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イノベーションを興す次世代リーダーたちの視点

第15回<前編>株式会社Progate 代表取締役 加藤將倫氏

第15回<前編>株式会社Progate 代表取締役 加藤將倫氏
<はじめに>

2017年6月、米アップルが開催したWWDC2017の基調講演で2人のアプリケーション開発者が紹介された。10歳になるオーストラリア人の少年と84歳の日本人の女性だ。プログラミングが、あらゆる世代に開かれていることを示す例として大きな話題を呼んだが、プログラミングを身近に感じることができる人は、まだまだ少数派というのが現状だ。今回紹介する加藤將倫氏は、東大在学中にプログラミング学習サイト「Progate」を立ち上げ、わずか3年で16万ユーザーを擁するサービスに成長させた。彼はなぜプログラミング教育に関心を抱き、創業に至ったのか、話を聞いた。

「プログラミングの師匠」と出会い、技術に開眼する

――  中学校を卒業されるまでオーストラリアにいらしたそうですね。

加藤 教員を務めている父親が、オーストラリアのパースにある日本人学校に赴任することになり、家族4人で移住しました。父親は3年で契約満了になったのですが、両親はせっかく英語圏にいるのだから、ここで子どもたちを育てたいと考えたようで、中学卒業まで母親と妹の3人でパースに残ることになりました。

―― プログラミングとの出会いは?

加藤 パースでの暮らしを続けている間に、母が現地の大学でITを学び始めました。家にいると、母がプログラミングをする姿を見ていましたし、テレビゲームをしていると、よく「遊ぶ側より、作る側のほうが絶対面白いよ」と言われていたので、気になってはいましたが、実際にプログラミングを勉強したのは大学3年になってからのことです。

――  実際に勉強してみてどうでしたか?

加藤 大学のカリキュラムで最初に触れたのはC言語だったのですが、なかなか上達しませんでした。同期には子どもの頃からプログラミングを学んできた人たちが大勢いて、彼らとの差は歴然でしたね。

―― 状況を打開できたきっかけは?

加藤 同じ頃、スタートアップ起業に苦戦し、プログラミング学習の重要性を痛感していた同期の村井(現CTOの村井謙太氏)と南部(現COOの南部旭彦氏)に誘われて、プログラミングの学習サークルに参加したことがきっかけです。一緒に勉強するようになって学ぶ意欲は高まったものの、プログラミングの初心者の集まりでしたから、一気に技術力が上がることはありませんでした。でも、そんな状況を2つの出会いが変えてくれたのです。
1つが、プロダクト開発を手伝ってくれないかと声をかけてくださった、あるスタートアップの社長さんとの出会い。もう1つが、僕らの状況を見かねて技術的なサポートしてくれることになった、ある上場企業の技術責任者の方との出会いでした。

―― 具体的には、どのような状況だったのでしょうか。

加藤 僕たちが東大でプログラミングサークルを運営しているのを聞きつけたある社長さんから、ウェブサービスの開発依頼が来たのです。話し合いの結果、僕と村井の2人で手がけることにしたのですが、仕事として受けたからには何があっても途中で投げ出すわけにはいきません。優秀なエンジニアのサポートが必要だと考えた僕らは、知り合いのつてをたどって、ある会社の技術責任者の方と巡り合いました。僕らにとって「プログラミングの師匠」のような方です。

――  これまでのプログラミング学習と、師匠の教えの違いはどこにありましたか?

加藤 個々のテクニックを細かく掘り下げて教えるのではなく、まずウェブサービスにはどのような構成要素が必要か、またどういう道のりで学べば効率的かを端的に示してくれたことが大きな違いでした。技術書を読んだり、オンライン学習ツールで勉強したりすれば要素技術は学べます。でもいざウェブサービスを作る段階になると、どこから手をつければいいかわからないというのが、僕らの置かれた状況でした。
それに対して師匠は、開発のスタートからゴールまでを一本の線で結んで説明してくれたのです。全体像を把握した後で「これを学んだら、次はこれ」という具合に教えていただけたので、理解が一気に深まりました。

―― そのサービスは無事、完成したのでしょうか?

加藤 はい。もともと勉強することは好きでしたし、学んだことはすぐに実行に移したいという気持ちも強かったので、部屋にこもり、徹夜で開発を進めたところ、2カ月ほどで無事に完成させることができました。それまで自分が発揮した力に対して報酬をいただいた経験がなかったので、とてもうれしかったのを覚えています。依頼された仕事を最後までやり遂げられたことは、僕たちにとって大きな自信になりました。



―― ウェブ開発の面白さややりがいを知ったわけですね。

加藤 そうですね。ウェブサービスを自分の手で生み出せるようになったことで、人に頼られるようになり、そのうえで報酬もいただけるわけですから、とても楽しかったですね。それ以降は、開発の受託を続ける傍ら、スタートアップのインターンに参加したり、サークルの仲間たちに技術的なノウハウを共有したりする時期がしばらく続きました。

――  Progateを開発した経緯を聞かせてください。

加藤 Progateのアイデアは、サークルでプログラミングを教えるにあたって感じていたことがヒントになりました。1人で教えられる数には限界がありますし、無駄も多い。かといって、すでにあるオンライン学習サービスでは経験上、ウェブサービスを作れるようなるとは思えません。それなら、僕らがプログラミングの師匠から教わったことをウェブサービスで再現したらどうだろうかと思ったことが、Progateを開発したきっかけです。

―― それですぐ開発に着手したのですか?

加藤 いいえ。大学3年生の終わりごろにはProgateの基になるアイデアはありましたが、本格的に開発し始めたのは大学4年生だった2014年6月からです。大学を休学して取り組み出しました。

―― ずいぶん思い切りましたね。

加藤 都内のバーで偶然出会ったBeatroboの浅枝(大志)さんにこの年の3月、米テキサス州オースチンで毎年開かれているクリエーティブイベント「SXSW」(サウス・バイ・サウスウエスト)に連れていっていただいたのですが、そこでの経験がこの決断の後押しをしてくれました。以前から、大学院に進んで大企業に就職するという「規定路線」に疑問を持っていた自分にとって、人生を変える非常に大きな転機になったのです。


〜後編につづく〜

株式会社Progate 代表取締役

加藤將倫氏

1993年生まれ。愛知県出身。父親の仕事の関係でオーストラリアのパースに移住。小学生から中学校卒業まで過ごす。2011年、東京大学工学部電子情報工学科に進学を機に、プログラミング学習を開始。大学の同期である村井謙太氏(現CTO)、南部旭彦氏(現COO)らが立ち上げたプログラミング学習サークルに参加し、技術の習得に努める。以後、受託開発の請負やスタートアップの支援などを通じて技術力を蓄え、14年7月にプログラミング学習サイトを運営するProgateを創業。現在に至る。