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イノベーションを興す次世代リーダーたちの視点

第13回<前編>ロボットスタート株式会社 代表取締役社長 中橋 義博氏

第13回<前編>ロボットスタート株式会社 代表取締役社長 中橋 義博氏
<はじめに>

1980年代、製造現場から始まったロボット普及の歴史は、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット化)などを巻き込み、新たな段階に入ろうとしている。多種多様な特徴を備えたロボットが次々と登場するなか、これから市場はどのように動くのか。ロボットスタートの中橋義博氏に、創業の経緯やロボットビジネスに賭ける意気込みなどを聞いた。

ロボット業界をビジネスとして成熟させるために

―― ロボットスタートの事業内容を教えてください。

中橋 ロボットメーカーやソフトウエアデベロッパー、またロボットの活用を検討する一般企業に対するコンサルティングのほか、情報サイト「ロボスタ」の運営など、主にコミュニケーションロボットの普及を後押しするような事業を手がけています。

―― なぜ、ロボットビジネスを手がけることになったのですか?

中橋 創業に当たっては、ロボットだけでなく宇宙やバイオ、介護、アニメ関連事業など、これから成長が期待される分野も検討しました。最終的にロボットを選んだのは、長年、検索サービスやリスティング広告を通じて、メディアと関わった経験が生かせると踏んだからです。今後、家庭やオフィス、店舗にロボットが普及する過程で、広告の必要性が顕在化するはずです。ロボット広告事業は、大きなビジネスになると判断し決断しました。


―― ロボットメーカーへのコンサルティングも手がけていらっしゃいますね。

中橋 私たちはロボットをつくらない代わりに、国内で入手可能なほぼすべてのコミュニケーションロボットを入手し、研究しています。また将来、ロボット広告事業を展開するため、すでにロボットアプリの開発を手がける数多くのソフトウエアデベロッパーともネットワークを構築しています。そこで、ロボット活用のノウハウとデベロッパーネットワークを活用して、コンサルティングサービスを提供するようになりました。

―― ロボットメーカーは、どのような悩みを抱えているのでしょうか?

中橋 コンサルティングといっても提供するサービスはさまざまです。設立間もないロボットメーカーには、ロボットの特徴を生かしたソフトウエアの開発支援やマーケティング、ファイナンス戦略への助言、大手メーカーにはロボットの機能改善につながる分析サービスの提供や、要素技術を持つデベロッパーを紹介することもあります。業界に対して中立的な立場だからこそできるサービスがあるのです。

―― ロボット開発に直接携わらないことが、業界における御社の立場を際立たせるのかもしれません。

中橋 私たちのビジネスは自ら金鉱山に入って金を掘るのではなく、金採掘に集まった人々に、ジーンズを販売するようなものです。ロボットビジネスにはインターネットと同じくらい大きな可能性がありますし、投資環境もよくなりつつあります。しかし技術的な面でも、ビジネス的な面でも、乗り越えるべき課題は少なくありません。私たちはロボットの普及を阻む障害を乗り越えるお手伝いを通して、お客様に貢献したいのです。



―― ところで現在、国内でコミュニケーションロボットはどれぐらい普及しているのでしょうか?

中橋 日本は世界に冠たるコミュニケーションロボット大国ですが、私たちの推計では、2017年の世帯保有率を1%、20年には5%程度になるとみています。この数字はPCやスマートフォン(スマホ)の普及スピードと比べると、かなりゆっくりとしたペースです。

―― 普及を促すために何が必要だとお考えですか?

中橋 コストパフォーマンスの向上とエコシステムの構築が鍵でしょう。いまでも低価格帯に属するコミュニケーションロボットはたくさん発売されていますが、ある程度満足のいく機能や精度を持った製品になると100万円、200万円という価格になることも多い。20年までに世帯普及率5%を達成するためには、10万円前後で手に入る高性能なロボットの登場と、使いたくなるキラーアプリの登場が必要でしょうね。

―― エコシステムとは、具体的にはどのようなものなのでしょうか?

中橋 高性能で使い勝手がいいロボットが登場するためには、テレビ番組やスマホアプリで採用されているような広告収入によるマネタイズ手段の確立や、割賦販売や月額レンタルできるような販売形態の多様化が必要です。ロボットの普及にはこうしたエコシステム、つまり稼げる仕組みと、入手しやすい仕組みを構築することが大事だと考えています。

―― ロボットが気軽に買えるようになったら、スマホのように普及するかもしれません。

中橋 駅前の携帯ショップでスマートを買うような気軽さでロボットが買える環境が整い、ロボットメーカーやソフトウエアデベロッパーが稼げる仕組みが確立されれば、いまよりも素晴らしいロボットが登場するようになるでしょう。そのために私たちはロボットメーカーやデベロッパーが、単独ではできない仕事に注力しているのです。


―― 多様な事業を手がけているのは、ロボット広告事業を手がけるうえでの布石なのですね。

中橋 ロボット広告はぜひやりたい事業ではありますが最終的な目標ではありません。PCやスマホが広告媒体として成立するのは数多くの利用者が必要です。見方を変えれば、ユーザーを引き付ける多様なアプリがあるから、あれだけ普及したともいえます。ロボットがその域に到達するためには業界全体が成熟しなければなりません。そのために私たちはメーカーとデベロッパーを支援しているのです。



〜後編につづく〜

ロボットスタート株式会社 代表取締役社長

中橋 義博氏

1970年生まれ。中央大学法学部法律学科在学中から、月刊ASCII編集部でテクニカルライターとして働く。卒業後は国内生命保険会社で、保険支払業務システムの企画などを担当。その後、ヤフー、オーバーチュアを経て、2004年にモバイルリスティングサービスを手がけるサーチテリアを創業。11年に同社をGMOアドパートナーズへ売却した後は、GMOサーチテリア代表取締役社長、GMOモバイル取締役を歴任し、14年にロボットスタートを立ち上げる。著書に『モバイルSEM ―ケータイ・ビジネスの最先端マーケティング手法』(ダイヤモンド社)がある。