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イノベーションを興す次世代リーダーたちの視点

第2回<後編>ミニット・アジア・パシフィック株式会社 代表取締役CEO 迫俊亮氏

第2回<後編>ミニット・アジア・パシフィック株式会社 代表取締役CEO 迫俊亮氏

日本を含むアジア太平洋地域で、550店舗近くのミスターミニットを運営するミニット・アジア・パシフィックを率いる迫俊亮氏。前編では老舗ブランドの再建を引き受けるに至った経緯などを紹介したが、後編では経営に賭ける思いなどを語ってもらった。

徹底した現場主義によって、経営を改善していく

――マザーハウスではどんな仕事を?

 最初の3年間は、国内の店舗づくりに携わり、その後の2年で台湾での現地法人立ち上げとなどに従事しました。担当していた仕事内容を一言で表せば、製造小売業に必要な職能のすべてです。経理、財務、在庫コントロールはもちろん、店舗設計から大工仕事、広告、マーケティング、接客などもこなしていました。当初は収入も低く、仕事量もかなり多かったので生活はかなり大変でしたが、「途上国から世界に通用するブランドをつくる」というミッションを達成したいという思いに支えられ、死にもの狂いで働きました。

――そこまでほれ込んでいたマザーハウスを退職された理由は?

 確かに会社は成長しましたが、自分の想像と比べればかるかに小さいものだったからです。高望みしすぎていたといえばそれまでですが、もし自分にいまよりも優れた経営のスキルがあり、5年もの時間があればもっと大きなビジネスにできたはずだという思いがどうしても頭から離れませんでした。これから実力と経験を身に付けるにはどうしたらいいか、信頼できる友人に相談したところ、彼の在籍する投資ファンドへの転職を勧められ、面接を受けてみることにしたんです。

―――いかがでしたか?

  パートナー面接で、投資にはあまり関心がないことを見抜かれてしまいました。そこで正直に「実は投資より経営に興味がある」と答えたところ、「それなら、われわれの投資先のひとつが、海外部門を立て直す人材を探すのに苦労している。君の経歴や志向とも合いそうだからやってみないか」と言ってくださったんです。その投資先こそ、ミニット・アジア・パシフィックでした。

――入社後はどのような仕事に従事されたのでしょうか?

 2013年にアジア担当のマネージャーとして入社した後、最初の2カ月間でオーストラリア、ニュージーランドでサービスメニューを拡充し、売上のテコ入れをした後、次の半年で10年間低迷を続けていたシンガポール、マレーシアの経営再建に携わりました。具体的には、在庫管理やインセンティブ制度の問題点を洗い出し、現地のニーズや時代に即した商材に改めるといった地道な活動です。収益が落ち込んでいる時は、当たり前のことを当たり前にできなくなっています。これを正すために、社員のモチベーションとモラルを高めることに最大限の力を注ぎました。

――どうやってモチベーションやモラルを高めていったのですか?

 まずは、店舗に足を運んでスタッフの話に耳を傾け、彼らの要望をかなえながら、本音で話し合える信頼関係を築くところから始めました。狭い店舗のなかで整理整頓に必要な棚の数が足りなければ増やし、店舗の空調が悪ければすぐに修繕するよう手配する。

そうした小さな積み重ねによって信頼関係を構築し、従業員と一緒にサービスや管理上の問題点がどこにあるかを洗い出し、彼らと一丸になって課題を一つひとつ解決していきました。こうした努力のかいあって、結果的にシンガポール・マレーシアエリアの収益は、わずか4カ月で対前年比130%にまで回復することができたんです。

――その後、入社からわずか1年3カ月で社長に就任されました。
  その後はどのような取り組みを?

 海外事業においては、いままではローカルに任せきりだった運営を見える化することで、収益の改善ができたように、日本でも、最高級クリームを使って靴を磨く「プレミアム靴磨き」など、すでに一部店舗の有志が自分の意志で行っていたサービスを商品化したり、優秀な現場スタッフをマネジメントに登用する抜擢人事を進めたりすることで、相次ぐコストカットで元気がなくなっていた現場に活力を取り戻すことができました。今後も失敗を恐れず挑戦する文化を発展させていきたいですね。

――会社が変わるために大切なこととは?

 ポイントは3つあります。まずは信頼関係を築きスタッフのやる気を引き出すこと。そしてもうひとつが、文化や現状に即して商材や制度を改めること。そして最後に、改善が正しい方向に進んでいるかどうかを確かめられるよう、適切にPDCAサイクルを回していくことです。ただし日常的な改善を繰り返すだけでは大きな飛躍は望めません。われわれは、今年7月にこれまでのミスターミニットとは別に、より上質なサービスを提供する『LoveShoeLabo』という新しいサービスラインを立ち上げ、渋谷に旗艦店を出店する計画を進めています。高価なブランド靴を安心して預けられる店舗にするつもりです。

――最後に読者にメッセージをお願いします。

 マネジメントに携わる立場になると、自分がやりたかったことにすぐ着手したくなるものですが、周囲の支持がなければどんな小さな改革も成し遂げられません。まずはあなたが実現したい目標を達成するためにも、周囲の人々が抱えている課題を解決することを優先すべきです。それができてはじめて、あなたの味方になってくれるフォロワーが生まれます。フォロワーなきリーダーはリーダーではありません。周囲の人々を味方につけ、より大きな課題を解決に導く。それがリーダーのあるべき姿だと思います。

<取材後記>

「いまでも1000店舗ぐらい出せるくらいのポテンシャルがある。会社の中に眠っている人材やアイデアを積極的に発掘して成長につなげたい」と話す迫氏。自ら追い求める理想の経営者像は「経営者としてやるべきことを粛々と、かつ100%徹底でき、会社を現在の延長線で考えず、異なるステージに変化させる戦略を打ち立てられる存在」だという。イメージは「競合他社の動きに汲々とするのではなく、課題の質自体を変えてしまうことができる」、ユニクロの柳井正氏のような経営者だ。若きプロ経営者の鋭い目線は、よどむことなくまっすぐ未来に向かって伸びている。

ミニット・アジア・パシフィック株式会社

代表取締役CEO 迫俊亮氏

1985年、福岡県生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校社会学部を卒業後、三菱商事に入社。その後、ベンチャー企業のマザーハウスに転じ、同社の創業期を支えながらアジアにおける事業確立などでも成果を上げた。2013年にミニット・アジア・パシフィック入社。苦戦を強いられていた東南アジア・中国エリアの事業建て直しを担い、その後経営企画部長 兼 海外事業統括部長として、同社の営業およびマーケティング分野の再構築に着手。2014年1月には常務執行役員営業本部長、4月に代表取締役社長 兼 営業本部長に就任。現在に至る。