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しなやかなキャリアを築く“マイルール”

しなやかなキャリアを築く“マイルール”

 東京ミッドタウンで開催された「WOMAN EXPO TOKYO 2019」。本セッションでは、最前線で活躍する女性リーダー4名が登壇し、キャリアの切り拓き方から仕事やプライベートでの“マイルール”についてトークを繰り広げ、多くの女性たちの共感を呼んだ。

 パネリスト紹介 

千田 尚子

KPMGコンサルティング株式会社
製造セクター/I&D推進 シニアマネジャー

千田 尚子

大学で国際経済学を学び、大学院にて経営学修士号を取得。外資系製造業や外資系ソフトウェア企業数社を経てKPMGコンサルティング株式会社入社。シニアマネジャーとして、主にインダストリー4.0のジャパンリードとして製造業のデジタル変革支援に従事。また社内I&D推進担当として、多様性から企業成長へ結びつける活動を推進中。プライベートでは、中学生の母として多忙な毎日を送っている。

安部 美佐子

株式会社フィリップス・ジャパン
スリープ & レスピラトリーケア事業部
事業部長

安部 美佐子

大学卒業後、米国留学し帰国。米系スポーツメーカーに就職。その後外資系投資銀行に転職し、金融派生商品の営業・マーケティングとして10年間法人営業を担当した。マネーの世界も人にかかわる仕事でもあるので、より人の生活に直接役立つ仕事に関わりたいと思い、米国でMBA取得、キャリアチェンジして医療機器業界に入る。医療機器の中でも在宅医療に約15年携わり、ファイナンス・経営企画・営業など様々な経験を積み、現在に至る。フィリップスには2012年入社、人工呼吸器や睡眠時無呼吸症候群の診断・治療装置を扱う部門を率いている。

中川 由美

日本電産株式会社
企業戦略室長

中川 由美

大学院修了後、外資系の大手IT企業に就職し、以降20年間在籍する。営業やM&Aなどを担当し、部長職も務める。2015年、日本の大手菓子メーカーに転職。財務経理本部長と米国法人社長を経験。18年8月、日本電産に入社。企業戦略室にてM&Aの業務を担う組織を率いる。

中山 あやこ

三井物産株式会社
人事総務部 ダイバーシティ経営推進室
室長

中山 あやこ

大学卒業後、三井物産株式会社に入社。繊維部門に配属となり、アパレル業界の輸出入商内担当。その後、主にコンシューマー関連事業における事業投資、関係会社の事業再編、等事業経営を行う。アジア・大洋州三井物産での駐在経験を経て、現在三井物産グローバル・グループのダイバーシティ経営を担当。私生活では三児の母。

 モデレーター 

金澤 悦子

株式会社はぴきゃり

金澤 悦子

人材関連会社2社を経て、2005年に独立し株式会社はぴきゃりを設立。働く女性のためのキャリアの学校「はぴきゃりアカデミー」を運営。統計心理学を使ったオリジナルメソッドにより「ココロとサイフが満たされる仕事発見」を支援。著書に「ハッピーキャリアのつくりかた」(ダイヤモンド社)など。40歳で第1子を出産。

トークセッション

目の前の仕事に真摯に取り組めば
キャリアは自然とついてくる

金澤 まずは自己紹介と現在の仕事内容、やりがいなどをお聞かせください。

安部 フィリップス・ジャパンで在宅医療を担当している部門の責任者をしています。人工呼吸器と、睡眠時無呼吸症候群の検査・治療装置のセールスと長期ケアなどをお手伝いする事業部です。やはり直接患者様のお役に立てているということを感じられる仕事であること、それがやりがいだと感じています。

中山 大学卒業後に三井物産に入社してからは、長らく営業職を担当してきました。去年の9月からダイバーシティ経営推進室に異動になり、初めて人事の仕事をしております。社員ひとりひとりに合った多様なキャリア形成、そして女性がどんどん活躍できる機会作りに自分の経験を踏まえて尽力しているところです。今までは自分の業務だけをやってきましたが、今は社員がどんなふうに輝けるのかという色々なパターンを見られることがとても楽しいです。

千田 KPMGコンサルティングは、事業変革、テクノロジー、リスク&コンプライアンスの3分野でサービスを提供するコンサルティングファームです。私はその中で、製造業のお客様に対するコンサルティングの仕事に携わっています。加えて今年3月からインクルージョン&ダイバーシティ推進室に所属し、会社の中で多様性を広めるための活動をしています。

