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イノベーションを興す次世代リーダーたちの視点

第16回<後編>ディライテッド株式会社 代表取締役CEO 橋本真里子氏

第16回<後編>ディライテッド株式会社 代表取締役CEO 橋本真里子氏

前編では、大手IT企業の受付としてのキャリア、起業の動機、クラウド型受付システム「RECEPTIONIST」(レセプショニスト)の開発にまつわるエピソードを聞いた。後編では、プロダクトにかける思いや将来の展望などを聞く。

最初にプロダクトマネジャーを採用した理由とは?

――  エンジニアの採用はどのように行ったのですか?

橋本 知人やイベントなどで知り合った方などを通じて紹介してもらい、採用にこぎつけました。でもエンジニアより先に採用した職種があります。それがプロダクトマネジャーでした。今でもその判断はすごく良かったと思っています。

―― なぜエンジニアより先にプロダクトマネジャーを採用したのですか?

橋本 アドバイザーであるトレタの最高経営責任者(CEO)の中村さんや、最高技術責任者(CTO)の増井さんから、リリース直後のプロダクトはシンプルであるべきだし、いずれ機能を増やすにしても、プロダクトの一貫性は守り続けるべきだと伺ったからです。

―― 「プロダクトの一貫性を守る」というのは?

橋本 私にはお客様をお迎えする側に長年いましたから、その経験をもとに良いプロダクトをつくる自信がありました。しかしこの経験を具現化するには、エンジニアに私の考えを伝える「通訳」が必要です。まさに、そうした役割を担うのがプロダクトマネジャーの仕事だと知り、ミクシィ時代の知人に経験者がいたことを思い出しました。それが現最高執行責任者(COO)の真弓貴博だったのです。

―― 具体的には、どのような成果がありましたか?

橋本 機能は多ければ多いほど良いと考えがちですが、実際には使われない機能も少なくありません。そこで私とエンジニアの間にプロダクトマネジャーに立ってもらい、話し合いながら本当に必要な機能とそうでない機能を峻別(しゅんべつ)することができました。その結果、開発リソースを無駄にすることなく、誰でも使いやすいシンプルな機能を実現できたと思います。

―― 同じIT業界出身とはいえ、受付業務と開発業務とでは接点は限られます。行動や意識レベルで心がけたことはありますか?

橋本 イベントや会合に足を運んでは自分がやりたいことを積極的に話すようにしていました。結果的にその行動が、人が人を呼ぶ状況をつくり、多くの方々に支援していただくきっかけになったと思います。

―― RECEPTIONISTに込められた「おもてなしの心」は、どんな機能に表れていますか?

橋本 シンプルで使いやすい機能に表れていると思っています。RECEPTIONISTは、一般的な受付システムと違い、内線電話や部署といった概念を持たず、iPadから日常で使っているスマートフォンやチャットツールを介して社員個人を直接呼び出すことができます。
来訪者からすると、担当者の名前は知っていても正確な部署名を覚えていない場合もあるでしょうし、来訪を受ける側にしても異動や組織変更のたびにメンテナンスを強いられるのは面倒です。RECEPTIONISTは、こうした課題を解決することによって、ご利用者に「おもてなしの心」をお届けしています。

―― これからどんな目標を追いかけますか?

橋本 2つあります。1つは国内の受付システム市場でスタンダードな地位を確立すること。iPadを利用した類似製品は既にありますが、圧倒的なシェアを持つプロダクトはまだありません。受付システムといえばRECEPTIONISTという状況をつくることが当面の目標です。
もう1つは「おもてなしの国、日本」から、世界に向けて優れたプロダクトを提供することです。既に日系企業が数多く進出しているインドネシアなどで使われ始めていますので、今後はこうした国々での動向をうかがいつつ、日英以外の多言語化にも力を入れていきます。

―― 目標を達成するためには何が必要だとお考えですか?

橋本 人材です。現在、私を含めメンバーは13人いますが、まだまだ足りないというのが実情です。とはいえ単に人手がほしいわけではなく、日本から世界に通じるプロダクトを生み出したいという思いに共感してくれる方が必要です。これからも引き続き人材採用に力を入れていかなければならないと思っています。

―― 最後に人生の転機にさしかかっている読者にメッセージをお願いします。

橋本 冒頭にも申し上げましたが、私が起業したのは旧態依然とした受付業務に疑問を持ったことと、自分にしかできないことを追求したいと思ったことがきっかけでした。これから新天地に活躍の場を見いだすにしても、改めていまの会社で仕事に打ち込むにしても、日常業務を当たり前だと思ってやり過ごさないでほしいと思います。
常に好奇心を持って日常を見つめ直すと、また違った世界が見えてくることも少なくありません。私は自己成長のきっかけや世の中を変える大きなビジネスチャンスは、そんな日常生活のひとコマに隠れているものだと信じています。


<取材後記>

受付は奥が深い。ビジネスマナーが必要なのはもちろんだが、重要な訪問者の顔やプロフィールを覚え、訪問の目的に応じて立ち居振る舞いや言葉遣いを変えるといった、きめ細やかな対応が求められるからだ。橋本氏率いるディライテッドは日本が誇る「おもてなしの心」を受付システムに込め、世界に広めることを目指している。受付業務で培ったノウハウをいかにプロダクトで表現するのか。彼女たちの挑戦はこれからも続く。


ディライテッド株式会社 代表取締役CEO

橋本真里子氏

三重県出身。2004年3月、武蔵野女子大学(現武蔵野大学)を卒業後、アパレル販売員やテレフォンアポイント、家庭教師を経てトランスコスモスの受付となる。その後、USEN、ミクシィ、GMOインターネットなど、大手企業5社で受付業務やメンバーマネジメントを経験。16年1月、ディライテッドを設立。17年1月、クラウド型受付システム「RECEPTIONIST」をリリースする。