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今は増やしたいなんて…氷河期世代「社内で不足」3割

今は増やしたいなんて…氷河期世代「社内で不足」3割

画像はイメージ=PIXTA
「就職氷河期世代」が足りない企業は3割足らず――。転職情報サイト「日経キャリアNET」が企業の人事担当者にアンケートを実施したところ、バブル経済崩壊後に大学などを卒業した30歳代半ばから40歳代の人材について、不足感がそれほど強くないことが分かった。人手不足で中途採用に積極的な企業が多いものの、年齢にこだわらない能力本位の採用を打ち出したり、より若い人材を求めたり、氷河期世代に限った採用には消極的な企業が大半を占めた。

アンケート調査は日経キャリアNETを運営する日経HRが企業の人事・採用担当者を対象に2020年2月に実施、53社から回答を得た。35歳から49歳前後を「就職氷河期世代」として、この世代についての採用意欲や評価などを聞いた。

「氷河期世代の社員数は十分か、不足しているか」との質問に対しては、「大いに足りている」(19%)と「まあ足りている」(30%)との回答が合計でほぼ半数に達した。半面、「少し足りない」(23%)と「全く足りていない」(5%)は合計で約3割にとどまった。

氷河期世代が大学などを卒業した当時、多くの企業が新卒採用を絞り込んだが、これまでに中途採用で充足したり、より若い世代の採用を優先したりする企業も少なくなく、氷河期世代についての「不足感」は総じてあまり高くないようだ。「足りない」と回答した企業の約7割は従業員数100人未満の中堅・中小企業だった。

【回答企業の声】
5年後、10年後を見据えると、氷河期世代よりも若手が必要(大いに足りている)
増員するなら若手を増やしたい(大いに足りている)
氷河期世代は一定数いるが、30歳代前半が少ない(まあ足りている)
中途入社が多く、氷河期世代だから少ないというわけではない(どちらとも言えない)
不景気の影響で採用数を絞っていた時期にあたる(少し足りない)

「求める条件の人材が採用できるのであれば」としたうえで、「氷河期世代の中途採用を増やしたいか」と尋ねたところ、「大いに増やしたい」(11%)、「少し増やしたい」(42%)と積極的な企業が過半数を占めた。

特に従業員数50人未満の中小企業の約7割が「増やしたい」と回答。ここ数年の新卒獲得の競争激化を背景に、必要数を確保できなかった中堅・中小企業が中途採用に活路を見いだそうとする事情がうかがえる。

一方、年齢にこだわらない実力主義の採用方針を掲げる企業が増えているほか、教育にかける費用や給与水準などを勘案し「より若手を採用したい」と考える企業も少なくない。人手不足がそのまま氷河期世代の採用拡大につながるかは不透明だ。

【回答企業の声】
求める人材であれば世代は問わない(大いに増やしたい)
40歳代前半の即戦力であれば、積極的に採用したい(大いに増やしたい)
20歳代から30歳代前半を希望している(どちらとも言えない)
マッチングが難しい。専門性のあるミドルは増やしたい(どちらとも言えない)
35歳以下を採用希望(あまり増やしたくない)

既に社内で働く氷河期世代についての評価が高いか低いかを聞いたところ、「どちらとも言えない」が47%と約半数を占めたものの、「非常に高い」が13%、「少し高い」が36%と総じて評価は高い傾向にあった。

【回答企業の声】
バブル、ゆとり世代と比較して自立心や意欲に富んでいる(非常に高い)
ちょっとしたことで折れない心を持っている(少し高い)
今の会社でパフォーマンスを出そうと意欲的な人が多い(少し高い)
個人差はあるが、総じて管理職になるには物足りない(どちらとも言えない)
従順ではあるが、自発性、主体性が低い(少し低い)
仕事の経験値は高いが、ピークを過ぎている人が多い(少し低い)

氷河期世代に絞った採用の予定について聞いたところ、「予定あり」は10%にとどまり、「ない」(55%)、「未定」(35%)といった消極的な企業が目立った。政府は3年間で氷河期世代の正規雇用者を30万人増やす目標を掲げているが、実現までには曲折も予想される。

「氷河期世代が転職/就職活動をする際、どのような点に気を付けたらよいか」についても聞いた。「年収や雇用形態よりもキャリア形成を意識するべき」「就業経験が少ない人は、採用面談で『なぜその会社なのか』をしっかりアピールすることが大事」「前向き思考でネガティブにならない」「やる気を前面に出して面接に臨んでほしい」などの声が聞かれた。

氷河期世代に限定した採用を始めた企業の担当者に話を聞いた。

山九(総合物流)
人事部長 青山勝巳氏

受注増に加え、働き方改革で、現場での人手不足が続いています。新卒、中途合わせて年間1000人を採用してきましたが、ここ最近は新卒の獲得が厳しくなっています。採用で年齢制限を設けることは法律で禁じられていますが、氷河期世代に限ってこれを認める政府の支援策が始まることを知り、新たな採用手法になると考えました。

19年9月から取り組みを始め、20年1月末までに71人の応募があり、うち11人を採用しました。想定よりも少ないですが、徐々に認知度も高まり、これまで接点がなかった人材に興味を持ってもらえることが増えたと感じています。今後は、転職サイトや転職フェアなどを通じて露出を増やすと同時に、未経験者でも可能な仕事であることも説明して、採用に弾みをつけたいです。

パソナグループ(人材サービス大手)
HR・アドミ本部長補佐 山本哲史氏

当社は19年12月、氷河期世代を中心に300人を正社員として採用する方針を発表しました。20年1月に東京と大阪で説明会を開いて募集を始めたところ、これまでに約400人の応募があり、すでに20人以上に内定を出しました。応募者のうち、非正規雇用は6割、正社員が4割ほどで、仕事に就いている人からの応募が想定よりも多いです。

募集しているのは主にグループ会社が淡路島で手がける地方創生事業の人材です。観光施設の運営や営業、商品企画、農業、人事・経理・総務といった仕事に就いてもらいます。応募は当初予想したよりやや少ない印象ですが、「正社員」かつ「新しい土地での地方創生の仕事」ということに魅力を感じ、興味を持つ人もいます。今後は地方でも説明会を開き、2021年春までの計画達成を目指します。

豊田義博 リクルートワークス研究所 特任研究員の話

政府が氷河期世代向けに支援策を打ち出したこと自体は評価できます。この世代はこれまで苦労を重ねた経験から「自分は転職できない」「仕事につけない」と思い込みがちな人も少なくないので、個別のカウンセリングで本人の可能性を上手に引き出してあげる必要があるでしょう。きめ細かいケアを提供するインフラをいかに構築するかが課題といえます。