日経キャリアNET

ビジネスパーソンのキャリアアップ・転職について考えるニュース・コラムサイト

異文化?いい文化!

第12回 外国人の使う日本語に配慮

第12回 外国人の使う日本語に配慮

 東京のような大都市ばかりでなく、地方の小都市にも外国人の住民が多くなりました。外国人の住民数が市の人口の10%に届こうとしている都市もあり、地方で活躍するビジネスパーソンの中には、何語で話そうかと悩む人もいるようです。

ゆっくり、間を取って、短い文で話す

 どのような外国人が住んでいるかというと、それは市町村によってさまざまです。ひと頃前までは南米出身の日系人が多かったのですが、今はアジアのさまざまな国から多くの人が日本に来ています。英語を理解する人の多いフィリピン出身の住民はどの町にも多いですが、ベトナムやネパール出身の住民も増えていて、英語が通じないこともあります。
 そんなときには、第6回で取り上げた「やさしい日本語」が役に立ちます。漢字で書かないと意味が取りにくい漢語(例「脆弱性」「売買」)よりも、一つひとつの音が捉えやすく比較的容易な和語(例「弱さ」「売り買い」)のほうが、一般には伝わりやすいものです。
 意外と外来語は、日本での使い方が本来の使い方と意味が異なってしまっているので要注意。「マンション」と英語のmansion(大邸宅)が違う意味だということは言うまでもありませんが、ビジネスパーソンは外来語好きな人が多く、時に混乱を招きます。英語なら英語、日本語なら(和語を中心とした)日本語と決めることが第一。それを、ゆっくり、間を取って、短い文で話すという呼吸を大切にして話せば、日本に住む外国人とは、意外と日本語で通じるものです。

外国人にとって方言は生活言語になりつつある

 地方に住んでいる外国人は、その土地の方言を使っていることもよくあります。西日本で使われる「~ている」の意味の「~トル」や否定の「ヘン」などは、その代表格。「雨が降っとる」や「そんなことあらへん」など、外国人にも普通に使われていますし、面白がって方言を学びたがる外国人もいます。生活する中で日本人と交流が進めば、自然と方言が外国人にとっても生活言語となっていきます。今や方言を話す外国人は当たり前になりつつあります。
 ただでさえ、特徴的な発音がある地方の言葉。流暢な山形弁でタレントとして人気を博したダニエル・カールさんならずとも、それを外国語の音声的特徴を交えて話すと理解しにくいこともあります。名古屋などで使われる「疲れた」という意味の「エライ」は、「エレァー」のように母音融合を起こすことがあります。私自身、外国人が使った「えらい」を、「地域」の意味の「エリア」と取り違えたこともありました。
 それでも地方でたくましく生きる生活者としての外国人は、よく方言を使っています。勝手な理解をしないで、きちんと確認して話しましょう。

日本の総人口の2%を外国人が占める現代、ビジネスでの付き合いも多言語化しています。相手に合わせた通じる言葉を、これまで以上に心がけましょう。

 これから地方にビジネス展開する際には、多言語化を考えるとともに、地域の外国人の使う日本語に配慮することが成功の秘訣です。

山田敏弘(やまだ・としひろ)

岐阜大学教育学部シニア教授(専門:日本語学・方言学)

1965年岐阜県生まれ。名古屋大学卒。名古屋大学大学院博士課程前期課程修了。大阪大学大学院博士課程前期課程を経て博士取得(文学)。国際交流基金派遣日本語教育専門家としてローマ日本文化会館で勤務経験を持つ。著書は「国語を教える文法の底力」「国語教師が知っておきたい日本語文法」「日本語文法練習帳」(くろしお出版)、「日本語のしくみ」(白水社)、「日本語のベネファクティブ」(明治書院)、「その一言が余計です。」(ちくま新書)、「あの歌詞は、なぜ心に残るのか」(祥伝社新書)など。昨年4月から今年3月まで、ラジオ深夜便(NHKラジオ第一放送、毎月第3木曜深夜)のコーナー「暮らしの中のことば」に出演した。