中川 M&Aの案件発掘から実践までを担当する実行部隊である企業戦略室で、責任者をしております。M&Aの対象となる会社は日本国内はもちろん、クロスボーダーと言われる海外の会社も多く、海外出張に飛び回る生活を送っています。日本電産はM&Aを成長戦略のひとつと位置づけていますので、私の仕事の実績がそのまま会社の成長につながることに非常にやりがいを感じています。

金澤 1つ目のテーマは「キャリアを築く上での“マイルール”」です。皆さんは、今の自分が20代の頃に思い描いていた通りになっていますか。

中川 明確なキャリア像を描いていたわけではありませんが、こういう人になりたいという理想像として「海外を飛び回る仕事がしたい」と20代の頃から思っていました。そこに近づくためにさまざまな選択をしてきたので、思い描いていた自分になっているのかなと思っています。日本電産は3社目ですが、1社目も夢に近づきたくて外資系の企業を選びました。実は小学生のときの文集で、あなたの夢は何ですかという問いに対して「世界中を飛び回りたい」と書いていまして。昔からそういう思考があったようです。

安部 私は全然違います。ここに大学のときの同級生がいたら今の私を見て「えー!」ってびっくりするくらい、かなり行き当たりばったりでここまでやってきた感じですね。ある程度自分のやりたいことが何となく見えたのは、40歳くらいかなと思います。それまでは一生懸命に目の前の仕事をこなしながら頑張って走ってきた、そんな印象です。

中山 私も安部さんと似ています。三井物産に入社するときも、こうなりたいという明確なビジョンは持っていませんでした。例えば世の中に何かを作っていくとか、新たなサービスを創り出すとか、そういったところを追究した結果キャリアが伴ってきたというのが今の実感です。ちなみに、私は小学生のときの文集に「夢は専業主婦」と書いていました(笑)。その当時は母に憧れていたのかもしれません。

千田 マイペースな性格なので、ずっと企業で働くというよりも自分で事業をするようなイメージを持っていました。また、母親が教師で校長先生として忙しくしている姿を見ていて、自分もいずれはそういう方向に行くのかなというおぼろげなイメージもありました。企業の中でキャリアを積むという考えは、若い頃は特にありませんでした。

金澤 安部さんと中山さんは、目の前の仕事をこなしていった先に今の自分があるという共通点が感じられました。時にはやりたい仕事とは違う業務もあったかと思いますが、どのように乗り越えられましたか。

安部 社内で「本当はこういう仕事がしたい」と訴えるにあたって、やはり今の仕事をきちっとこなしていないと聞く耳を持ってくれません。たとえイヤな仕事であっても、それをきっちりこなした上で「自分はこういう方向性で将来仕事がしたい」と色々な人に伝えること。やりたいことに似た仕事が来たらやってみるとか、自分には難しいかもしれないと感じる仕事にもチャレンジするとか、そういうことを繰り返してきました。

中山 私も与えられた業務をひたすら頑張ってきたという感じです。与えられた仕事をただこなしている状況だとつまらなくなるので、何か自分なりの課題作りというかターゲットを作ると、そこに向けてドライブしていく自分を作り出せると思うんです。その連続でここまで来ました。そういったプロセスの中で色々な取引先との接点ができたり、パートナーとの信頼関係が生まれたり、だんだん自分の知識や経験が膨らんで厚みを増していき、キャリアという形で見えるものになってきているのかなと。

金澤 すごくいいヒントをありがとうございます。中川さんは、以前上司から勧められた本があったと聞きました。

中川 渡辺淳一さんの「鈍感力」という本を渡されました。プライベートはどうであれ、仕事の上では何事にもクールに接しなさいというメッセージでした。まったくその通りだと思って、それを意識しながら仕事をしてきたので、今では仕事のオンとプライベートでのオフをパキッと切り替えられるようになりました。すぐに変えられたわけではなく少しずつですが、最初は、仕事の際は落ち込んでいたとしても周りに気づかれないように努力したり、すごく嬉しくてハイテンションでも落ち着いて対応してみたり。オンとオフの切り替えは、ある程度年月をかけてできるようになった技です。

金澤 千田さんは鈍感力がある方だとおっしゃっていましたが、あまり悩んだりはしないほうですか。

千田 もちろん悩むこともありますし、時として感情が高ぶることもありますよね。私自身、元々鈍感力を持っていたわけではないですが、色々な経験をしながら自分が疲弊してしまわないように、ある程度受け流すとことと受け止めることを棲み分けられるようになったんだと思います。

