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イノベーションを興す次世代リーダーたちの視点

第11回<後編>株式会社TBM 執行役員 山口太一氏

第11回<後編>株式会社TBM 執行役員 山口太一氏

前編では、富士ゼロックスの営業からプライスウォーターハウスクーパースで経営コンサルタントとなり、事業再生や事業統合プロジェクトに携わった経験を中心に話を聞いた。後編ではTBMに入社した背景や、水を使わず紙やプラスチックを量産できるLIMEXにかける情熱、事業の未来などについて話を聞く。

日本発の素材技術をインフラとともに世界へ

―― 経営コンサルタントとして7年も過ごされると、ディレクターやパートナーを目指すなり、ほかのコンサルティングファームに転職するような選択肢もあったと思います。どうして事業会社に転職しようと考えられたのですか?

山口 理由は2つあります。まず1つは、ビジネスを側面から支援することだけに飽き足らなくなってしまったということ。よくいわれることですが、物事に対処するとき「こうしたらいいと思います」というのと「こうします」というのでは天と地ほど違います。当事者として事業にコミットし、目標をクリアすることでしか味わえないあの達成感を、もう一度味わってみたくなったのが一番の理由です。そしてもう1つの理由は、かつてのソニーやホンダのように日本発の技術で世界に打って出ようという、大きな野望を持った経営者に出会ったことでした。

―― それがTBM代表の山﨑さんだったわけですね。

山口 そうです。水もパルプも使わないLIMEXという製品は、石灰石と樹脂を原料にしているため、慢性的な水不足にさいなまれている国や、資源の乏しい国でも紙や樹脂の代替製品をつくることができます。しかも、製造インフラごと輸出することで、地球環境の保全だけでなく地域経済の振興にも貢献できる。新たな素材産業としても有望ですし、非常にダイナミックなビジネスだと思いました。

―― 大企業からベンチャーへの転身です。不安はありませんでしたか?

山口 まったくありませんでした。もちろん周りからは「大丈夫か」と心配はされましたが、実行するるのはあくまで自分です。いつか老いて死を迎えるとき「やっぱりあのとき挑戦しておくべきだった」などと思いたくありません。やらずに後悔するくらいならやって失敗したほうがまだ納得感があると思いませんか? 思い返せば、富士ゼロックスを辞めたときも次の就職先は決まっていませんでした。自分はどちらかというとリスクテイカータイプなのかもしれません。

―― 現在はどのようなお仕事を?

山口 私が入社したのは2015年の9月で、宮城県白石市にある第一プラントの完成から半年あまり経ってからのことでした。現在は宮城県多賀城市で建設を進めている第二プラントの完成に向け、代表の山﨑とともに宮城県や白石市、多賀城市、経済産業省など、自治体や行政の方々、投資家、事業パートナーを回りながら、事業計画の策定や補助金の申請、資金調達など、経営企画業務を中心に取り組んでいます。

―― 入社してみていかがですか?

山口 LIMEXは応援してくださる方が大勢いる事業です。お会いする皆さんからのご期待に対し、自分はどのように応えるべきか、いつも自問しています。山﨑はまったくのゼロから第一プラントの建設までこぎつけました。今度はわれわれがLIMEXをビジネスとして、何百倍、何千倍の規模に飛躍させなければなりません。当面は計画通り第二プラントを建設することが、その一歩につながると思うので、まずは実現に向けてまい進していきます。





―― 2016年4月に執行役員になられたそうですが、事業への思いや仕事への取り組み姿勢が変わりましたか?

山口 担当領域が明確になった分、課題解決のためのスピード感や責任感、対峙する課題の大きさを改めて感じています。今後は、日本生まれの新素材であるLIMEXを世界で必要とされる国々に届けるため、事業計画や資本政策をブラッシュアップすることはもちろん、国内外の企業と組むことで名刺やパッケージだけでなく、建材や服飾、クルマや医療の領域にも展開できるよう、アプリケーション開発にも力を尽くしたいと思っています。

―― 最後に転職志向のある読者の皆さんに、メッセージをお願いします。

山口 年齢や置かれてる状況はそれぞれなので、一概にお勧めすることはできませんが、私に限っていえば、やりたいと思えることを見つけたら、リスクを顧みず飛び込んできました。好奇心を満たすことこそ、生き生きと働くための原動力になると考えるからです。相手の思いをくみ取り、その期待に応えるという意味では、どんな職業も本質的に変わりません。もし心から好きだと思えること、楽しいと思えることに出合ったら、挑戦してみることを前提に検討してみてはいかがでしょうか。

<取材後記>

人気番組『カンブリア宮殿』(テレビ東京系)の放送500回スペシャルでも採り上げられたLIMEXは、まさに日本が誇る素材産業のフロントランナーといえるだろう。LIMEXの製造・販売を手がけるTBMは、2016年7月にアメリカ法人を設立し、海外での事業展開も動き出している。膨大な埋蔵量を誇る石灰石を活用することによって紙とプラスチックを再発明したTBM。グローバルでの活躍が期待される。


株式会社TBM 執行役員

山口 太一氏

2005年、富士ゼロックスに入社。プロダクションサービス営業本部で、新規ビジネス開発を担当した後、08年、プライスウォーターハウスクーパースに移り、コンサルタントとしてビジネスデューデリジェンス、事業再生計画策定と実行、金融機関との折衝、成長戦略の立案支援に携わる。ディールアドバイザリーグループに異動後、マネジャーとして海外M&A案件における戦略検討や実行支援、PMI(M&A後の企業統合)に従事。15年9月、TBMに入社後からは、事業戦略、事業計画、資本政策の策定や、量産工場建設プロジェクトを推進している。16年4月より現職。