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異文化?いい文化!

第6回 日本語をやさしく話す技術

第6回 日本語をやさしく話す技術

 前回、日本に来た外国人には、日本語で話しかけてみようという提案をしました。そんなことで本当に通じるか心配になった方もいらっしゃるでしょう。反対に、いつもやっているけれども通じないことがあるという方がいらっしゃるかもしれません。
 そこにはちょっとしたコツがあります。このコツをつかめば、多くの外国人とのコミュニケーションが可能となります。ぜひ実践してみましょう。

くどいくらいがわかりやすい

 日本語の語彙のおよそ半数は、中国から来た音で読む漢語です。中には日本でつくられた和製漢語というものもありますが、いずれにしても漢語は、中国や韓国の人を除くと分かりにくい。それは、同音異義語の多さのためです。

 例えば「コーソー」という音で、みなさんはいくつ漢字を思いつきますか。「高層」「香草」「構想」「抗争」「好走」……。アクセントもすべて同じですから、文脈から漢字が思い浮かばなければ意味が取れません。日本語は、漢字という道具で意味を理解している言語なのです。
 しかも、英語のような音の長短を区別しない言語を母語とする人は、「コーソー」と言うのも難しく、強く発音する部分だけが長くなります。「コーソノビル」と言われて何のことかと思えば「高層ビル」だったということもありました。
 こんなときは、なるべく漢字ではなく「ひらがなの言葉」、つまり和語で話すよう意識してみましょう。もちろん、「会社」や「会議」のように頻繁に使う言葉は別ですが、無理せず「高いビル」と言ったり、「よい香り(におい)の草」と言ったりすればわかりやすくなります。

 また、語順はなるべく主語、目的語、動詞にそろえ、省略しないことも重要です。日本語は分かっている単語を省略したがる言語です。あえて言えばくどくもなります。しかし、外国人相手の場合、「おごるよ」だけでなく「今日は、私がお金を払います」と、あえてくどいくらいがわかりやすいのです。
 文脈に依存して理解して(させて)いるのが日本語です。わかりやすい言葉を選び、明確に述べる癖を付けましょう。

情報の伝え方にも注意が必要

 日本語の典型的な談話構造、平たく言えば話の進め方では、肝心なことが最後に述べられます。結局、「納期を少し待ってもらいたい」というだけのために2分も理由を並べ立てられれば、聞かされる側は参ってしまいます。要点を先に述べることも、外国人に伝わりやすい日本語の必須条件です。

 また、話すときにおしゃべりになりすぎないことも重要です。話し言葉に「。(句点)」がない人は結構います。しかし、人は「。」の1秒の間に理解をしようとします。わかってもらう話し方には十分な「間(ま)」が必要なのです。「ので」や「から」で延々とつなげる話し方がよく聞かれますが、重要なことを確実に伝達しようという場合には、ぜひ意識して「。」を入れるよう試みてください。それだけで相手に理解してもらいやすくなります。

「やさしい日本語」の4箇条。
・なるべく「ひらがな」の言葉を用いるべし。
・主語や目的語を省略するべからず。
・要点を先に述べるべし。
・間を入れて理解を確かめながら話すべし。

 実は、これらはすべて、小学校の先生が実践していることです。日本人相手にもわかりやすく話すために、上記の4箇条の実践は欠かせません。みなさんも、母語である日本語をコントロールして、上手に用いることから始めてみませんか。

山田敏弘(やまだ・としひろ)

岐阜大学教育学部シニア教授(専門:日本語学・方言学)

1965年岐阜県生まれ。名古屋大学卒。名古屋大学大学院博士課程前期課程修了。大阪大学大学院博士課程前期課程を経て博士取得(文学)。国際交流基金派遣日本語教育専門家としてローマ日本文化会館で勤務経験を持つ。著書は「国語を教える文法の底力」「国語教師が知っておきたい日本語文法」「日本語文法練習帳」(くろしお出版)、「日本語のしくみ」(白水社)、「日本語のベネファクティブ」(明治書院)、「その一言が余計です。」(ちくま新書)、「あの歌詞は、なぜ心に残るのか」(祥伝社新書)など。昨年4月から今年3月まで、ラジオ深夜便(NHKラジオ第一放送、毎月第3木曜深夜)のコーナー「暮らしの中のことば」に出演した。