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識者インタビュー

ヘッドハンターが教える! 40~50代でも「異業種」に転職できる方法

ヘッドハンターが教える! 40~50代でも「異業種」に転職できる方法

転職は業務経験を求められるのが一般的です。しかし、「業務未経験でも異業種への転職は可能。しかも40~50代でも案件はあります」と話すのは人材スカウト会社、半蔵門パートナーズの代表・武元康明さん。書籍『30代からの「異業種」転職 成功の極意』の著者で、現役のヘッドハンターとしてこれまで20年以上で2万人と出会い、転職を支援してきた実績を持っています。異業種転職を成功させるにはどのようなポイントがあるのか、話を伺いました。

異業種からの採用の決定要因は?

――40代、50代でも異業種への転職はできるのでしょうか?

できます。実際、私がこれまで支援してきた異業種への転職の実例としては、次のようなものがあります。いずれも40~50歳代です。

  • 新聞社・記者 → 医療機器メーカー・広報
  • 衛生機器メーカー・営業職 → 食品メーカー・役員
  • 航空会社・総務 → 製薬治験メーカー・役員
  • 大手家電メーカーの子会社・社長 → 病院事務長
  • デベロッパー・開発責任者 → 病院事務長
  • お菓子職人 → 大手鉄鋼メーカー・配合技術職
  • 銀行・営業職 → 飲食店・専務
  • 飲食店・社長 → 老舗出版社・顧問

――これらの人たちが異業種へ転職できた成功の要因は何ですか?

1つは40~50代に対して企業が求めるマネジメント層の資質を十分に持っていたこと、もう1つは「自分のOS」と「企業のOS」がマッチしたことです。OSはパソコンのオペレーティングシステム(基本ソフト)をイメージしてください。自分のOSとは資質や行動特性、理念、信条など人間力にまつわるもの、企業のOSは企業理念や社風、カルチャーなど企業の本質部分です。

転職はどうしても経験業務やスキル、保有資格などの「AP(アプリケーション)」に目が行きがちです。しかし、異業種に転職した方の共通点を見ると、APではなくOSのマッチングが決定要因になっています。

――OSのマッチングについてもう少し教えてください。

人は他人と合う・合わないの相性がありますよね。企業も個人の集合体なので「性格」があります。転職できるか、入社して活躍できるかどうかは、転職希望者と企業の相性が合っていることが最重要で、これがOSのマッチングです。

過去に履歴書や職務経歴書の内容が非常に優秀で、誰が見ても非の打ち所がない方がいました。言い換えればAPが優秀な方です。その方を含めて企業に数人紹介したところ、最終的には別の方が採用されました。こうしたケースは多々あります。企業は採用選考において、履歴書や職歴書に書かれるAPを参考にしても決定要素にはせず、最終的には相性(OS)で判断します。

APは求める要素が多少不足していても、時間とお金をかければキャッチアップできます。しかし、OSは合わなければいくら時間をかけても無駄です。即戦力を期待して採用したのに活躍できないというケースは、OSが合っていない可能性があります。

――マネジメント層に求められる資質とは?

リスクを取る覚悟を持った人かどうかですね。仕事で何か問題が起きたときなど、責任逃れをするような人は絶対に採用されません。それまでの経歴は大事ですが、部下をマネジメントするポジションに就くので、最も大事なのは逃げない資質。経営者は面接でこの点を必ず確認しますし、ポジションが上にいけばいくほど問われます。

マネジメント案件は増加傾向

――異業種への転職は増えているのでしょうか?

