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金融人材のゆくえ

2011年下期見通し

2011年下期見通し

エグゼクティブ・サーチ・パートナーズ 代表 小溝 勝信氏

2011年下半期(10月から12年3月まで)の金融人材の求人について、エグゼクティブ・サーチ・パートナーズの小溝 勝信代表に聞いた。またグローバル化が進む日本の金融人材についてアレクサンダー・フラッチャー氏(日本CFA協会副会長)にアドバイスしてもらった。

金融ビジネス別の人材需要について

<2011年10月~3月 事業別求人の見通し>
◎求人・強い ○求人・やや強い
△ほどほどにある ×求人・ほとんどない
1.投資銀行ビジネス
2.プライベート・エクイティ(PE)×
3.不動産関連×
4.債券ビジネス×
5.コモディティ×
6.株式関連
7.ヘッジファンド
8.プライベート・バンク(PB)
9.資産運用

2011年下期はヘッジファンド、資産運用、投資銀行などに人材ニーズ

2011年上半期では、年初での米国の景気回復期待、3 月に起きた東日本大地震と世界経済への影響や収束しない欧州危機など、さまざまな要因が混在し、さらに各社の個別事情がからみ、内外の金融機関各社は11 年の戦略を立てにくい状況にありました。先行きの不透明さを反映して、金融人材市場は回復傾向にあるものの、力強さはありませんでした。この流れは今年の下半期も継続するでしょう。

しかも上期の人材採用ではビジネスにより、ばらつきがありました。単純に言えば、①個人投資家を対象とするビジネスは、人材需要がありました。投信、個人向けの仕組み債(円が急騰する以前)、資産運用、プライベート・バンクに顕在的・潜在的な人材需要がありました。資産運用では今後も見込まれますが、プライベート・バンク分野では人材のミスマッチも予想されます。

②投資銀行業務では、株式や債券の引受けは震災の影響もあり停滞気味でしたが、クロスボーダーのM&A関連では、若手への強い人材需要はあるでしょう。

③債券業務では、年初、JGB のトレーダーやセールス、個人向けの仕組み債関連で人材需要がありましたが、三菱UFJ モルガン・スタンレー証券での巨額損失の発覚や、震災を契機とする円高の影響により人材ニーズは縮小していくと思われます。

プライベート・エクイティ、ヘッジファンドは今後に期待

また、プライベート・エクイティやヘッジファンドへの「人材需要」はまだ回復していない状態なので、今後に期待します。「グローバル・マーケッツ(債券、為替、クレジット、コモディティ、株式、それぞれのデリバティブ、調査や格付けを含む)」は、「人材需要」での構成比は17%にとどまります。

業績不振の外資金融の次の手は?

金融危機後の対策として、米国のドッド・フランク法の施行やバーゼル規制の強化等、世界でさまざまな規制強化が進んでいます。スイスの金融機関には18%の自己資本比率が課されている。結果、上半期決算では多くの外資系金融機関が減益となっています。1~6月のROE では、ゴールドマン・サックスが8.0%、UBS は12.0%に低迷しています。

従って、いくつかの金融機関でのリストラ計画が報じられています。一方、ボルカー氏は「米国の金融規制改革のペースは、効果がない水準にまで減速した」と嘆いています。この綱引きが、今後どう調整されるかが注目されます。日本法人は、すでに人員不足となるほどスリム化されており、これ以上の人員削減は無いと見られていましたが、実際にはリストラが散見されました。

外資系金融機関のどの部門でも見られる現象だが「世代交代」が進められています。特に、投資銀行部門と資産運用会社で入れ替えが目立ちます。しかし、金融危機後、金融モデルが変化しており、対応出来ない「シニア層」が退出を迫られるのはやむを得ないとしても、それに代わる「若手」の採用がうまくいっていません。

多くの外資系金融機関が日本の金融機関から優秀な若手人材の採用を期待していますが、危機後、若手はチャレンジ精神を喪失しており、外資への転職に興味をあまり強く持っていません。これは、若手側にも問題があるのでしょうが、外資系金融機関にキャリアを築く職場として魅力が薄れているともいえます。

リーマン・ショック以降、短期間に採用とリストラを繰り返す経営姿勢や人事制度を見ているからだと思われますが、いずれにしろ、優秀な金融人材が活躍できる長期的な組織づくりを期待したいと思います。

小溝 勝信氏

小溝 勝信(こみぞ かつのぶ)

住友銀行(現三井住友銀行)を経て、ファーストシカゴ銀行東京支店の事業法人部長に就任。その後米国大手ファームのホイットニー・グループ日本支社に入社、副支社長。2004年、エグゼクティブ・サーチ・パートナーズ株式会社を設立。同社代表。NPO法人「金融人材市場の改革を進める会」副理事長。

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