ビジネスパーソンのキャリアアップ・転職について考えるニュース・コラムサイト

イノベーションを興す次世代リーダーたちの視点

第13回<後編>ロボットスタート株式会社 代表取締役社長 中橋 義博氏

第13回<後編>ロボットスタート株式会社 代表取締役社長 中橋 義博氏

前編では、日本におけるロボットビジネスの現状と将来性について聞いた。後編では、中橋氏のキャリアの変遷を追いながら、自分が望む仕事に就くために必要な考え方や取り組みなどについて聞く。

保険業界からインターネット業界を経て、ロボットの世界へ

―― ロボットスタートを創業される前は、どのような仕事に関わっていましたか?

中橋 大学を卒業して入社したのは大手保険会社でした。ここで6年間、保険支払業務システムの企画に携わった後、ヤフーに転職したことが大きな転機でした。それからロボットスタートを創業するまで、一貫してインターネット業界で仕事をしていました。

―― いつごろからインターネット興味を?

中橋 コンピューターには小学校低学年の頃から親しんでいましたが、ショールームや友だちの家にあったNECのPC8001や6001に触らせてもらうのが精一杯。それで大学に入るとすぐに、思う存分PCに触れる月刊ASCII編集部に入り、テクニカルライターのアルバイトを始めました。ここで、日本におけるインターネットの始祖に当たるJUNETに触れたのが、インターネットに興味を持つきっかけになりました。


―― 保険会社を辞めたのはなぜですか?

中橋 保険会社時代から自分で運営していた自動車の情報サイトが「Yahoo! サーファーのオススメ」に選ばれたことがきっかけでした。興味を持ってこちらからコンタクトを取ったところ面接の機会をいただき、入社することになったのです。入社してから、私のサイトを選んだのはクルマ好きだった当時の社長(井上雅博氏)だと聞いて驚きました。保険会社は給料も待遇もよかったのですが、インターネットの魅力にはかないませんでしたね。

―― ヤフーではどんなお仕事を?

中橋 毎日数百サイトを閲覧し、ヤフーの検索ディレクトリーに登録する「サーファー」になりました。担当は入社のきっかけにもなった自動車カテゴリーです。その後、モバイル版検索ディレクトリーサービスの立ち上げを経験し、転職してからはリスティング広告事業に携わるようになりました。


―― リスティング広告のどこに魅力を感じられたのでしょうか?

中橋 検索部門にいた頃も楽しかったのですが、マネタイズと直結したビジネスにチャレンジしてみたくなったのです。ちょうど検索キーワードにマッチしたテキスト広告を手がけるGoTo.comというアメリカの会社を知り、日本法人ができたタイミングで連絡したところ、立ち上げメンバーの1人として入社することになりました。GoTo.comはその後、オーバーチュアと社名を改め、ヤフーに吸収されることになるのですが、私が転職したときはまだ営業を開始する前のことでした。


―― その後は?

中橋 検索語と関連して表示されるキーワードや説明文を精査するリードエディターとして、2年ほどPC向けのリスティング広告事業の立ち上げに携わり、2004年に仲間3人とモバイルに特化したリスティング広告を配信するサーチテリアを創業しました。11年にサーチテリアをGMOアドパートナーズに売却してからは、GMOサーチテリアの代表取締役社長とGMOモバイルの取締役を2年ほど務め、14年にロボットスタートを立ち上げています。

―― いまもスマートフォン(スマホ)ビジネスは花盛りです。なぜあえてロボットという未知のビジネスに乗りだしたのでしょうか?

中橋 スマホの普及が一段落し、買い替え需要が中心になるなか、インタビューの冒頭でも申し上げたとおり、ロボットビジネスはインターネットやスマホに続く成長産業だと判断したからです。成長産業はヒトもカネも集まりますし、刺激も多い。やりがいもそれと比例して大きい。もちろん、新しもの好きな性格も大きく作用したと思います。

―― ロボットが普及することで、どのような社会を実現したいですか?

中橋 日本はこれまで、ものづくりに秀でた才能を発揮してきました。しかしビジネスにおいてはPCやスマホ、OS、Webサービスのどれをとっても、米国の後塵を拝してばかりです。でもロボットには、これらと同じ運命をたどってほしくありません。そのためにはロボットの多様性を生み出すエコシステムが必要です。世界随一の規模とレベルを誇る日本のロボットビジネスの成長に貢献し「勝たせる」ことが、この事業に取り組む強いモチベーションになっています。

―― これからロボットはどのように発展していくのでしょうか?

中橋 最近、照明や空調を制御する家庭用のIoT(モノのインターネット化)機器が話題になっていますが、製品とスマホアプリが一対になっていることがほとんど。いまはそれでいいのかもしれませんが、これから製品の数が増えれば専用アプリを探すだけでも一苦労になるでしょう。また、増加する高齢者にとってみれば、Wi-Fi設定はかなり敷居が高い作業です。こうした面倒で煩雑な手間をSIMカードスロットを持ったコミュニケーションロボットに任せることができたら、どれだけ生活が便利で豊かになるか。ロボットが今後、普及が見込まれるIoTや高度化されたAI(人工知能)と連動することによって、想像を超えた利用法が生まれると思います。

―― 最後に読者へメッセージをお願いします。

中橋 私が大事にしているのは、自分が信じる理想に向かって、いまやるべきことをやる。これだけです。状況はどんどん変わっていきます。必ずしも思い通りにならないかもしれません。でも、もし駄目だと思ったら取り組み方を少しずらしてみればいい。やるべきことをやっていれば、きっと過去の経験が生かせます。打開策は見つかるはずです。


<取材後記>

取引先からどのような質問をぶつけられても、すぐに回答できるよう、日々ロボット関連のニュースを収集、分析しているという中橋氏。入手した数十種類のロボットを実際に動作させ、その特性や機能を把握することも怠らない。「ロボットが好きですから、ぜんぜん苦になりません」(中橋氏)。彼の原動力は、強い好奇心と縦横無尽な行動力によって支えられているようだ。


ロボットスタート株式会社 代表取締役社長

中橋 義博氏

1970年生まれ。中央大学法学部法律学科在学中から、月刊ASCII編集部でテクニカルライターとして働く。卒業後は国内生命保険会社で、保険支払業務システムの企画などを担当。その後、ヤフー、オーバーチュアを経て、2004年にモバイルリスティングサービスを手がけるサーチテリアを創業。11年に同社をGMOアドパートナーズへ売却した後は、GMOサーチテリア代表取締役社長、GMOモバイル取締役を歴任し、14年にロボットスタートを立ち上げる。著書に『モバイルSEM ―ケータイ・ビジネスの最先端マーケティング手法』(ダイヤモンド社)がある。