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第8回<後編>ツクループラス代表・クリエイティブワークプロデューサー 後藤あゆみさん

第8回<後編>ツクループラス代表・クリエイティブワークプロデューサー 後藤あゆみさん

前編では、後藤さんのクリエイティブとの出会いクリエイター支援活動に取り組むまでの経緯について聞いた。後編では、その背後にある信念やユニークな働き方の実態などについて話を進める。

形にこだわらず、クリエイター支援に取り組む

―― ツクループラスという屋号でフリーランスとしての活動を始められてから、クリエイター志望の学生向けワークショップの主宰や、キャリア教育メディアの編集長、DeNAのCriative PRなど、既存の枠にとらわれない活動を展開されていますね。

後藤 代表を務めているツクループラスでは、子どもや学生を対象としたワークショップや授業を通じ、クリエイティブの価値やクリエイターの生き方を伝えるプロジェクトに取り組んでいます。また、編集長を任せていただいている『はたらくビビビット』は、学生クリエイターの将来の力となる情報を提供し、DeNAではデザイン戦略室に所属してCreative PRという役割を任せていただいています。これ以外にもいくつかのプロジェクトに携わっているのですが、一貫しているのはクリエイターの発掘や育成、環境改善に関わる仕事だということ。どれもクリエイターとして活躍したい人や、彼らを必要としている企業を対象としたプロジェクトです。

―― どうしてこれほどまでに多くの仕事に関わることができるのでしょうか?

後藤 テーマを絞った上で、肩書きや契約形態にこだわりがないからだと思います。わたし自身、クリエイターを取り巻く環境が少しでも改善きる可能性があるのであれば、前向きに検討するというスタンスなので、結果的に多様なプロジェクトに関わるチャンスをいただけるのだと思います。

―― フリーランス活動と並行して、DeNAという企業に属してCreative PRとして活動されるというのは、かなりユニークな働き方とお見受けします。

後藤 そうかもしれません。DeNAでお仕事をするようになったのは、自社のクリエイターの活躍を世に知らしめることで、UI・UXデザインの価値を再認識し、UI・UXデザイナーという仕事に興味を持ってくれる人を増やして、業界全体を盛り上げたいというDeNAのデザインを重要視する姿勢やクリエイターの活躍を支援にする姿勢に共感したからです。DeNAのような大手IT企業が率先して、社内クリエイターのインタビューやポートフォリオ(作品集)を発信し、デザイン勉強会や交流イベントの開催したりすることによって、クリエイティブの重要性を多くの方に知っていただける可能性が高まるなら、自分の目指していたクリエイターの環境作りに通ずるものがあると思ったのです。

―― 広報の経験がない後藤さんにどうして白羽の矢が立ったか、ご自分ではどのようにお考えですか?

後藤 直接聞いたわけではないので間違っているかもしれませんが、クリエイターとしての経験と発信力を買っていただけたのだと思います。クリエイターの立場に立ってものを考えたり、彼らの思いをくんでアウトプットを出したりすることは、経験者でなければ理解できないこともあります。DeNAのクリエイターが大きなカンファレンスに招待されたり、メディアから指名されて取材依頼がくるような、業界の注目度を高めることを目標にしているので、どのように実現していくべきか、元クリエイター志望者の1人として、個や組織のブランディングを意識して行動していきたいと思っています。

―― これまで、さまざまなプロジェクトに携わってこられたなかで、とくに大切にしてきたのはどんなことですか?

後藤 分野・業界にとらわれず情報収集をおろそかにしないことです。最近注目を浴びているサービスやスタートアップの情報、ニュース、エンタメ、知人の活動、業界の動向など、一見して仕事に関係ないような話も急にどこかにつながる瞬間がやってきます。クリエイティブ業界の人は自分好みの世界だけで生きる傾向があり、視野が狭くなりがちです。それによって損をしていると感じることが多いです。自分の幅を決めず、新しいことを見つけたらまずは手を出してみる。それを積み重ねることで、想像もできなかった新しい自分に出会えたり、今までにない仕事へと展開できたりするようになったと思います。


―― 今後はどのような仕事に取り組んでいきたいですか?

後藤 生意気ないい方に聞こえるかもしれませんが、私は誰かが歩いた道をなぞるような生き方ではなく、時間がかかってもいいので私にしかできない業を見つけたい。そして、この道のプロフェッショナルになりたい。クリエイター支援はとても説明しづらい仕事ですし、身近にロールモデルも存在しません。活動の内容や意義を詳しくお話ししても理解していただけないこともあります。だからこそ、クリエイティブの重要性をわかりやすく「見える化」する活動に意味があると思います。クリエイティブの力によって成功した事業は世界にたくさんあります。クリエイターの育成環境を整えれば日本産業はもっと発達します。クリエイティブの価値を提示し続けたいと思っています。
また、美大生、美術専門学校生を中心とした若手クリエイターの支援に加え、中高生へのキャリア教育にも力を入れていきたいと思っています。早い段階で自分の才能や興味の方向性を知ることができれば学校や企業とのミスマッチを減らせますし、より良い人材が育つと思うからです。そのためにも、ますますクリエイターの魅力やこの世界で生き抜くための技術や知識を提供していければならないでしょうね。私は負けず嫌いで新しもの好きな性格なので、これまで同様、表現方法にはこだわらず、クリエイター支援というテーマに取り組んでいきたいと思っています。


DeNAのクリエイターと作品を紹介する「DeNA Creator File」。
後藤さんが発案・編集を担当

<取材後記>

学生時代から首尾一貫してクリエイター支援に携わっている後藤さんの経歴を追うと、その行動力に目を奪われるが、すぐにその根本に「クリエイターのため」という強い信念があることに気づく。目的を果たすためには表現方法や形にはこだわらないという姿勢があるからこそ、自由で伸びやかな働き方ができるのだろう。企業規模や事業内容、給与や待遇で仕事を選ぶことは必ずしも悪いことではないが、ときにそうした既成概念から離れて、自分の「信念」ややり遂げたい「テーマ」から、仕事を見つめ直すことが大事なのだと今回の取材で強く感じることができた。


ツクループラス代表・クリエイティブワークプロデューサー

後藤 あゆみさん

1990年4月大分県別府市生まれ。京都精華大学デザイン学部在学中にアートプロデュース団体「SHAKE ART!」の立ち上げから携わり、フリーマガジンの発行やイベント企画を開始。卒業後はクラウドソーシング事業を行うMUGENUPに入社し、新規事業や人事、クリエイター教育に携わる。2015年独立し、クリエイター支援を行うツクループラスを設立。現在は同代表を務めながら、学生クリエイターのための教育メディア『はたらくビビビット』編集長、DeNAデザイン戦略室 Creative PR、子どものあそびの研究所『プレイデザインラボ』編集者、SO-ZOのクリエイティブマネジメント担当など、多岐にわたる活動に取り組む。