ビジネスパーソンのキャリアアップ・転職について考えるニュース・コラムサイト

イノベーションを興す次世代リーダーたちの視点

第15回<後編>株式会社Progate 代表取締役 加藤將倫氏

第15回<後編>株式会社Progate 代表取締役 加藤將倫氏

前編では、プログラミング学習に悩んだ経験から一転、プログラミングで報酬を得る喜びを知るに至った経緯や、プログラミング学習サイト「Progate」のアイデアが生まれた背景などについて聞いた。後編では、大学を休学してまで創業の意志を貫いた理由や挫折体験、今後の展望などについて聞く。

米国での体験が起業家を目指すきっかけに

――  大学4年になる直前に足を運んだクリエーティブイベント「SXSW」(サウス・バイ・サウスウエスト)が、人生を変える転機になったそうですが、どのような体験だったのでしょうか

加藤 受託開発をするようになって、少しずつスタートアップ界隈の方々と知り合う機会が増えていきました。Beatroboの浅枝(大志)さんもその1人です。ある日、都内のバーで偶然お会いしたのですが、「英語が得意なら、3月に米国で開かれるSXSWに行かないか」と誘ってくださったのです。2014年2月のことでした。

―― 現地ではどのような体験をしたのですか?

加藤 浅枝さんの知り合いの起業家や、有名企業のエンジニアと話をすることができました。皆さん口々に「いま自分はこんなにすごいサービスを作っているんだ」「このプロダクトで世界を変えるんだ」と、僕のような学生にも熱く語ってくれるのです。その姿に感動して、起業家はかっこいいと思いましたね。でも、その一方で悔しさもこみ上げてきました。


―― なぜそう感じたのでしょうか?

加藤 ひとしきり説明してもらった後で「ところで君は何を作っているの」と聞き返されても、大学でサークルを運営しながら受託開発に取り組んでいること以外に、語るべきものがないことに気がついたからです。この人たちのように情熱を持って自分のことを語れるようになりたい。そう痛切に感じました。

―― SXSWでの経験はProgateの開発にどんな影響を与えましたか?

加藤 SXSWに行ったことで、多くの人にプログラミングを広めたいという思いと、起業家になりたいという思いがぴったりと重なった気がします。帰国後、誰にも相談せずに休学の手続きをして、4カ月後には仲間たちと会社を立ち上げ、Progateの開発を始めました。

―― 開発は順調に進んだのでしょうか?

加藤 はい。会社を立ち上げてすぐに、開発のスピードが加速する出来事がありました。あるパーティーで、イーストベンチャーズの松山(大河)さんを紹介していただいたのです。当初、受託で稼いだ自己資金で十分だと思っていたのですが、松山さんから「資金面と広報面でバックアップするから、君たちはプロダクト開発に集中してほしい」という言葉をいただき、支援していただくことに決めました。松山さんも僕らにとって恩人の1人です。

―― スタートアップの立ち上げには困難がつきものです。大きな壁にぶつかったことはなかったのでしょうか?

加藤 資金とプロダクト開発については問題ありませんでしたが、人の面では必ずしも順調ではありませんでした。高校時代の親友であり、立ち上げの苦労をともにした仲間が去ったときは、さすがにつらかったですね。

―― その方はなぜ辞めてしまったのですか?

加藤 サービス開発を進めるにあたって、連日の徹夜という日々が続いていましたから、キャパシティーを超えてしまったのだと思います。いまにして思えば、スタートアップであるということを言い訳に、しっかりと制度を整えず、目の前のことだけに打ち込んでいた結果、少しずつ目指すところがずれてしまったことが原因でした。困難な状況を乗り越えるためには、社内制度を整えることに加え、理念をしっかりと打ち立てなければならなかったのです。

―― リリースから3年。Progateの現状についてお聞かせください。

加藤 現在、Progateは16万ユーザーにご利用いただいています。ユーザーの年齢層は、しばらく25歳から34歳までの方が7割ほど占めていましたが、最近は中高校生向けの「Progate for School」の利用が広がった影響もあり、25歳以下のユーザーが増加傾向にあります。

―― 今後、Progateを通じてどのような未来を築きたいと考えていますか?

加藤 Progateの理念は「初心者から、創れる人を生み出す」こと。とはいえ、全員が全員、エンジニアになるべきだと思っているわけではありません。大事なのはプログラミングという選択肢が誰にでも手が届くように、ハードルを下げて学習機会を提供することだと思っています。「Progateがあったから作る人が増え、テクノロジーが進化した」と言われるようになったらうれしいですね。

―― 海外展開の予定はありますか?

加藤 英語圏のなかでも東南アジアに可能性を感じています。先日、シンガポールのイベントに登壇させていただく機会があったのですが、向こうの人たちはとても優秀ですし、スタートアップ熱が高いのが印象的でした。実際に現地の学生を集めて勉強会を開いてみたところ「ぜひ使いたい」という反応が得られたのは、とてもうれしかったです。オンラインサービスは、どこで火が付くかわかりません。すでに英語への翻訳が終わっているコンテンツもありますので、できるだけ早くリリースしたいと思っています。

―― 最後に、読者にメッセージをお願いします。

加藤 起業の経験から、状況を変えようと思ったら、まず自分が変わることが大事だと思うようになりました。当時、学生だった僕にも学校や親、友人など、しがらみはたくさんありました。でも、それを言い訳にしていては何も始めることはできません。自分を変えられるのは自分だけですし、誰しも自分の人生を生きるべきです。「与えられたチャンスは全部獲りにいく」ぐらいの気持ちでチャレンジすれば、きっと結果は変わってくると思います。


<取材後記>

30代後半以降のエンジニアであれば、80年代から約20年にわたって、プログラマーを志望する若者のたちのバイブル的な存在だった専門誌「マイコンBASICマガジン」(略称ベーマガ)をご存じだろう。現在、活躍しているベテランエンジニアの多くが、この専門誌を通じてプログラミングの基礎を学んだ。Progateは21世紀の「ベーマガ」になれるか。その真価が問われるのはこれからだ。


株式会社Progate 代表取締役

加藤將倫氏

1993年生まれ。愛知県出身。父親の仕事の関係でオーストラリアのパースに移住。小学生から中学校卒業まで過ごす。2011年、東京大学工学部電子情報工学科に進学を機に、プログラミング学習を開始。大学の同期である村井謙太氏(現CTO)、南部旭彦氏(現COO)らが立ち上げたプログラミング学習サークルに参加し、技術の習得に努める。以後、受託開発の請負やスタートアップの支援などを通じて技術力を蓄え、14年7月にプログラミング学習サイトを運営するProgateを創業。現在に至る。