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識者インタビュー

民間でも役立つ!「できる公務員」が実践する3つの共通点とは

民間でも役立つ!「できる公務員」が実践する3つの共通点とは

これまで出会った地方公務員は5000人以上。公務員向け有料コミュニティー「地方公務員オンラインサロン」の運営や優れた公務員を表彰する「地方公務員が本当にすごい!地方公務員アワード」を主催するなど、自称「日本一、公務員にまみれた生活を送っている民間人」というホルグの加藤年紀さん。2019年8月に発売した書籍『なぜ、彼らは「お役所仕事」を変えられたのか?』はAmazon書籍「公務員・官僚」カテゴリーで1位を獲得し、発売後3週間余りで3刷となるベストセラーになりました。「公務員」に精通する加藤さんに地方公務員への転職について最新事情を伺いました。

企業で活躍している人は公務員でも活躍できる

――地方自治体の中途採用の状況はいかがですか?

具体的な数値は取っていませんが中途採用のニーズは高く、特に企業出身者を採用する自治体はここ数年、確実に増えている印象があります。神戸市役所や大阪の四条畷市役所など民間から専門性のある人材を積極的に採用している自治体をよく目にしますし、活躍している職員も数多くいます。また、地方公務員は3年程度で部署を変わるのが一般的ですが、専門性を買われて採用された企業出身者の場合は長期にわたって知識・スキルを生かせるように、異動させないような運営をする自治体も増えてきました。

――役所から他の役所に転職するケースもあるようですね。

転職者全体から見ると数は多くありませんが、そういったケースは起きています。かつては新卒で入った役所で定年まで働く人がほとんどでしたが、最近は大きな裁量を持って挑戦できる組織を求めて、別の役所に転職する職員もいます。能力が高く、優秀な人であれば、自分の能力をより発揮できるところで働きたいという意識を持つのは当然のこと。実際、四条畷市役所や奈良県の生駒市役所では、意欲の高い公務員が門をたたくことも増えているそうです。

――企業出身者が公務員に転職して活躍するには?

企業と役所は文化が異なることをしっかり理解して、仕事を進めることが大事。例えば、売り上げや利益の最大化、コスト削減は企業であれば最優先されますが、役所にとっては最たる目的ではありません。「コスト削減のために今年は○○することはやめませんか」といった提案は企業であれば褒められるでしょうが、役所では大していい顔はされません。

企業で働いているときには思いもよらないことですが、発注先や補助金の交付先が市民や市内の企業だったりするので、「なぜ今年は補助金が付かないのか」と怒りを買うこともあります。公平性を重視する意識も強いです。取り組みに対して市民の平等性の担保は必ず指摘されます。意思決定や予算の決め方のスピードも企業と大きく異なります。

公務員に転職し、活躍する職員はそうした役所文化を理解していることに加えて、3つの共通点があります。1つは課題意識を持って仕事に取り組み、課題の本質を発見し、解決策を提案できること。課題があっても役所の中でいきなりすべてを変えることは難しいと理解しつつも迎合することなく、「もっといい方法がある」と熱意を持って提案できることです。千葉県の流山市役所に企業から転職した方は、仕事のコツを「組織に染まっているようで、染まっていないスタンスで取り組むこと」と明かしてくれました。

2つ目は提案のツボを押さえていること。上長に提案して、決裁や承認をもらうという仕事の流れは役所も企業も同じです。提案内容が独り善がりではなくロジカルで、相手にこう言ったら提案が通るという勘所を押さえることが仕事を成功させるポイントです。

3つ目は世の中の“風”を読むことに長けていることです。世間の動きにはブームがあり、分かりやすい例だと「地方創生」がそうでした。今は「働き方改革」や「AI(人工知能)」などがそれに当たるのかもしれません。話題になっている分野であれば役所は関連予算をつけやすく、行動に移しやすいのが実情です。

――3つの共通点は民間企業で働く場合も同じですね。

そう思います。民間企業で活躍している人は、役所が求める大義や仕事の進め方を間違えなければ、公務員として活躍できる土壌が大きくあります。本質的に仕事できる人は、どこで働いても変わらないということでしょう。地方自治体が民間人材の受け入れに積極的な今、転職しやすくなっていると感じます。

公務員志望者は勉強会で「役所文化」を知ることがおすすめ

――地方公務員を目指すとき、注意することはありますか?