金澤 ありがとうございました。では、20代30代の若いうちに経験しておくといい、ということがあればお願いします。

安部 今勤めているフィリップス・ジャパンは4社目ですが、1社目に勤めた外資系の会社が入社4年目で業績悪化に陥り失業してしまいました。やっぱり、会社がある程度面倒を見てくれるだろうという期待感が心の中にあったと思うんです。それがばっさりと向こうから縁を切られてしまった。そこで「自分でちゃんと稼がないとダメなんだ」と、28歳くらいでようやく気づきまして。ぜひ経験してほしいとは言えませんが(笑)、私にとってはすごく大きな経験だったし、悪いことも結果的には良い経験になるということです。確かにしんどかったですが、この経験をしたからこそ今の自分があるのだと思います。

中山 長女が今大学生なので、彼女を見ていると自分の時代との違いを感じます。今は選択肢が多く情報にあふれているので、何を選ぶのが正解かという発想で取り組もうとすると逆に選び辛くなるのではと思います。もっと原点に帰って、自分は何をやったら一番喜びを感じて、何をやったらイヤだと感じるのか。そういうプリミティブなところでしっかり1度自分を見つめ直す機会を持つと、あとは応用編というか、データの選び方になってくるのではないかと最近強く思います。

千田 仕事以外という観点でいくと、美術や演劇を見たり音楽を聞いたり、普段は触れづらいものに触れるようにしています。自分のヒューマンスキルを仕事軸でトレーニングをしていればいいというわけではなく、これから色々な環境の変化が起こる中で、仕事以外のことが活用できるというケースも往々にあると思います。専門性や自分のやりたい方向性を考えながらも、たまには見方を変えて違うカルチャーなどに触れてみるのも必要だと思います。

中川 私もプライベートはできるだけ仕事と切り離したことをあえてやります。そうすることで自分がリフレッシュされて、スッキリした気持ちでまた仕事に取り組め、結果いい仕事につながる。その循環が非常に自分の中でうまく回っていると思います。また経験をしてよかったことの一つが結婚ですね。初めて自分の努力だけではうまくいかないこともあると知ったし、ものごとを多面的に考えられるようになりました。家族も会社もそうですが、一方の意見だけで決断を下さない。色々な人の意見を聞いた上でベストを選びます。それは100点ではないかもしれないけど、誰に対しても80点という着地点を探すことでものごとが上手く回っていくきっかけになると思います。

“ワークライフバランス”ではなく
“ワークライフマネジメント”と捉える

金澤 2つ目のテーマは「女性リーダーとしての“マイルール”」です。元々リーダー職を目指していましたか。

中山 私はノーです。自分がどうなりたいかよりも何をしたいかを追究してきたので、業務をこなしていく過程でキャリアが付いてきて、自然な流れで管理職になりました。初めからリーダーを目指してもいなかったし、なりたくないとも思っていなかったと言ったほうが正解だと思います。最初のリーダーシップ研修で「部下は自分の子どもだと思って育てろ」と言われたことにものすごく違和感がありましたが、実際にリーダーになってみると、感覚としては子育てと似ている部分もあります。自分の子どもの場合は長所よりも短所が気になってしまいますが、部下の場合は強みのほうになるべく目を向けるようにして、どうしたらそれを生かせるのかを意識しています。

千田 同じく私もノーです。スポーツでは水泳やゴルフなどの個人競技を嗜好してきましたし、仕事も個人で動く傾向が強かったです。今はリーダーという立場ですがメンバーとは常に対等で接し、私自身はリーダーだからと意識することは全くありません。メンバー一人一人の良い所を理解しより良いものを創り上げて行くという意識は持っています。

安部 私もリーダーになりたいとはつゆほども思っていませんでした。ただ、真剣に将来の方向性ややりたいことが見えてきたときに、会社の中でステップアップしたいという気持ちが出てきました。営業畑が長かったので、やっぱりチームをまとめる人にならないとキャリアアップはできないんですね。上を目指すにあたってはそういうポジションを狙っていく必要があった、というのが正直なところです。

中川 イエスかノーか迷いました。私は常に次のステップへ成長していくことを考えて仕事をしてきたので、その途中に自然とリーダー職がありました。リーダー職になるぞ!みたいな感じでは全然ないです。

