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識者インタビュー

転職のヤマ場は3~4月 年始にすべき3つの準備

転職のヤマ場は3~4月 年始にすべき3つの準備

新しい年に飛躍するためには相応の準備が必要(画像はイメージ=PIXTA)

年末年始の休みは1年を振り返り、決意を新たにするいい機会。特に転職を意識し始めたビジネスパーソンにとっては、この長期休暇をうまく生かせるか否かが、次なる挑戦を大きく左右するかもしれない。年末年始に取り組んでおきたいポイントについて、人材紹介大手、JACリクルートメントの早川徳二執行役員に聞いた。

――中途採用には新卒採用のような年間で決まったスケジュールがあるのでしょうか。

「まず、年間最大のヤマ場といえるのが3月期決算企業の年度末前後、3月から4月にかけてのタイミングです。3月は企業が新年度の組織体制を固め、どの部署で人員が何人足りないかなどの社内ニーズが見えてくるためです。4月に入ると、新体制が動き始めて『やはりこの部署で何人足りない』といった追加の募集が出ることもあります」

「第2のピークは半期末、9月末ごろですが、第1のピークに比べると求人の規模はだいぶ少なくなります。転職を考えているのであれば、まずは3月から4月の時期を意識するとよいのではないでしょうか。転職する側にとっても新年度からのスタートとあれば、何かと都合もよいでしょう」

――転職を考える人にとって、年末年始はどのような位置づけとなりますか。

「転職活動にかける期間は本当に人それぞれ、千差万別です。動き始めてすぐ決まる人もいれば、何年も活動した末に現在の会社にとどまる道を選ぶ人もいます。あえていえば『2、3カ月から半年』といったところでしょうか。これを中途採用ピークのタイミングと照らし合わせて考えると、年末年始はまさに入念に準備をすべき時期にあたります」

「中途の求人は『生もの』です。いつまでもあるわけではありません。十分に準備をした人だけがピーク時に出てきた『良い求人』に応募することができます。年末年始はそのための準備を整える絶好の機会といえます」


JACリクルートメント執行役員 早川徳二氏 2006年ジェイエイシージャパン(現JACリクルートメント)入社。横浜支店長や外資系製造業部門、エグゼクティブ部門、管理系人材の紹介部門の責任者を経て、19年から現職

――転職を考え始めた人が年末年始に取り組むべきことは何ですか。

「大きく分けて、(1)キャリアプランの策定(2)情報収集(3)家族に相談――の3つです。まず、キャリアプランの策定ですが、キャリアプランを考える前に、『何となく転職したい』と人材紹介会社へ相談に訪れる人が増えていることが気になります」

「『人間関係が嫌だ』『給料が少ない』など、現在の職場に対する不満をきっかけに転職を考える人たちは、往々にしてそれらの問題で頭がいっぱいになり、キャリアプランまで思いが至っていないようです」

「それぞれの問題が相談者にとって重要であることはよく分かりますが、少し思考を変えて『問題が解決されたとして、そのとき自分は何を仕事で成し遂げたいのか。どんな仕事をしたいのか』ということを考えてみてください」

「『新しい仕事にチャレンジしたい』など、前向きな理由で転職を考えはじめた人も、転職成功率を高めるためにも一度立ち止まって、じっくりとキャリアプランについて考えてみましょう」

キャリアプランは「やりたいこと」×「できること」

「キャリアプランは『やりたいこと』と『できること』の掛け算で決まります。『やりたいこと』については、自分自身がどういったときに心が満たされるか、楽しいと感じたか、を思い出すと分かりやすいです。『できること』はこれまでのキャリアを振り返り、どういったスキル、経験を培ってきたか、を洗い出してください」

――転職に関する情報はあふれていますが、おすすめの情報収集法はありますか。

「まずは転職情報サイトで、募集しているポジションや条件など、関心がある企業の募集内容をみてみましょう。自分の経験や能力がどの程度通用しそうか、どのような企業に採用される可能性があるか――など、マーケットでの自身のおおよそのポジションを確認できると思います」

「次のステップとして、転職エージェントからのヒアリングがあります。求人企業と密にやりとりしている人材紹介会社には、企業の求人募集の背景や求める人材像、サイトには載っていない求人案件など、一般には公にされていない情報が豊富にあります」

「情報収集で注意したいのが企業のホームページと口コミサイトです。上場企業であればホームページの株主・投資家向けのコーナーに、有価証券報告書や中期経営計画などを掲載していることが多いので、これらを読み込み、業績や重点分野を確認し、今後の方向性を見極めるようにしたいものです。外資系企業は日本語サイトで詳細な情報を開示していなくても、本国のサイトで投資家向け広報(IR)資料などを確認できる場合もあります。口コミサイトの書き込みはその会社を退職した人によるネガティブな投稿が多いので注意が必要でしょう」

「周りの転職経験者に話を聞く場合は、何が決め手となって転職先を決めたのか、どのように心が動いたのかなど、内面的なことを聞いてほしいですね。いつ何をしたか、というようなハウツー系の情報はあふれていますが、人間の心の機微については直接、経験者に聞かないと分からないので貴重な情報になりえます」

――家族への相談はどうしたらいいでしょうか。

「早い段階で家族、特に配偶者に転職の意思を伝えることが大切です。従来、転職が家庭で反対される場合、年収が下がるなどの待遇面が理由となることが圧倒的に多かったのですが、最近は『残業が多くなる』『子供の保育園の送迎が難しくなる』など、働き方を巡って反対されるケースが増えています」

「なぜ転職したいのか、どのような仕事をしていきたいのかといったことを分かりやすく説明したうえで、相手が絶対に譲れない条件、つまり年収や通勤時間、育児参加などについて聞いておきましょう」

――最近の中途採用市場の動向を教えてください。

「2019年度上期(4~9月)の当社を含む人材紹介会社大手3社による転職紹介人数は前年同期比12%増の4万1894人でした。転職市場が拡大していることが分かります。ただ、前年同期比ベースの伸び率は鈍化しています。製造業を中心に厳選採用の傾向を強めているようです」

「例えば、これまで『当該分野の経験3年以上』を応募要件にしていた企業が『10年以上』とするなど、採用条件を厳しくしているのです。2、3年前は景気の先行きが明るかったうえに、団塊世代の退職による人手不足問題が顕在化したことにより、『とにかく多くの人材を中途採用で確保したい』という企業が目立ちました。これに対して現在は、貿易摩擦などで景気に先行き不透明感が漂うことから、中途採用に慎重になっている企業が増えているようです」

「戦略採用」で選ばれる人材に

「では、2020年はどうなるか。大量採用ではなく『戦略的な採用』が続くとみられます。戦略的な採用とは、新規事業や海外拠点の拡大といったミッションが明確な採用のことです。転職を希望する側としては、こうした企業のミッションに対し応えられる人材になっておく必要があります」

「経験や実績が豊富な即戦力の人材を求める傾向が強まっています。これにより転職における『年齢の壁』はなくなりつつあります。実際のところ、直近の転職紹介人数のうち41歳以上は前年同期比30%増と大きく伸びました。『もう××歳だから』と萎縮する必要はありません。大事なのは年齢ではなく、スキルや経験です。これまでどのような力を培ったのか、それを新天地でどう発揮するのか。年末年始は、こうした問題を自分自身で整理するのに絶好の機会だと思います」

JACリクルートメント執行役員 早川徳二氏

2006年ジェイエイシージャパン(現JACリクルートメント)入社。横浜支店長や外資系製造業部門、エグゼクティブ部門、管理系人材の紹介部門の責任者を経て、19年から現職