くの若者から問い合わせや申し込みをいただくことができました。社名変更から2カ月後、NHKさんに取り上げていただき、受け入れ企業側の認知を取れたのもラッキーでした。順風満帆な出足だったと思います。でも課題がまったくないわけではありませんでした。


〜後編につづく〜

株式会社ハッシャダイ 取締役COO
株式会社ハッシャダイファクトリー 代表取締役

橋本 茂人氏

1991年、大阪生まれ。2014年、関西大学商学部商学科卒業後、ITフリーランス人材のマッチングサービスを手掛けるギークスに入社。法人・個人営業や採用PRを経験する。15年、独立と同時に帰郷しフリーのウェブマーケターとして活動後、大学時代からの友人である久世大亮氏と再会。16年、ハッシャダイの前身となる会社に入社する。現在、ハッシャダイ取締役COOおよびハッシャダイファクトリー代表取締役を兼務する。