2008年のリーマンショックを機に、異業種への転職が増加してきた印象があります。それまでは即戦力採用が中心で、同業界から人を採る傾向がありました。しかし08年以降、国内人口が減少に転じ、企業は業態転換や新規事業開発、グローバル化などを推進。新たな視点を社内に取りいれようと異業種からの採用が増えました。マネジメントクラスの案件が増加したのもこの頃からです。

また医療業界、とりわけ病院の経営管理に関わる事務長・事務局長クラスの案件は引き合いが多いです。国の政策・戦略もあって特に地方では病院が街の中核として機能し、街づくりをしたり雇用を創出したりしています。病院の事務長といっても、それまで医療事務だけをやってきた人では街づくりのスキルが追いつかず、経済界でキャリアを積んできた人のニーズが高まっています。

――転職希望者が自分と企業のOSが合っているかを知るにはどうしたらいいですか?

その会社の人と直接会って話すことです。ネットを使えば、企業の様々な情報を入手できます。しかし、OSは暗黙知のようなところがあるので、直接話をしなければ分かりません。企業に知り合いがいなければ、面接の場で判断するようにしてください。やり取りの中で心地よい雰囲気があるのか、ちょっと違うと感じるのか。違和感があれば、その感覚は大事にしたほうがいいです。

――著書の中で「今の会社で評価が低いのは転職の好機」と書かれています。どういうことでしょうか?

私は大学卒業後、全日空エンタプライズに就職しました。その後、シンガポール航空とニュージーランド航空の航空3社で働いた後、29歳の時に人材ビジネス業界に転身しました。私自身も異業種転職組なのですが、振り返ってみると同業界の同職種(営業職)で同じように仕事をしても、企業によって評価はバラバラでした。

企業はそれぞれが作ってきた社風や文化、仕事の進め方があります。自分のOSは簡単には変えられませんし、仕事のやり方もなかなか変えることはできません。自分の仕事の進め方を評価してくれる上司であればいいのですが、評価しない上司もいます。評価してくれない上司の下でずっと我慢してやっていくのか、それとも別の道を探すのか。能力が発揮できないのであれば、別の“天職”と巡り合ういい機会と考えてみたらどうでしょうか。

事前準備は「自分を知る」と「周囲への相談」

――最後に、転職を成功させるには事前にどのような準備が必要ですか?

自分の資質や思考、強み、行動特性などOSを知ることに時間をかけてください。自分を知らなければ、自分と合う企業を探すことはできません。その上で、気になる求人案件がどのような資質や行動特性を求めるのかを推測することです。自分と案件が合っているなら、採用選考の場で自信を持って自分を伝えることができます。

また、転職を自分だけでは抱え込まず、家族や恩師、信頼のおける人に相談してみることも大事です。転職希望者の中には、ある程度採用選考が進んでいるにも関わらず、家族に伝えていない人もいます。その結果、内定後に転職を反対されて、ご破算になるケースもあります。誰かに相談したことで背中を押されることもあれば、難色を示されることもあるでしょう。相手の反応を見て、冷静に考え、判断できます。

「人生100年時代」といわれる今、70~80歳まで働くとなれば、就業期間はこれまでの40年間から60年間と1.5倍に伸びます。1つの会社で勤め上げるのは素晴らしいことですが、「今の職場で能力を発揮できていない」「仕事は順調だが何となく社風に合わない」などと感じるのであれば、職場を変えて、やりがいや満足度が高い環境を探す時代に突入していると思います。

経験業界や職種にとらわれず異業種にも目を向けると、チャンスは格段に広がります。転職は人生の大きな転機ですから、ためらう気持ちも分かります。自分のことをよく知り、家族や恩師、知人に相談した上で、勇気をもって判断し、行動することが大事です。

半蔵門パートナーズ株式会社 代表取締役

武元 康明さん

22年の人材サーチキャリアを持つ、経済界と医学界における有数のヘッドハンター。大卒後、航空業界を経て、1998年に人材ビジネス業界へ転身。欧米的な職務能力だけを評価するヘッドハンティングではなく、人物像まで評価し、依頼主のマネジメントスタイルや経営ステージに合わせた独自のマッチング理論を確立・実践し、評価を受けている。テレビドラマ「ヘッドハンター」(テレビ東京系)の監修のほか、著書に『30代からの「異業種」転職 成功の極意』(河出書房新社)などがある。

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