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識者インタビュー

2020年に挑戦! 転職やキャリアに効く資格はどれ

2020年に挑戦! 転職やキャリアに効く資格はどれ

画像はイメージ=PIXTA

新しい年を迎え、心機一転、資格取得を考えているビジネスパーソンも多いだろう。どの資格を目指せば転職に有利か、今後のキャリアを生き抜くための資格は何か。全国に約40の専門学校を展開する「TAC」個人教育事業本部の三柴陽一郎さんに聞いた。

――資格に関心を持つビジネスパーソンが増えているようです。

「当校の受講者数で比較すると、2019年3月期は4年前と比べ11%増の約21万6000人でした。もともと資格は、好景気のときは経済的余裕ができるため、逆に不景気のときは雇用市場での『武器』として、ある程度安定した需要があるのですが、ここ2~3年、受講生の裾野が広がってきたと感じています」

「受講者は20~30歳代が6割、40歳代が2割、50歳代以上が約15%ですが、転職の一般化と人生100年時代の到来という2つの要因が追い風となっています。新しいスキルを身につけ転職に挑戦したいという20~30歳代中心の層に加え、退職後のセカンドキャリアを見据えた40~50歳代が資格取得に目を向けた影響で、市場が拡大してきました。この傾向はしばらく続くと思います。

人気が高い3つの資格

――最近、人気の資格は何ですか。

「特に人気が高い資格が3つあります。まず最近、非常に急速に人気を集めているのが『中小企業診断士』です。経営コンサルタントを認定する日本で唯一の国家資格で、学ぶ分野は経営戦略や人事、マーケティング、財務・会計、法務、製品管理、ITなど幅広く、経営全般に関する知識をバランスよく身につけることができます。転職やキャリアアップを目指す人、起業予備軍、コンサルタントとして定年後に働こうと思っている人、など様々な層が熱心に勉強しています。従来、受験生の大半は大企業の社員でしたが、最近は学生も増えています」

「人事・労務、社会保険のエキスパート資格である『社会保険労務士』も人気です。企業の雇用形態や働き方の多様化が進み、組織内でニーズが高まっているため、人事・総務の担当者らが取得を目指すようです」

「長年にわたって不動の人気を誇るのが『簿記』です。もともと、会計、英語、ITは社会人の『三種の神器』といわれてきましたが、簿記は会計の導入資格にあたります。業界を問わず、ビジネスパーソンにとって役立つ知識が得られるため、受験者数は年間50万人以上にもなります。最近は復職を目指す主婦の受講も増えています」

――転職を考えている人におすすめの資格はありますか。

「よく『転職に有利な資格は何か』と相談を受けますが、いつも一番にお伝えしているのが『転職に万能な資格はない』ということです。どの業界、職種への転職を考えているか、によって役に立つ資格は異なります。例えば、金融業界であれば、『ファイナンシャルプランナー(FP)』や『証券アナリスト』、不動産業界なら『宅地建物取引士(宅建)』といった具合です。IT分野では同分野の基礎となる『ITパスポート』という資格があります。ITだけでなく、経営戦略や情報管理なども試験内容に含まれるので、社会人にとって必要な幅広い知識を身につけられ、ITを仕事としない人にとっても役立ちます」

「職種の切り口であれば、人事労務を目指す人は『社会保険労務士』、法律系は『行政書士』などを取得すると有利になることが多いです。転職先についてイメージが漠然としているのであれば、会計・語学(英語)・ITを磨いてみてはいかがでしょうか」

「転職に万能とはいえませんが、最も汎用性が高いのは『中小企業診断士』でしょう。先ほどもお話ししたようにビジネス、会社経営に必要な知識が一通り学べるため、コンサルティング、経営企画、戦略立案といった業種、職種への転職では活用のしがいがあるはずです。企業経営への理解が深ければ、営業や財務の仕事にも役立つ場面が多いでしょう」

AIとも協業

――人工知能(AI)が人間の仕事を取って代わるという悲観論が聞かれます。「資格をとれば安泰」と思われがちな士業(中業企業診断士、社会保険労務士、行政書士、司法書士、宅建士、弁理士、税理士、会計士など)についても今後、AIの台頭で仕事がなくなる心配はないでしょうか。

「そうした懸念の声を受講相談のときに聞くこともあります。ただ、これらの士業の領域は『AIに仕事を奪われる』というよりも『AIと協業していく』ということになるのではないでしょうか」

「テクノロジーの進歩によって、士業の業務範囲の一部がAIに代替されていくことは容易に想像できます。例えば、申告書や決算書の単純な作成業務はその最たるもので、すでにAIへの移行が進んでいる分野です。ただ、士業の価値はこの単純作業の部分ではありません。AIはデータ分析で導き出した結果を説明することはできても『その数字をどう解釈し、どういった行動を起こすべきか』について提案し、説得することは人間に軍配が上がるはず。AIの進歩は士業のあり方を変えていくと思いますが、むしろ、専門家にしかできない部分がクローズアップされ、資格の価値は高まっていくのではないでしょうか」

――資格取得にあたり、社会人が注意すべきことはありますか。

「『資格さえとれば人生がうまくいく』かのように資格を万能視する人がいますが、それは誤りです。資格取得それ自体を目的とするのではなく、自分がこれから何をしたいのか、どのような仕事や人生を目指すのかをしっかりと見極め、それを実現するうえでツールとなる資格は何かを考えることが重要です。自分のキャリアデザインから外れた資格をとっても、転職などの際のアピールにはほとんどなりません」

「すきま時間」でコツコツと

――社会人にとっては勉強時間のねん出や学習コストがネックになりがちです。

「社会人は平日の大半を仕事に費やすので学習できる時間はかなり限られます。自分の生活スタイルに合った勉強法を決めてから取り組むことが大事です。合格者には通勤途中や昼休みなどの『すきま時間』を使って、コツコツ取り組んだ人が多いようです。学習費用については一般教育訓練給付制度を活用することをおすすめします。国が指定する講座コースを受講し、修了時に一定の要件を満たした場合に、入学金や受講費用の20%(上限10万円)が給付金として支払われる仕組みです」

――社会人が勉強を続けるためのコツはありますか。

「社会人は資格取得に対して強い動機がないと、なかなか勉強を続けることができません。勉強することが学生時代以来という人も多いと思いますが、まずは勉強の習慣を取り戻すことが肝要です。転職やキャリアアップのための資格であれば、取得後にどのようなライフプランを描くのかなどをよく考えてから資格を選び、勉強を始めることをおすすめします」