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企業インタビュー

仕事と家庭の両立のコツは? ダイバーシティの推進室長がアドバイス!

仕事と家庭の両立のコツは? ダイバーシティの推進室長がアドバイス!

子育てをしながら働く女性にとって、仕事と家庭生活の両立は悩みの種。どうすれば上手にこなせるのか、堀場製作所の森口真希さんに話を聞きました。森口さんは2人の子を持つ母親であり、ダイバーシティを推進する部署の室長でもあります。2つの立場からご自身の体験などを交えて両立のコツについてアドバイスをいただきました。

うまくいかず自分にブレーキをかけていた時期も

――働く女性にとって、仕事と家庭生活を両立させるのは大変です。森口さんが心がけていることはありますか?

「やじろべえの法則」を意識しています。やじろべえの法則とは弊社の創業者である堀場雅夫の考え方で、仕事と家庭をきっちり50対50にしようとすると、むしろバランスが悪くなる。仕事に集中しなくてはいけない時期は仕事に注力し、それが終わったら家庭などプライベートの時間に目に向け、やじろべえのように左右に振れながらバランスを取ればいいという考え方です。

これを聞いたとき、ワーキングマザーとして救われた気がしました。子供が生まれると、どうしても両方を50対50でやり遂げようしがちです。しかし、そう考えてしまうと精神的に疲れてしまい、仕事にも家庭にも良い影響を与えません。1日や1週間の中で、ときには1カ月や半年といった長い目で見てバランスが取れればいいと柔軟に考えるようにしています。

――両立に悩む女性は多いです。ご自身は最初からうまくいきましたか?

私も初めはうまくいきませんでした。産休・育休から復帰して間もない頃には、「仕事で何かもっと貢献しなければ」と頭では分かっていても、「周囲に迷惑をかけてしまうのではないか」「最後までやり遂げられないのではないか」という気持ちが先行して、自分でブレーキをかけていた時期が1~2年ほどありましたね。

社内では「信頼の貯金」と紹介しているのですが、日頃から信頼関係を築いておけば、いざというときにはお互い様という気持ちを生みます。自分ができるときにはしっかり仕事でアウトプットを出したり、周囲を助けたりして(=貯金する)、できないときには人に頼る(=貯金を取り崩す)。子育てで仕事ができる時間や業務量が少なくても、「私なんて……」「今、子育て中だから……」といった理由で普段からブレーキをかけているともったいない。できる範囲でやってみるといった姿勢を周囲の人たちは見ています。

長時間労働よりメリハリ、社員の働き方へ評価に変化

――ダイバーシティの推進室長として活躍されています。プロジェクト名「ステンドグラスプロジェクト」のネーミングの理由は?

弊社グループは国内外で約8000人の従業員が働いています。会長の堀場厚は「堀場の社員はステンドグラスのように色も形も個性的。だがその多様性が組織の強み」とよく話します。まさにダイバーシティの考え方であり、プロジェクト名にしました。

プロジェクトは2014年に国内グループ企業縦断型でスタートし、2017年には推進室を発足、組織化しました。現在は推進室が中核となり、経営層と人事部、現場社員によるワーキンググループそれぞれの思いをつなぎ、働きやすい環境の整備実現に向けて取り組んでいます。

――プロジェクトを進めていく中で社内に変化はありましたか?

制約のある社員に対する評価が変わってきたと感じています。例えば、短時間勤務制度を利用している社員は、フルタイムの社員に比べて働く時間数は少なくなります。しかし、社員の間に「あの時間の中でここまで仕事をやるのは、タイムマネジメントが素晴らしい」という見方が出てきました。長時間労働が常態化している人より、メリハリをつけて成果を出している人のほうが評価されやすい雰囲気に変わりつつあります。また、推進室に「ステンドグラスプロジェクトがあったから働き続けることができる」「制度のおかげで育休から復帰できた」といった声が寄せられるようになり、担当者としてうれしい限りです。

