ビジネスパーソンのキャリアアップ・転職について考えるニュース・コラムサイト

イノベーションを興す次世代リーダーたちの視点

第19回<後編>みらいごとラボ株式会社 代表取締役 岩井 真琴氏

第19回<後編>みらいごとラボ株式会社 代表取締役 岩井 真琴氏

前編では広告会社の営業から専業主婦を経て、ロボットプログラミング教育を手がけるベンチャー起業家に転身するまでの経緯を聞いた。後編では「みらいごとラボ」の展望のほか、新たな領域を開拓するための心構えや、心の支えになった人生の指針などについて聞く。

心からやりたいと思えることに取り組む

―― みらいごとラボでは、これまでどのくらいの方々がプログラミングを体験しましたか?

岩井 2018年1月にワークショップ施設を開設してから、のべ700~800人のお客様に体験していただいています。20年度以降に、小学校のプログラミング教育が必修されるに当たって、子どもたちにどのように学ばせればいいか不安に思っている親御さんはもちろん、育児休暇を利用して教育現場で実際に教えることになる小学校の先生が、お子さん連れでお見えになることもあります。

―― 前編でプログラミング教育に携わった経験を持たずに起業されたと聞きました。ワークショップを運営するに当たって、とくに大事にされていることはありますか?

岩井 「うちの子どもにはまだ早い」「難しすぎるのでは」といった親御さんたちの先入観を払拭し、子どもたちにプログラミングを辛くて苦しい「勉強」ではなく、楽しい「遊び」だと思ってもらえるような環境を整えることです。私も現在進行形でプログラミングを学んでいる初心者のひとりとして、経験がない親御さんやお子さんたちと同じ目線で物事を判断するようにしています。

―― 「遊び」や「楽しさ」を追求するのは、今後も初期プログラミング教育にこだわり続けるということでしょうか?

岩井 もちろんステップアップしたいというお子さんに、さらなる学習機会を提供することもあるでしょう。でも極端なことをいえば、ここでプログラミングの楽しさを知った子どもたちが、将来的に別の教室で専門的に学びたいと思ってくれたら、それはそれで素晴らしいことだと思っています。現状では「STEM教育」「プログラミングの必修化」といったキーワードが一人歩きをしている段階です。堅苦しいことを考える前に、まずは楽しむことから始めてみる。当面はそのきっかけをつくることこそ、私たちの役割だと考えています。

―― 子どもたちにとってプログラミングを学ぶメリットは?

岩井 不安をあおるのは好きではありませんが、今後、人工知能(AI)の技術が進歩すると、多くの職が失われるといわれています。将来、プログラマーにならなかったとしても、幼いうちからプログラミングに欠かせないロジカルシンキングが養えるのは大きなメリットだと考えます。

―― 専業主婦から経営者になりましたが、仕事をするうえで難しさを感じることはありますか?

岩井 一概にはいえませんが、会社員時代のほうが大変だったような気がします。いまは数少ないメンバーで運営していることもあって、いいと思えば即チャレンジできます。会社員時代は避けて通れなかった会議や上司の承認なしに試行錯誤することができるのは、過去のしがらみや常識にこだわらずに挑戦できるということでもあるので、苦労はあっても辛くはありません。

―― これから挑戦したいことを教えてください。

岩井 プログラミングを体験していただく機会をもっと増やしたいと思います。今後は幼稚園や保育園への出張教室や、各地で開かれるプログラミングイベントへの参加を増やすほか、今年の夏には週末限定で神奈川、千葉、埼玉で新たに3店舗を開設する計画もあります。対外的な啓蒙活動と事業拡大によってプログラミングに興味を持ってくださるお子さんをひとりでも増やせればと思います。

―― これまでの経験を踏まえ、よりよいキャリア形成には何が必要だとお考えですか?

岩井 仕事をするうえで大事にしているのは、第一に心からやりたいと思えることに取り組むこと、その次に自らの志を人に伝えることによって舞い込んでくるチャンスを逃さないよう、しっかりアンテナを張ることです。ときには自分が思うような状況にならず、想像していたルートとは異なる道を歩むこともあります。でも人生に無駄なことはありません。私自身も会社員時代、専業主婦時代それぞれの経験が、いまの仕事に生きているのを感じています。目標を達成するルートは幾通りもあるはずです。まずは自分なりの目標を立てること、そしてプロセスにこだわらずに目標に向かって進むことが大事だと思います。

―― 最後に、転職という人生の岐路に立つ読者にメッセージをお願いします。

岩井 私の知人に新卒では第一希望の会社には入れなかったものの、与えられた仕事をものすごくがんばって成果を出した結果、大手企業から引く手あまたになった人がいます。人は努力次第で失敗を挽回することだってできるのです。私には次の時代を担う子どもたちから、ジョブズやザッカーバーグのような優秀な人たちを生み出したいという大きな目標があります。その目標に向かって失敗を恐れず試行錯誤を続けるつもりです。


<取材後記>

みらいごとラボが運営するワークショップ施設には、一般のセミナールームや会議室にありがち無機質な印象はない。クッション素材に覆われた壁面、海外製のロボットやレゴ、数学や科学の入門書が並ぶ光景を目の当たりにすると、大人でさえ遊び心をくすぐられるはずだ。いつの時代も子どもたちに秘められた能力を開花させるのは、遊びで培われる好奇心なのだろう。


みらいごとラボ株式会社 代表取締役

岩井 真琴氏

埼玉県出身。1981年生まれ。東京女子大学で文化人類学を学んだ後、広告会社に就職。その後も複数の広告会社で営業に携わり、2008年に結婚を機に退職。27歳から約5年間、2人の子どもを育てながら専業主婦として過ごす。 17年、主に幼児・児童を対象とした教育サービスを提供する「みらいごとラボ」を設立。翌年、東京都渋谷区内にプログラミングや英語、数学を教えるワークショップ施設を開設した。