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イノベーションを興す次世代リーダーたちの視点

第22回<前編>株式会社Moly 代表取締役CEO 河合成樹氏

第22回<前編>株式会社Moly 代表取締役CEO 河合成樹氏
<はじめに>

日本における刑法犯の認知件数は、2017年に約91万5000件となり、2002年のピーク時と比べて67.9%も減少した。しかし体感の治安は必ずしも下がったとはいえない。件数は大幅に減ったとはいっても、路上などで起こる街頭犯罪の発生件数は、依然として高い水準にあるからだ。今回は、こうした身近な犯罪からユーザーを守る防犯メディアや防犯アプリ開発を手がけているMolyの河合成樹CEOに、これまでのキャリアと防犯ビジネスに参入する経緯やきっかけなどについて聞く。

さまざまな職歴を経て育んだ起業の志

―― もともとはグラフィックデザイナーだったそうですね。

河合 私が大学を卒業した頃は、ちょうど就職氷河期のまっただ中。東京の大学に進学する妹と入れ代わる形で、生まれ故郷の石川県に戻りました。こちらでもなかなか就職先が見つからなかったのですが、帰郷後にしばらくして地元の広告代理店の求人に応募したところ、中学時代から更新し続けていたウェブサイトづくりの技量が評価され、未経験ながらグラフィックデザイナーとして採用されました。当時、私が運営していた個人サイトは月間60万人のユーザーが訪れる人気のサイトだったのです。

―― 広告代理店はどのような仕事に携わっていたのですか?

河合 ミニコミ誌を立ち上げたり、ひとりでインターネット事業部を名乗ってサイト構築案件をとってきたりしていました。この会社で過ごした最初の3年はデザイン専業、次の3年は営業との兼務でしたのでとても大変だったのですが、改めてインターネットの面白さに気づけたのはよかったと思います。この仕事を通じて自分がやりたいことが見つかりましたから。

―― それで再び上京を?

河合 その頃のインターネットビジネスの中心地は東京で、新しい挑戦してみたかったですし、本場で勉強したいという気持ちが強かったので、体ひとつで上京することにしました。最初の2年はフリーランスでウェブサイトのプロデュースやコンサルティングに携わり、次の3年は携帯電話会社のポータルサイト運営、その後はAIベンチャーの立ち上げに関わっていたこともあります。

―― どうしてAIベンチャーに関心を持ったのですか?

河合 広告もポータルサイトも数万から数千万規模の人を対象にしたサービスです。だから今度はひとりひとりにサービスを届けてみたいと考え、個人に情報をレコメンドするAIベンチャーに入りました。ただ残念なことに、入社から1年後にサービスから撤退。最終的には廃業してしまいました。メディアなどでも注目されていたのですが、参入のタイミングが早すぎたのでしょう。笑えない状況ではあるのですが、いまでは会社の終わりに立ち会えたのは貴重な経験だったと思っています。

―― その後は?

河合 携帯電話のコンテンツ制作会社に3年ほど在籍しました。当初はアルバイトという約束だったのですが、すぐにデザインチームや営業チームをとりまとめるようになり、最終的には執行役員まで務めさせてもらえたので、とてもいい経験になりました。この会社を辞めたのは東日本大震災がきっかけです。これからの生き方を見直そうと思い退職しました。

―― 東日本大震災は河合さんの心境にどのような変化を与えたのでしょうか?

河合 それまでにも何度となく、自分でサービスをつくってみたいと思っていたにも関わらず、なかなか実行に移せずにいました。そんなときに大震災が起こり、「自分以外に頼れるものはない」「自分の周りは自分で幸せにしないといけない」と痛感し、起業を前提に会社を辞めることにしたのです。

―― 辞めるタイミングで、今後の構想はあったのですか?

河合 辞めたタイミングではまったくなかったです。ただ営業、制作、運営もひととおり経験したので、おそらく何とかなると思っていました。実際に会社を辞めてからはIoTやゲーム関連の仕事をしながら、起業したり自社サービスをつくる準備をしたりしたのですが、大きな変化のないまま3年もの月日が経ってしまいました。そうしたタイミングで自分のやるべきことがはっきり見える出来事が起こります。娘の誕生です。


〜後編につづく〜

株式会社Moly 代表取締役CEO

河合 成樹氏

1977年生まれ。大学卒業後、石川県の広告代理店にグラフィックデザイナーとして入社。広告営業を行う傍ら、ウェブデザインやフリーペーパーの立ち上げなどに携わる。その後、東京へ移住。フリーランスのウェブサイトプロデュース業などを経て、携帯電話会社のポータルサイト運営、人工知能ベンチャーの立ち上げ、携帯コンテンツ制作会社の執行役員などを経験。2013年10月にMolyの前身となるCoorde7を創業。2017年から防犯サービスに事業を絞り、メディア運営やアプリ開発に取り組んでいる。