地方公務員と一言で言っても、全国には1788の自治体があり、文化や風土、待遇などはそれぞれ異なります。私自身、いろいろな自治体職員から生の声を聞くことで、その違いを肌で感じました。公務員へ転職を考えたら1つの自治体だけでなく、いくつか見ることをおすすめします。

組織風土の違いの一端を示すのは、副業へのスタンスです。副業は地方公務員法第38条で原則禁止されていますが、任命権者の許可があれば認められます。職員の副業に寛容な自治体もあれば、全く認めようとしない自治体も。興味深いのは職員の副業について、積極的に外部に発信することのない自治体が実はとても寛容なケースがあることです。必ずしもメディアに出ている地方自治体ばかりが寛容なわけではありません。

――役所の文化を知るいい方法はありますか?

公務員の有志が開いている勉強会に参加してみてはいかがでしょうか。対象を公務員だけでなく、一般の市民にも開放している勉強会もあり、私もよく参加します。そこにいる公務員はオープンに接してくれる方も多いです。企業から転職した事例や役所に雰囲気などを尋ねると、詳しく教えてくれると思います。

「勉強会への出席はちょっと……」というのであれば、公務員の本音の仕事術をテーマにした本を読むのもいいでしょう。公務員の建前と本音について書かれており、知識を得るためには有効です。

「すごい公務員」が増加中?

――2019年8月に「地方公務員アワード2019」を発表しました。どのような賞ですか?

「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード」は17年から年1回開催しており、19年で3回目。現役の地方公務員で身近にいる「すごい!」公務員を推薦してもらい、受賞者を決定する仕組みです。審査も現役の地方公務員にお願いしています。

19年は123通の応募の中から13人がアワードを受賞、3年間で37人が受賞しました。年々注目度が上がっており、19年は後援・協賛に電通や公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)など12企業・団体に参加していただきました。昨年は50以上のメディアに取り上げていただきましたが、今年はもっと増えそうです。活動を理解していただき、本当にありがたいことです。

――これまで印象に残っている公務員の受賞者はいますか?

あえて挙げるなら次の3人です。1人目は寝屋川市役所の岡元譲史さん。地方税の徴収担当として滞納繰越金を9年間で約23億円圧縮しました。滞納者から恨みを買い、役所の中では「悪魔」と呼ばれたこともあったそうです。2人目は岩手中部水道企業団の菊池明敏さん。水道は各自治体の独占事業ですが、地方では人口減少や設備の老朽化などが進み、苦境に立たされています。その状況に危機感を覚えて約10年間かけて2市1町の水道事業を統合。水質の向上や水源を安定させただけでなく、17億円超のコスト削減をもたらしました。

3人目は元神奈川県中央児童相談所の鈴木浩之さん。児童虐待への対応は全国的に注目を集めており、非常に忙しく、厳しい仕事環境であることは広く知られています。そのような中、海外の先進的手法の導入を進め、実践と普及活動に力を入れました。

3人に共通するのは、諦めないで行動していること。周囲からあれこれ言われても気にせず、批判や抵抗をうまく受け流しながら自分の行動や信念を貫いています。これは他のアワード受賞者にも共通しています。

――最後に、これからの公務員の働き方をどのようにとらえていますか。

20~30歳代を中心に働く人のマインドが、給与の高さやポジションより、やりがいを優先するように変わってきている気がします。社会に貢献していると感じられる仕事を求める時代にシフトしているのではないでしょうか。その意味でいうと、地方公務員は非常にいい仕事です。自分が取り組んだことが目の前にいる市民に反映される、喜ばすことができると思えばうれしいですし、貢献している気持ちになれます。

もちろん、給与は安定していますし、地方では“大企業”のような職場です。給料をもらいながら人を喜ばせることを一義的に目指せる仕事であり、売り上げや利益を最優先事項とする企業とは異なる大きな醍醐味があります。

全国的に地方自治体は中途採用に門戸を開き始めました。企業出身者を採用する“風”が強く吹いています。企業で培ったスキルや経験は役所でも必ず生かせるでしょう。公務員という仕事の魅力に気づき、やりがいを感じる人が増えてくれればいいですね。

株式会社ホルグ 代表取締役社長

加藤 年紀さん

2007年4月、ネクスト(現LIFULL)に入社。16年7月に地方自治体を応援するウェブメディア「Heroes of Local Government」をリリース、16年9月に同社を退社後、11月にホルグを設立した。17年からは地方自治体職員を表彰する「地方公務員アワード」を主催、19年1月から公務員向け有料コミュニティーサイト「地方公務員オンラインサロン」を運営。現在「ダイヤモンド・オンライン」「Forbesjapan.com」などで公務員に関するテーマで執筆・寄稿する。18年度は埼玉県・三芳町魅力あるまちづくり戦略会議政策アドバイザーを務めた。著書に『なぜ、彼らは「お役所仕事」を変えられたのか?』がある。