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異文化?いい文化!

第1回 他国の振り見て我が振り学べ

第1回 他国の振り見て我が振り学べ

 グローバル化が叫ばれながら、実際には海外への出張や駐在の必要性があったり、留学を希望したりしない限り、なかなか外国人と接する機会はないのが一般的だと思います。ただ、国内の労働人口の減少などを鑑みれば、今まで以上に外国人との協働が様々な場面で不可欠になると考えられます。
 このコラムでは、より身近になるであろう異文化に対する理解を少しだけでも深めていただき、今後のビジネスなどで生かしてもらえるよう、日本と様々な国・地域の文化や習慣の違いを、言葉の使い方、コミュニケーションの取り方をメーンに紹介していきます。

親に対しても敬語で話す

 日本に住む外国人が何人いらっしゃるか、みなさんはご存じですか。2008年のリーマンショック以降は漸減したとはいえ、現在では約250万人の方が日本に住んでいます。ビジネスでも外国、特にアジア諸国とお付き合いすることが多くなった21世紀の日本。異文化交流からビジネスのヒントをもらいましょう。
 異文化交流では、やはり相互理解が重要です。しかし、世界にはさまざまな風習・習慣があるものです。思わぬ誤解から、せっかくの商談を失敗に終わらせないよう知識を持ちましょう。
 欧米の文化には慣れてきた日本人ですが、その反面、近隣のアジア諸国の異なる風習に戸惑うことがあります。日本では、バスや電車の中で年配者が立っている横で若者が座っているのはよくある光景ですが、韓国では許されません。
 儒教の国である韓国では、敬老精神が根強く残っているからというのが本来の理由ですが、最近では席を譲られることが当たり前だと考える年配者が、譲らない若者を罵倒したりして社会問題ともなっています。
 また、ビジネスにはつきものの接待で、年長者の前で酒を口にしてはいけません。どうしてもと勧められたら、横を向いて片手で口を隠して飲まなければなりません。先輩・後輩の序列に厳しいとされる日本の芸能関連の業界でも、ここまでは厳しくはないでしょうから、日本人は戸惑います。
 年長者を敬う気持ちは言葉にも表れます。韓国では、自分の父親であっても敬語で話すのが基本です。韓国へ行って商談をする場合、あるいは日本で韓国の方をもてなす場合には、年長者に配慮することをお忘れなく。

目上の人の目を見て話すのは失礼

 目上の人への配慮と言えば、私自身が配慮されて戸惑った経験もあります。それは視線です。ベトナムからの留学生は話をしているとき、いつも横を向いて視線をそらしていました。日本では「話は目を見て聞くもの」と決まっていますので、最初は不真面目な学生と思っていました。
 ある日のこと、耐えかねてこちらを向かない理由を尋ねたところ、ベトナムでは話をするときに目上の人の目を見ては失礼になるのだそうです。日本とは正反対の風習に驚きつつも、日本ではそれが失礼に当たることを指導しました。
 このような会話に伴う姿勢や視線は、非言語情報などと呼ばれ、コミュニケーションで重要なメッセージを発します。この「体から発せられる言葉」を学ぶことは、その言語を学ぶことと同様に重要です。
 なぜなら、異なる非言語情報に対し、人は往々にして感情的になるからです。ベトナムの企業との商談で、目を見て話さないのは敬意からという場合もありますので、勘違いしないように気を付けたいものです。
 とはいっても、すぐにその国の風習・習慣に気づくわけでないこともあるでしょう。大切なのは寛容性(tolerance)です。異文化に対してはおおらかにありたいものです。

アジアの国々との商談では、非言語情報の違いを意識して年配者に
配慮し、ビジネスを円滑に行いましょう

山田敏弘(やまだ・としひろ)

岐阜大学教育学部シニア教授(専門:日本語学・方言学)

1965年岐阜県生まれ。名古屋大学卒。名古屋大学大学院博士課程前期課程修了。大阪大学大学院博士課程前期課程を経て博士取得(文学)。国際交流基金派遣日本語教育専門家としてローマ日本文化会館で勤務経験を持つ。著書は「国語を教える文法の底力」「国語教師が知っておきたい日本語文法」「日本語文法練習帳」(くろしお出版)、「日本語のしくみ」(白水社)、「日本語のベネファクティブ」(明治書院)、「その一言が余計です。」(ちくま新書)、「あの歌詞は、なぜ心に残るのか」(祥伝社新書)など。昨年4月から今年3月まで、ラジオ深夜便(NHKラジオ第一放送、毎月第3木曜深夜)のコーナー「暮らしの中のことば」に出演した。