昨年、「WOMAN EXPO TOKYO 2016 Winter」が東京ミッドタウン(六本木)で開催された。パネリストとして迎えられた4人の女性リーダーたちが、キャリア形成の中で体験した印象的なエピソードや仕事観、リーダーとしての仕事術などについて語ってくれた。その様子をリポートする。
パネリスト紹介 

アクセンチュア株式会社
公共サービス・医療健康本部
シニア・マネジャー
小原 紗代子氏


野村證券株式会社 本店営業部
エグゼクティブ ファイナンシャル アドバイザー

株式会社セールスフォース・ドットコム
Salesforce.org(社会貢献部門)
ディレクター
遠藤 理恵氏


カルビー株式会社
マーケティング本部
フルグラ事業部 事業部長
藤原 かおり氏
モデレーター 

株式会社はぴきゃり 代表取締役
金澤 悦子氏
葛藤を乗り越えた先に道がある!
今の私を作ったターニングポイント
金澤 まずは、みなさんが今の仕事に就いたきっかけについて教えてください。

新卒で入社した日系の情報系企業は事業部制で、特定の顧客と長く付き合うという性質の仕事が中心でした。上司や同僚もほぼ固定化されていて変化が少なく、「何か新しいことに取り組みたい!」という気持ちが強く湧き上がってきたのです。転職先の外資系コンサルティング会社での業務はプロジェクト制で、一つの仕事をやり遂げる充実感とメリハリがあり、理想の働き方に近づけたという実感を得ることができましたが、さらにキャリアアップをしたいと考え、現在の会社へ転職をしました。これまで何度か転職を重ねてきましたが、身近な生活や日常に直結する仕事、つまり公共性のある仕事をしたいという思いは一貫しています。
遠藤 私がキャリア形成を考える上で土台となっているのが、ひとつは「世の中の役に立ちたい」ということ。もうひとつが「もっと広い世界を知りたい」ということです。転職の際には、必ずこの2つのテーマが決意のベースにありました。それぞれの職場でチャレンジや葛藤に直面してきましたが、これらの経験以上に大きな学びとなったのが、祖母の介護でした。社会との接点がほとんどない生活の中で、働くことの喜びを再確認しました。たとえ仕事でつらいことがあっても、社会に貢献できるありがたさを実感できるようになりましたね。
バブル時代に野村證券に入社し、本当に多忙な日々でした。若くて体力もあったのでその忙しさも楽しく、毎日が充実していました。しかし妊娠を機に退職して育児に専念していると、先ほど遠藤さんがおっしゃったように、社会から取り残されている不安や寂しさを感じるように。何か勉強をしたいと思い、後輩を誘ってファイナンシャルプランナー養成の学校へ通い始めたのが今のキャリアにつながっています。野村證券にファイナンシャルアドバイザーとして再入社した後、リーマンショックという大ピンチにも遭遇しましたが、その試練を乗り越えたことでお客様とより深い信頼関係を築くことができた。この職種を選んで良かったと、今は心から満足しています。

藤原 私は「日本の商品を世界に発信したい」とカルビーに転職したのですが、最初に担当した新商品が短期間で販売終了することになってしまったのです。一時期は社内失業状態で再度の転職を覚悟しましたが、そのとき、フルグラという商品のプロジェクトをやってみないかと声がかかったのです。私に課せられたのは「30億の売上を100億にしなさい」というハードなミッション。これまでに培ってきたマーケティングのキャリアの成否を賭ける覚悟で挑み、幸いにも1年で成果を出すことができました。最初の失敗はつらい経験でしたが、プロジェクトのクロージングにおいて、関わったすべての人々に誠意をもって気持ちを伝えることの大切さを、身をもって学びました。
人を育てる喜びが管理職のやりがい
“10年後の私”を見据えたキャリア形成を

