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金融人材のゆくえ

2011年上期見通し

2011年上期見通し

報酬条件でのミスマッチが起きている

金融プロはかつての高額報酬が忘れられず、報酬水準でもめることが多いのです。また、報酬決定のスキームも変更されつつあります。欧米各国政府による「ボーナス規制」への対抗措置として、外資系金融機関では年収におけるボーナス比率を下げたため、逆にベース・サラリーが平均で5割程度引き上げられました。30歳代半ばのVP(バイス・プレジデント)の場合、かつてベース・サラリーは1600〜1700万円程度であったが、現在は2000万円台にアップしています。しかし、総人件費は引き下げられるから、ボーナス支給分は減るはずです。

現在、外資系金融機関では昨年の実績に対するレビューが行われていますが、米国の金融機関の決算を見る限り、投資銀行部門の収益が低下する中で人件費総額はさほど低下していないので人件費比率が高まっています。こうした理由から外資系金融機関日本法人では、ボーナスが前年比どの程度下がるのかを注視する必要があります。すでに現場で混乱が起きています。

かつて外資系金融機関の金融プロは、受け取るべき年間報酬額を自ら稼いだ収益の一定比率として推計できました。トレーダーであれば自己のブックの収益が、営業職であればセールスクレジットが推計のベースでした。しかし、最近、このフォーミュラが崩れており、ペイアウト比率も低下しています。これに不満を示す金融人材は、外資系金融機関で採用に至らないケースが散見されます。

ミスマッチによる失業の原因

ピンポイント採用と過度の実績依存

外資系金融機関は、厳しい環境下でも高い収益をあげなければならないことから、採用の基準に極めて高いハードルを設けています。そのハードルとは「当該ビジネスでの長期の経験、大きな実績、高度のスキル」です。この条件を満たす人材だけをピンポイントで狙っていますが、この条件をすべて満たす人材は極めて稀で、その発掘は難しいのが現状です。

新規ビジネス分野での人材を見抜く能力の不足

最近、ビジネスの変化に伴い新しい人材需要が生まれています。個人富裕層ビジネスでのプライベート・バンカー、複数のセクターを担当できるカバレッジ・バンカー、デリバティブを組み込んだキャピタル・マーケッツでのプロ、セルサイド出身の総合型年金宛て営業担当者などです。

ところが、これら新規ビジネス分野の経験者は稀少で、採用は容易ではない。採用担当者は、その一部のビジネスに専門性を持つ候補者の中から、適材を選ばなければならないですが、「見抜く能力」が欠けているため、結局は当該新規ビジネスの経験者を探すことになる。これは「無いものねだり」で、いつまでも見つからないのです。

外部人材との摩擦も

メガバンクは投資銀行業務強化のため、外資系金融機関出身の金融プロを採用する動きをみせていますが、内・外金融機関の間には、依然として企業文化、経営手法や報酬制度に大きな違いがあります。日本の金融機関は、証券子会社も含めて依然として「生え抜き」中心の人事体系を崩しておらず、外部採用者は「よそ者」として処遇されています。従って、経営レベルへの出世が望めないことはもとより、入社の際も、自社の企業文化や慣行に合わせるように求められます。確かに最近、一部の金融機関の経営者は外部採用によってグローバルな企業文化を築こうとしていますが、中堅幹部が自らの権益縮小を恐れてか抵抗する事態が見られます。さらに、雇用条件も外部採用者は「期限を定めた契約」で、報酬は成果対応だが、年収にキャップが設けられる場合もあります。

小溝 勝信氏

小溝 勝信(こみぞ かつのぶ)

東京大学教養学部を卒業し、住友銀行(現三井住友銀行)に入行後、1984年ファーストシカゴ銀行東京支店の事業法人部長に就任。人材コンサルティングに転ずるため1989年米国大手ファームのホイットニー・グループ日本支社に入社し、副支社長に就任。 1994年に株式会社ヘッズジャパンに転じ、金融部門担当のマネジング・ディレクターに就任。2004年、エグゼクティブ・サーチ・パートナーズ株式会社を設立。同社代表。
NPO法人「金融人材市場の改革を進める会」副理事長。