金澤 リーダーになって良かったか?という質問に対しては、全員イエスでした。私も同じです。今までとは違う景色が見えるようになるので、チャンスがある方にはぜひリーダーになって欲しいと思います。では3つ目のテーマは「心地よいワークライフバランスを保つための“マイルール”」。ワークライフバランス保てていますか。

千田 定時で仕事を終えて帰るケースがあまりないですが、イエスかノーか迷うところです。ただ誤解のないように申し上げておくと、私はよく言えば知的好奇心が強いほうで、色々なことを調べたりするのが好きです。クライアントへの提案資料の作成や進行中のプロジェクトに必要な情報を収集するために定時を過ぎている日もあり、時間的観点で見るとバランスは保てていないかもしれないですが、必要な事を調べる事は気持ちとしてはヘルシーです。ですので答えに迷いました。

中山 まずワークライフバランスという言葉が、なんとなくバランスしなきゃいけないという前提で聞かれているような気がして私にとっては少し違和感があります。私という人間は1人で、妻であり母親であり仕事もするので、それをバランスするのはそもそもおかしいのでは。ワークライフマネジメントができていますか、と聞かれるのが一番しっくりくるし、その質問に対しては自分なりにマネージしていますと答えられます。そういうふうに解釈すると、私はイエスです。仕事も家庭も自分なりのやり方でマネージできているかなと。

金澤 ワークライフマネジメントと考えればいいんですね、すごく納得です。

安部 フィリップスには、ワークライフバランスを保つためのフレキシブルワーキングや在宅勤務、家族のケアリーブなどが整備されているので、今はすごく自分の時間が取れていて、バランスが保てていますし、正直、ワークとプライベートのマネジメントもできていると思います。

中川 私もマネジメントできるように色々と工夫していて、例えば仕事のほうが忙しくてプライベートが少なくなった日があれば、それは1週間で解決するとか。家族にも「今は忙しいけど、このあと時間ができるので一緒に過ごそうね」と話をしています。自分のことを分かってくれる人が周りにいるのはすごく勇気づけられますし、仕事もしやすくなるので、できるだけ会話はしています。バランスはどうかなと思う時もありますが、マネジメントは比較的できているかなと。マネジメントという言葉はとてもいいですね。

5年後、10年後の未来に
リーダーたちが実現したい夢とは

金澤では最後に、今後実現させたい夢などをお一人ずつ聞いていきたいと思います。

安部 今フィリップス・ジャパンは変革期を迎えており、ヘルステックカンパニーでナンバーワンになるという大きな目標を掲げています。物を売るビジネスからソリューションビジネスへの変革です。社内ではオペレーションの変革など色々なことが起きているので、チームをうまくまとめながらリーダーとして明確な方向性を示し、変革期をいい転換期として活用したいです。在宅医療のビジネスは政府の方針から考えても今後もどんどん伸びていくし、国の中でも重要になってくると思います。そこを支えるリーディングプレーヤーになれるように、5年後10年後もきちっとしたビジネスやサポートを患者様に届けられるような組織作りをするのが夢です。

中山 仕事の上では、今回のセミナーもそうですけれども多様な女性が当社の中で活躍できるような場所を作り、実際に活躍している女性をどんどん作って行きたいです。三井物産らしい女性の活躍の仕方をしっかりと作り上げていくことを、一番主眼に考えたいですね。個人的な夢としては、今農業にすごく興味を持っていまして。引退後に向けて準備を始めたいと思っているので、とてもワクワクしています。

千田 10年後がどうなるのか、非常に読みづらい時代だと感じます。コンサルティングの仕事はプロジェクトごとにテーマが変わりますが、その1つ1つが非常に面白い。自分の専門性を更に高めながらも知的好奇心をどんどん増やすことが直近のテーマです。また、SDGsに代表される世の中の課題についても自分のことのように捉えて、会社としても個人としても関わりが求められていると思います。その中で、やはりジェンダーというテーマは私自身も改めて解釈をし直しているところもありますし、日本全体が他の先進国に比べて遅れているという状況も考えると、そこに対しての活動を底上げできるような取り組みができたらと考えています。

中川 私はすごく柔らかい夢なんですけれども、去年より今年、今年より来年、ひとつひとつしなやかに成長して、良い年齢の重ね方をしたいと思っています。もう50歳ですし、気づくとただのおじさん化したおばさんになりたくないっていう思いが結構ありまして。ちゃんと中身のある素敵な人間になりたいなと思います。