金澤 鉃さんは、管理職ではなく専門職という形で働いていらっしゃいます。管理職を選ばなかった理由はあるのでしょうか。
自然な成り行きで、というのが正直なところです。ただ、管理職ではないのですが人材育成に対する問題意識は以前から持っていたため、ファイナンシャルアドバイザーという同じ立場の人たちに自主的に声をかけて年に1度、勉強会を開催しています。情報交換したり、気軽に悩みを相談したりすることでモチベーションをアップするのが目的です。最初は少人数で行っていたのですが現在では100人規模の大きな会に成長し、会場の提供など、会社からも協力を得られるようになりました。
金澤 管理職になったことで、どんなメリットがありましたか?
遠藤 現在の部署は最初、私一人でスタートしたので、部署が大きくなる過程でおのずとリーダーとして働く形になりました。自分だけでできることは限られていますし、同じ目標に向かって歩いてくれるメンバーがいてくれることをありがたく感じます。また、もともと人が好きなので、部下の成長を助けて、いかにチームとしてのベストパフォーマンスを出せるかを考えるのがとても楽しい。『早く行くなら1人で、遠くまで行くならみんなで』という言葉がありますが、人を育てるスキルを伸ばすことが私には合っているようです。
私は管理職として、チームメンバーとのコミュニケーションで心掛けているのが、積極的な声掛けです。日中は客先にいてチームメンバーと夜まで顔を合わせないということも多いので、プロジェクトルームに足を運んだときは必ず全員と言葉を交わします。今、どういう作業をしているのか、どんな課題を抱えているのかをしっかりヒアリングし、心配りをするようにしています。もっと気さくに話したいときは、仕事の後の飲み会を有効に活用しています。
金澤 キャリアを形成する上で役に立ったことは何ですか?

藤原 転職を繰り返し、キャリア形成に悩んでいた20代後半に受けたコーチングがとても役に立ちました。5年後、10年後、20年後の自分の理想像を考えると、今やるべきことが明確に見えてきます。そのときに出会ったコーチとは現在も付き合いがあり、実は、管理職の打診を受けたときもコーチに相談したのです。これまでマネジメントにあまり関心がなく、管理職を担うことに迷いがあったのですが、「将来のあなたには必ずこの経験が必要となるはず」というアドバイスに背中を押されました。
女性リーダーとしてさらに輝く未来へ!
今後の目標と実現したい夢とは
今年7月に大きなプロジェクトが予定されており、今はチームメンバーが一丸となってその準備に取りかかっています。そのほかにも社内で女性の採用活動に携わっており、私が所属している部署の説明会の企画なども担当しています。もっと当社のことを広く知っていただき、一緒に働いてくれる方を集めるのが目標です。

遠藤 仕事面では、近い将来には今の部署の規模を倍増し、より大きな仕事を実現させたいという夢があります。先日、40歳を迎えたとき、人生の折り返し地点を強く意識しました。これまでいろいろな人に支えていただいた分を社会に恩返ししていきたい。仕事とプライベートの両方を満たす、フレキシブルな生き方について思案しています。
ファイナンシャル アドバイザーとして、もっと、ごく普通に投資をする人々を増やしたいです。お金を有効に活かさないと日本経済が活性化しませんし、豊かな老後を迎えていただくためにも、投資の必要性を多くの方にアピールしていきたい。もうひとつの目標は入社当時からの夢で、社内に保育所を整備すること。そこでボランティアの保母さんとして子どもたちと過ごせたらうれしいですね。
藤原 今年4月に執行役員へ昇進することが決まりました。そのポジションに必要なスキルや役割などについて、4月までの間にしっかり勉強をしたいと思っています。20代のときは10年後、20年後の姿を思い描いてキャリア設計に役立ててきましたが、今はそういうのがないので、改めて今後の進む道について考えたいと思います。
金澤 みなさん、とても良いお話をありがとうございました。今日の4人のお話の中から、何か1つだけでもできることから実践していただきたいと思います。
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