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イノベーションを興す次世代リーダーたちの視点

第3回<前編>株式会社ZMP 代表取締役社長 谷口 恒氏

第3回<前編>株式会社ZMP 代表取締役社長 谷口 恒氏
<はじめに>

検索エンジン大手のGoogleがクルマの自動運転車の開発に力を入れている。Appleの参入も噂されるなか、2015年5月、ITメガベンチャーのDeNAとロボットテクノロジー企業のZMPが合弁会社「ロボットタクシー」を設立。完全自動運転によるタクシー事業を開始することを発表した。今回はZMPの創業社長であり、ロボットタクシーの取締役会長に就任した谷口恒氏に、キャリアの転換点に直面した時の心構えなどについて聞く。

常に好奇心と使命感に突き動かされてきた開発者人生

――現在主力とされている自律走行車両の開発以前は、さまざまな技術に携わっていたと伺いました。

谷口 大学では化学を専攻していましたし、卒業後は自動車部品メーカーのエンジニア、米国のレーザー製品を扱う輸入商社で技術営業を経験していたこともあります。起業してからは、インターネットコンテンツの制作に始まり、家庭用ロボットの開発にも携わっていた時期もありました。

――どのような観点で仕事を選んでこられたのでしょうか?

谷口 その世界が自分の好奇心を刺激してくれるかどうかで取り組むべき仕事を選んできました。あえて過去の仕事について共通点を挙げるなら、どれも最先端かつテクノロジー領域だということ。インターネットに出合ったときも、ロボットテクノロジーに出合ったときもそうでしたが、「これは!」と思えるテクノロジーに出合うと、何ができるか想像するだけでワクワクしてしまいます。もちろん、その都度初めてのことにチャレンジするわけですから、知らないこと、わからないことがたくさんあります。それでも臆せず飛び込んでノウハウを吸収する。それが自分のやり方です。

――好奇心が原動力だったんですね。

谷口 そうですね。最先端テクノロジーに関心があるとは言え、エンジニアという職種に強いこだわりがあったわけではありません。私はどちらかというと、ひとつの限定された技術領域を深堀りするより、既成概念にとらわれず「化学反応」を起こしていくほうが好きなんです。そういう意味では、輸入商社で技術営業を経験したことが、自分のなかで大きな転機になりました。

――エンジニアから技術営業に転身されてご苦労は?

谷口 最初の頃は、顧客へのプレゼンさえ満足にこなせませんでした。ちょっと前までメカ設計に没頭していたエンジニアですから、どうしても技術の細部にこだわってしまいます。自分では丁寧に説明したつもりが、お客さんにはぜんぜん理解されていないことはよくありました。ただ、その当時扱っていたレーザー製品は通信から核融合まで、非常に多くの分野で利用できるものでしたから、用途を考えて顧客開拓をするのはぜんぜん苦ではありませんでした。やはり「こんな分野に使ったら面白いのではないか」と想像するのが好きなんです。もちろん自分の考えが外れることもありましたが、そのおかげで多少の失敗ではめげなくなりましたし、マーケティング感覚も磨けた気がします。

――失敗も大きな糧になっているんですね。

谷口 そうですね。二足歩行ロボットの開発に携わっていた当時も、枝葉の部分ではずいぶん見直しを図っています。世の中には出ていないだけで、モノにならなかったプランもありました。

――そうした失敗を経て学んだことは?

谷口 目に見える形より、テクノロジーの本質にこだわるということです。私にとって大事なのは、ロボットの形状よりロボット技術そのもの。かつては、二足歩行の人型ロボットや音楽ロボットの量産も経験しましたが、よくよく考えると私が本当に開発したいのは、ロボットそのものというより、ロボットがもたらす豊かなライフスタイルです。となると、限られた小さなマーケットより、多くの人々に貢献できる潜在マーケットで事業を広げた方がいい。ですから家庭用ロボットから撤退して、ロボット技術を応用した自律走行車両の開発に移行したのです。

――でも、新天地に飛び込むには勇気がいります。

谷口 そう思いますが、環境を変えることで得られるものが多いというのも確かです。大学生の頃、友だちと作った「現状維持は後退につながる」という言葉をいまも大事にしていますが、なぜこうした言葉を座右の銘にしているのかと言えば、それは、私自身のなかに「怠け者」が住んでいるのを知っているから。小さな成功に安住していれば楽ができる反面、好奇心や夢は失われていきます。だから環境を変化させることを選ぶのです。自分を取り巻く環境や取り組むべき課題が変われば、別の好奇心が刺激され、新たなスキルを身に付けるきっかけにもなりますからね。自分を進化させたければ環境を変えるのが一番です。

後編につづく