ビジネスパーソンのキャリアアップ・転職について考えるニュース・コラムサイト

イノベーションを興す次世代リーダーたちの視点

第3回<後編>株式会社ZMP 代表取締役社長 谷口 恒氏

第3回<後編>株式会社ZMP 代表取締役社長 谷口 恒氏

前編では、自動運転車の開発に携わる以前の経歴を伺った。後編では合弁会社のパートナーであるDeNAとともに、実現を目指すロボットタクシーの未来について話を聞いていく。

地方振興、少子高齢化対策としてのロボットタクシー

――2015年5月にDeNAと合弁会社「ロボットタクシー」を設立されました。どういう経緯があったのでしょう?

谷口 DeNAの別の部署の方と面識があり、その方から新規事業推進室長で執行役員の中島宏さんをご紹介いただいたことが転機になりました。スマートフォンを使った無料カーナビアプリや駐車場のシェアリングサービスなどを始めるという紹介を受けました。そのとき、中島さんに3年ほど温めていたロボットタクシー構想についてお話したところ、興味を持っていただけました。

――ロボットタクシー構想とはどのようなものなのでしょうか?

谷口 2020年に行われる東京オリンピックに参加する選手や観光客を、完全自動運転によるロボットタクシー3000台で迎えようという構想です。ITサービスを提供する企業や観光産業とも積極的に手を組み、多くのみなさんに東京での滞在を楽しんでいただければと考えています。

―――東京オリンピック以後は、どのような用途を想定されているのですか?

谷口  従来のタクシー事業の代替えとしてはもちろんですが、地方振興、少子高齢化対策にもなると考えています。すでに日本の地方では、人口の減少により公共交通機関を維持するのがかなり難しい状況になっており、一部地域では自分でクルマを運転できない高齢者や身体が不自由な方々の移動が制限され、買い物や通院など日常生活に支障をきたし始めています。そうした状況を打開するためにも、ロボットタクシーが使えると考えています。

――入社後はどのような仕事に従事されたのでしょうか?

谷口 従来のタクシー事業の代替えとしてはもちろんですが、地方振興、少子高齢化対策にもなると考えています。すでに日本の地方では、人口の減少により公共交通機関を維持するのがかなり難しい状況になっており、一部地域では自分でクルマを運転できない高齢者や身体が不自由な方々の移動が制限され、買い物や通院など日常生活に支障をきたし始めています。そうした状況を打開するためにも、ロボットタクシーが使えると考えています。

――なるほど。それでDeNAと合弁会社をつくることに?

谷口 はい。最初の会合から2週間後にはCEOの守安さんにお会いして、一緒に事業を立ち上げることが決まりました。会社設立の手続きを含めても、わずか1カ月しかかかっていません。

――ものすごいスピード感ですね。

谷口 これがベンチャーの強みです。しかもDeNAの社員は優秀で、猛烈なスピード感で仕事をされているし、事業をしっかりと作り上げていく力があるのを感じました。だから彼らと組むことにしたのです。

――そもそもロボットタクシー構想の着想はどこから得たのでしょう?

谷口 自律走行車両をいますぐ必要な人は誰なのか考えた結果です。私の実家の最寄り駅は姫路駅から電車で16分の場所にあるのですが、タクシーが常駐しているのは3つも先の駅。昔は駅にタクシー会社があったのですが、数年前に廃業してしまいました。帰省した際、この状況を目の当たりして、地方の暮らしが疲弊しているのを痛感したことが、この事業の着想につながっています。その後、東京オリンピックの招致が決まり、日本のロボットタクシーを世界にお披露目する良いチャンスだと考え、ロボットタクシーを都内近郊で走らせるアイデアを思いつきました。

――構想の実現に向けて、乗り越えるべき課題は?

谷口 要素技術の開発は、すでに一定レベルを超えているので、一番は時間の壁でしょう。2020年の東京オリンピックに間に合わせるには、すぐにでも路上での実証実験を始め、3年以内にパッケージを完成させなければなりません。技術開発と並行して自動運転技術への理解を啓蒙したり、法改正などにも取り組んだりする必要もあるので、待ったなしの状況です。

――日米欧の自動車メーカーだけでなく、Googleのような異業種も自動運転車の開発に力を入れています。勝算はありますか?

谷口 私たちがロボットタクシーで目指すのは、ハードウェアとしての自律走行車の開発というより、タクシーというアプリケーション核に、ITサービスや観光、介護など、あらゆる産業と連携するプラットフォームを提供することです。単に人の手を介さず安全に運転できることの先に、どんな未来があるか。それを具体的に提示する会社ですから、必ずしも競合していると考えてはいません。自動車会社各社とも協議しながら実現に向けて歩みを進めていければと思っています。

――最後に読者にメッセージを。

谷口 日本のエンジニアは大企業志向が強く保守的な印象があります。でもそれでいいのかと問いたい気持ちでいっぱいです。GoogleやAppleは確かにすばらしい企業ですが、彼らを神のように崇め、賞賛するだけでなく、彼らと伍していけるベンチャーが、日本からもっと出てきてもいいはずです。しかもこれほどの変革期に立ち会えるのは、数十年に一度あるかないかの大チャンス。見逃す手はありません。いまZMPには海外からも優秀な人材が集まっています。シリコンバレーまで行かなくても世界を相手に戦える環境が、この日本にもあることを多くの方に知っていただきたいですね。

<取材後記>

ゆくゆくはロボットタクシーを日本の新たな輸出産業に育てたいと言う谷口氏。その脳裏には、1964年の東京オリンピック開催と東海道新幹線開業という2つの大きな出来事がもたらした高揚感を再現したいという強い思いがある。そんな谷口氏率いるZMPが、DeNAとともにロボットタクシー社を興した。意外な組み合わせに見えるが、移動手段としてのクルマにロボット技術とITサービスを注入し、新たな付加価値を創造するという目的のためには妥当な選択だったようだ。2020年まであと5年足らず。世界初のロボットタクシーの実現に期待したい。

株式会社ZMP

代表取締役社長 谷口 恒 氏

大学卒業後、自動車部品メーカーでアンチロックブレーキシステム開発に携わる。その後、商社の技術営業、ネットコンテンツ会社の起業などを経て、2001年にZMPを創業。家庭向け二足歩行ロボットや音楽ロボット開発・販売を手掛けた後、2007年から自動車分野へ進出。メーカーや研究機関向けに自律走行車両や技術の提供を行う。2014年以降、自動運転技術を様々な産業へ応用し、Robot of Everything戦略を加速させている。2015年5月、DeNAと合弁で「ロボットタクシー」の設立し、取締役会長に就任。2020年までに完全自動運転タクシーの事業化に挑む。