――2019年3月、経済産業省と東京証券取引所の「なでしこ銘柄」に初選定されました。兼業制度に注目が集まったようですね。

2003年から業務に支障がない範囲での兼業を認めており、これまで延べ100人以上が利用しています。「なでしこ銘柄」で注目されたのは、広報部門の社員が自身の子供の発達障害をきっかけに、発達支援の資格を取得したり、親同士のネットワークのためのNPOを立ち上げたりしたケースです。発達障害・支援に関する講演依頼やメディアからの取材があり、その経験が本業の広報の実務にも生かされているようです。

また、私もこの制度を使って社外メンターマッチングサービスの兼業をしています。2017年度の京都府の事業で「メンター・メンティーマッチング支援」がありました。事業終了後、メンターを務めたメンバー数人が中心になり、事業継続のためのNPOを発足。私は立ち上げ当初から関わり、今はキャリアメンターの1人でこの経験の蓄積も本業に生かせると感じています。

社員のリアルなニーズから支援制度を考える

――兼業・副業は今、働き方改革の一環として多くの企業が検討しています。約15年も前に導入したきっかけは、何かあったのでしょうか?

社内の支援制度は、社員のリアルなニーズから作るというのが弊社の考えです。人事部が「こういう制度があったほうがいい」いうところから作るのではなく、本当に困っている社員が声を上げ、人事がその悩みを聞き、解消するような制度を導入します。兼業許可制度は、ある社員の「仕事は続けたいが、家業にも関わらなくてはいけない」という悩みから制度化されました。きっかけは1人のニーズであっても、制度化すると他の多くの社員にも役に立つことが実は多いのです。

1時間単位で有給休暇が取れる時間単位有給休暇も社員のニーズから生まれました。それまで半日や1日の有給休暇はあったのですが、子供のちょっとした学校行事のたびに有休を取っていると、あっという間に休暇が少なくなる。1~2時間だけ仕事を抜けて学校行事に参加するといった使い方ができるので子育て中の社員はもちろん、他の多くの社員も活用しています。

2019年1月からは自宅など職場以外でも働ける「Good Place勤務制度」(テレワーク制度)を導入しています。それ以前も在宅勤務制度はありましたが、育児や養育、介護をしている社員に利用対象が限定されており、利用日数の上限も定められていました。これらの限定を基本的になくすことで、国内すべてのグループ企業の社員が、利用することが望ましいと現場で判断された場合に、すぐに利用できる状態にしました。

――推進室長の立場から見て、社員には支援制度をどのよう活用してほしいですか?

様々な支援制度がありますが、利用の促進が難しい部門や組織がまだまだあります。なぜ利用できないのか、他に支援の方法はないのか、経営層や人事とともに考え、全体の意識を上げていくことは推進室の役割の1つです。社員を見ていると、会社への貢献と自分が理想とするワークライフバランスの実現のどちらか一方に片寄りがちな人も少なくありません。どちらかではなく、どちらも必要な視点です。仕事や自己研鑽、プライベートの時間で得た多様なスキルや視点を通して社員1人ひとりが成長することで、企業もそこで働く人たちもどちらもより良い方向に進んでいけるのではないでしょうか。

客観的なアドバイスをしてくれるメンターは貴重

――最後に仕事を続ける女性にアドバイスを。

私が大事にしているのは、感謝の気持ちを忘れないことです。仕事仲間や家族に協力してもらわないと、仕事と家庭の両立はできません。また、キャリアや人生で自立できるように考えて行動すると、見える視点が違ってきます。社会人として働くことが最初の自立ですが、働き続ける中でパートナーがいてもいなくても、自分の足で立てるような環境を作る意識を持ってください。

メンターやサポーターを持つこともお勧めします。客観的にアドバイスしてくれる人は、自分が成長していくための貴重な存在です。会社の上司や先輩ではアドバイスしづらい内容もあるため、メンターは利害関係のない社外の人のほうが良かったりします。日本ではメンター・メンティーの関係になる文化はまだそれほどありませんが、私にはこれまでメンターになってくれた方がいました。そういう方々がいたからこそ心が折れずに頑張ってこれた気がします。

株式会社堀場製作所
ステンドグラスプロジェクト推進室 室長
兼 秘書室 副室長
森口 真希さん