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イノベーションを興す次世代リーダーたちの視点

第20回<後編>株式会社mazel CEO 佐別当 隆志氏

第20回<後編>株式会社mazel CEO 佐別当 隆志氏

前編は一軒家型のシェアハウス「Miraie」(ミライエ)を運営する一方、シェアリングエコノミー協会の事務局長としても活躍する佐別当隆志氏に、シェアリングエコノミーに関わるようになった経緯と今後の展望について聞いた。後編は事業化の難しさや、ゼロからイチを立ち上げる醍醐味、新しいことにチャレンジする際の心構えなどについて聞く。

三足のわらじを履くシェアリングエコノミーの伝道師

―― 個人会社でシェアハウスを運営される一方、ガイアックスの社員でもあります。それぞれの立場はどのように使いわけていらっしゃるのでしょうか?

佐別当 もともとシェアハウスの運営は個人プロジェクトで、会社での仕事とは別物だったのですが、2015年にガイアックスが事業ドメインの中核にシェアリングエコノミーを位置づけるという方針を打ち出してから、期せずして公私ともにシェアリングエコノミーに関わることになりました。とはいえガイアックスはこの領域においては後発の部類です。会社からは私の個人的な活動を応援する代わりに、私の持っているネットワークや知見を社内に還元してほしいといわれています。

――シェアリングエコノミー協会の事務局長という立場については?

佐別当 15年にリリースした「Share! Share! Share!」という情報サイトを通じて、国会議員の方々と知り合う機会がありました。そのときにシェアリングエコノミーの普及は政府が掲げる重要施策の1つであり、啓蒙と普及には業界団体が必要だという助言を受け、協会設立に向けて動いたこともあって事務局長を務めることになりました。シェアリングエコノミーには企業や行政のほか住民や地域の人々、支援者など、さまざまな立場の個人が関わるため、それぞれの立場の利点を生かしながらシェアリングエコノミーの普及に取り組んでいます。

―― 話を伺っていると順風満帆のように聞こえます。これまで困難に直面したことはありましたか?

佐別当 近隣住民の皆さんを巻き込みきれず、頓挫したプロジェクトもありました。少子高齢化対策や地域振興につながるプロジェクトでも、立場が異なれば物事の捉え方が変わります。つまり行政や地域の理解者だけを見ていては駄目な場合もあるということです。とはいえこうした失敗も次のプロジェクトに向けた重要な知見になりますし、新たな支援者が声をかけてくれることもあるので、まずは動いてみることが大事だと感じています。

―― 民泊やライドシェアなど、海外では当たり前になったシェア文化が受け入れられないという方もいますね。

佐別当 代々木上原で計画中の新しい「Miraie」は、シェアハウスとゲストハウス、保育園の複合施設なので、できるだけご迷惑をかけないように近隣に住む方々と何度も話し合いをしています。

―― 前編の最後に、mazelとしてシンボリックなプロジェクトを立ち上げていきたいと言われていましたが、代々木上原のプロジェクト以外ではどのような取り組みを進めていらっしゃいますか?

佐別当 話ができる範囲ですと、個人プロジェクトとmazelのプロジェクトでそれぞれ1つずつあります。個人プロジェクトとしてはホームスクーリングとハイブリッドスクーリングの解禁に向けた取り組み、mazelとしては多拠点生活を推進する「21世紀の参勤交代プロジェクト」です。

―― 個人プロジェクトから概要を教えてもらえますか?

佐別当 私の娘は週1日しか小学校に通っていません。基本的には私たちがカリキュラムをつくり、自宅では妻や私が娘に教え、語学スクールなどに通わせています。シェアハウスにはアーティストやクリエイターなどが訪れることが多いので、彼らがワークショップを通じて先生役になってくれることも多いです。ただ私たちの家族は学校教育を否定しているわけではありません。せめて学校以外で学ぶという選択肢を正式に認めてほしという立場から、ホームスクーリングやハイブリッドスクーリングが公に容認されるように、行政に働きかけたり情報発信したりしています。

―― 「21世紀の参勤交代プロジェクト」とはどのようなものでしょうか?

佐別当 今年1月から地方創生に取り組んでいる会社と一緒に立ち上げたプロジェクトです。このプロジェクトでは、少子高齢化による地方の過疎化や空き家問題を考えたとき、都心と地方、地方と地方の間を行き来しながら生活する人がもっと増えてもいいという考えの下、こうした問題に関心のある自治体や企業、個人に対して情報発信を行っています。今後は実証実験のモデル拠点をつくり、具体的な取り組みにつなげていきたいと思います。

―― これまで数々の新規事業を立ち上げていますが、新しいチャレンジに取り組むうえで心がけていることはありますか?

佐別当 失敗を恐れないことです。私自身、これまで何度も手痛い失敗を経験しました。1ついえるのは、失敗したからといって命まで取られるわけではないですし、健康である限り挽回するチャンスはあるということです。お金や信用を失えば誰でもへこむものですが、人に話せるくらいまで失敗を消化できれば支援してくれる人も現れますし、何より自分自身の心の強さにもつながります。だから失敗を恐れないようにしています。

―― 最後に転職を検討している読者にメッセージをお願いします。

佐別当 働き方や暮らし方はどんどん多様化していますし、一昔前とは違い、何か事を起こすために必要なコストやリスクは下がっています。最近では週3日勤務や4日勤務、テレワークやダブルワークを推奨する企業も増えており、ビジネスパーソンにとってもチャンスが多い時代といえるでしょう。まずは自身の前にたくさんの選択肢があることを知り、過去の常識や既成概念にとらわれない挑戦をしていただければと思います。


<取材後記>

インターネット黎明(れいめい)期から新規事業を次々と立ち上げた人物の中には、強い個性を前面に押し出している人も多い。しかし佐別当氏にそのイメージは当てはまらない。「最近“弱いリーダーシップ”という言葉が注目されていますが、まさに自分はこのタイプ」と、佐別当氏の笑顔はどこまでも優しい。この優しさと強い信念が多くの人を巻き込み、新しい価値観を生み出す力の源なのかもしれない。


株式会社mazel CEO

一般社団法人シェアリングエコノミー協会事務局長(株式会社ガイアックス)

内閣官房シェアリングエコノミー伝道師

佐別当 隆志氏

2000年にガイアックス入社。新規事業開発に携わる。13年から個人プロジェクトとして、家族とゲストのための一軒家「Miraie」の運営を開始。16年にシェアリングエコノミー協会を設立し、事務局長に就任。17年には内閣官房シェアリングエコノミー伝道師に任命される。同年、ガイアックス在籍のままmazelを創業。現在はシェアリングエコノミーの普及・推進と共助社会を実現するため、公私ともに法規制の緩和、理解の促進に取り組んでいる。