ビジネスパーソンのキャリアアップ・転職について考えるニュース・コラムサイト

イノベーションを興す次世代リーダーたちの視点

第20回<前編>株式会社mazel CEO 佐別当 隆志氏

第20回<前編>株式会社mazel CEO 佐別当 隆志氏
<はじめに>

物、時間、場所、乗り物、能力、お金など、個人や企業が持つ有形無形の資産を有効活用する「シェアリングエコノミー」が日本でも注目され始めている。カーシェアリングやクラウドソーシングなど、世間に浸透しつつあるサービスもあるが、利用者の意識や法規制が現実に追いついていない場合も多い。今回は個人で一軒家型のシェアハウス「Miraie」(ミライエ)を運営する一方、シェアリングエコノミー協会の事務局長としても活躍する佐別当隆志氏に、シェアリングエコノミーに関わるようになった経緯と今後の展望を聞く。

個人プロジェクトとして立ち上げた「Miraie」

―― シェアリングエコノミーに関わる以前はどのような仕事に携わっていたのでしょうか?

佐別当 学生時代は広告会社やマスメディア志望だったのですが、創業間もないガイアックスでインターンをするうち、上の世代がいないネットの世界でゼロからビジネスをつくるほうが面白いだろうと考え、卒業後にそのまま入社しました。それ以来、ほとんどの時間を新規事業開発に費やしています。具体的にはネットカフェ事業やオンラインゲーム事業、内定者向け交流サイト(SNS)や社内向けSNS事業をゼロから立ち上げた経験があります。

―― 初めてシェアリングエコノミーを体験したのはいつですか?

佐別当 2009年ごろだったと思います。当時、事業責任者を務めていた新規事業の撤退が決まるなど、公私ともに生活が大きく変わろうとしていた時期でした。そんなとき、たまたま友人が住んでいたシェアハウスに遊びにいく機会があって、行ってみたらとても驚きました。家族や学生、外国人が家族のように暮らしていて、すごく開かれた空間だと感じたからです。

―― 佐別当さん自身はいつからシェアハウスで暮らし始めたのですか?

佐別当 友人のシェアハウスに遊びに行った、そのすぐ後だったと思います。恵比寿のソーシャルアパートメントに入居して1年弱暮らしました。そこでシェアハウスのスタッフ兼住人でもあったいまの妻と出会って結婚し、子どもも授かりました。当時、シェアハウスがたくさんでき始めていた時期でしたから、探せば家族3人で住める物件もあるだろうと思っていたのですが、実際には子どもがいると入居できない物件ばかり。そこで思い切って自分たちでシェアハウスを建てることにしたのです。

―― お子さんが生まれてもシェアハウスに住み続けたいと思ったのはなぜですか?

佐別当 妻の影響です。台湾人の妻はアメリカのホテル・レストランの専門大学を卒業後、日本の大学院でビジネスデザインを学んでいたのですが、この間、ずっと寮生活をしていて、その後もスタッフとしてシェアハウスで暮らしていました。ですから彼女にとってシェアハウスに住み続けるのは自然な選択だったわけです。実際にダイバーシティーとなる空間で暮らすほうが楽しいですし、経済的でもあります。私自身、都会の閉鎖的な空間で子育てをするのは無理があると感じたので、彼女と考えは一緒でした。

―― 2013年、大崎に「Miraie」を建てられました。大きな決断だったのではありませんか?

佐別当 これまで何度も事業を立ち上げていたので、自分でシェアハウスを建てることに躊躇はありませんでした。そろばんを弾いてもペイできる見込みが立ちましたし、家族とゲストが一緒に住む一軒家型のシェアハウスは当時では珍しかったので、情報発信さえうまくできれば、ほかのシェアハウスとの差別化もできるだろうと踏んで決断しました。

―― 一軒家型のシェアハウスは近隣の方々にどう受け止められたのでしょうか?

佐別当 高齢者が多い住宅街だったこともあって、子育て世代が引っ越してくることを歓迎してくださる方が多かったです。建築前に近隣のお宅へご挨拶に伺ったところ、その中に町内会の副会長さんがいらして、「Miraie」のコンセプトをご説明すると私たちの取り組みをとても面白がってくれました。すごく心強かったです。「ぜひ町内会に入ってほしい」と請われたので、その場で「もちろん入ります」とお答えしました。

―― 完成後、現地ではどのような活動を?

佐別当 リビングスペースを利用してクリエーティブ系のワークショップを開催したり、妻が台湾料理の教室を開いたりしています。もちろん地域の方が参加されることも少なくありません。時には近所にお住まいの方から「インターネットがつながらない」「iPadがほしいけれども、どれを選んだらいいかわからない」といった相談を持ちかけられるくらい親しく交流させていただいています。しかし、品川区大崎の「Miraie」は地域の再開発で近々立ち退かなければなりません。それで渋谷区代々木上原に新しい「Miraie」をつくることにしたのです。

―― 代々木上原につくる新しい「Miraie」には保育園が併設されるそうですね。

佐別当 この物件は私が事務局長を務めるシェアリングエコノミー協会と渋谷区との連携協定がきっかけで着想したプロジェクトで、保育園を運営する学校法人とも協力して待機児童問題の解決にも貢献するシェアハウスにするつもりです。Miraie代々木上原には、シェアハウス、ゲストハウス、保育園に加え、カフェやホームスクーリング機能も備える計画です。建物は年末までには完成し、来年1月にプレオープン、正式オープンは2月を予定しています。

―― シェアハウスの運営で蓄積したノウハウは今後、どのように活用するつもりですか?

佐別当 いまのところ私たちが主体となって、次々とシェアハウスを建てていくような計画はありません。それよりも皆さんが注目してくださるシンボリックなプロジェクトを立ち上げて、シェアリングエコノミーの可能性を拡げていきたいと思います。今後、一定の成果が出たプロジェクトをひな形に、ほかの事業者さんがサービス化、ビジネス化していただいても結構ですし、私たちがコンセプトづくりやサポート側に回って支援することも考えています。


〜後編につづく〜

株式会社mazel CEO

一般社団法人シェアリングエコノミー協会事務局長(株式会社ガイアックス)

内閣官房シェアリングエコノミー伝道師

佐別当 隆志氏

2000年にガイアックス入社。新規事業開発に携わる。13年から個人プロジェクトとして、家族とゲストのための一軒家「Miraie」の運営を開始。16年にシェアリングエコノミー協会を設立し、事務局長に就任。17年には内閣官房シェアリングエコノミー伝道師に任命される。同年、ガイアックス在籍のままmazelを創業。現在はシェアリングエコノミーの普及・推進と共助社会を実現するため、公私ともに法規制の緩和、理解の促進に取り組んでいる。