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異文化?いい文化!

第2回 声の高さは社会的要因?

第2回 声の高さは社会的要因?

 グローバル化が叫ばれながら、実際には海外への出張や駐在の必要性があったり、留学を希望したりしない限り、なかなか外国人と接する機会はないのが一般的だと思います。ただ、国内の労働人口の減少などを鑑みれば、今まで以上に外国人との協働が様々な場面で不可欠になると考えられます。
 このコラムでは、より身近になるであろう異文化に対する理解を少しだけでも深めていただき、今後のビジネスなどで生かしてもらえるよう、日本と様々な国・地域の文化や習慣の違いを、言葉の使い方、コミュニケーションの取り方をメーンに紹介していきます。

声が高いと女性らしく

 日本に来た留学生から、たまに言われるのが、「日本人女性は、声が高いですね」ということ。皆さんは、お感じになりますか。

 日本では、声の高い女性と声の低い女性がいたら、どちらが「女性らしさ」で肯定的に受け止められるでしょうか。これは、さまざまな研究で明らかにされていますが、高い声の女性なのだそうです。しかも、高い声が男性受けしているからというわけではなく、女性から見ても声の高い女性のほうが「女性らしい」と評価されるようです。

 人間はオギャーと生まれたときに発する産声がおおよそ440Hzと言われます。440Hzは楽器のチューニングのときに鳴らす音叉(おんさ)の出す音ですから、意外と高い音という印象があるでしょう。それが、成長とともに声が低くなり、小学生では男女問わず200~400Hzの声を出しているとされます。しかし、男子は中学生ぐらいで、いわゆる声変わりによってさらに1オクターブ下がって100~200Hzとなりますが、女子は変声期がなく、同じ音の高さを保ちます。

声のトーンを落としてみる

 このようにして生じた音程の性差は、大人になっても変わりません。さらに、ここに日本における社会的要因によって、女性はより高い声を使い続けようとします。その社会的要因というのは、高い声のほうが「女性らしい」、さらには、「丁寧だ」という意味づけです。日本人女性は、体が小さいという生理的要因から高い声を出すだけではなく、文化的要請から高い声を出すようにさせられているということなのです。

 これが、「日本人女性は声が高い」という留学生の感想につながります。しかし、留学生がおしなべて感じているこの声の高さは、欧米で「子どもっぽい」とか「未熟である」などと捉えられています。このコラムをお読みいただいている女性の皆さんは、英語でも日本語でも、少し声のトーンを落としてみると信頼を得やすくなると思います。

欧米と比べ日本人女性の声のトーンは高め。グローバルな環境では、信頼度を下げる要因になりかねません。総じて低めに声をコントロールしましょう

 言語学では、声の高さ、抑揚、大きさなどを総称してパラ言語情報と呼びます。このパラ言語情報は、言語として伝えられる内容と同じだけ、あるいはそれ以上の「情報」を聞き手に伝えます。
 外国人に対しては、同じ内容を伝えるにも、声の高さひとつ変えることで信頼してもらえる情報となるかどうかに関わってきます。たかが声の高さと侮らず声の高さを意識して話すことも、国際化社会におけるコミュニケーションでは重要です。

山田敏弘(やまだ・としひろ)

岐阜大学教育学部シニア教授(専門:日本語学・方言学)

1965年岐阜県生まれ。名古屋大学卒。名古屋大学大学院博士課程前期課程修了。大阪大学大学院博士課程前期課程を経て博士取得(文学)。国際交流基金派遣日本語教育専門家としてローマ日本文化会館で勤務経験を持つ。著書は「国語を教える文法の底力」「国語教師が知っておきたい日本語文法」「日本語文法練習帳」(くろしお出版)、「日本語のしくみ」(白水社)、「日本語のベネファクティブ」(明治書院)、「その一言が余計です。」(ちくま新書)、「あの歌詞は、なぜ心に残るのか」(祥伝社新書)など。昨年4月から今年3月まで、ラジオ深夜便(NHKラジオ第一放送、毎月第3木曜深夜)のコーナー「暮らしの中のことば」に出演した。