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国家公務員として15年勤務。総合商社へ転職をしたいが……

国家公務員として15年勤務。総合商社へ転職をしたいが……

国家公務員として15年勤務。総合商社へ転職をしたいが……(緑の公務員、38歳、経営幹部・コンサル)

現在、国家公務員として働いています。能力発揮と収入向上を目的に総合商社への転職を決心し、転職活動を行っていますが、書類審査をなかなかクリアできません。国家公務員として約15年間勤務し、海外勤務や組織経営の経験を積み、語学力を磨き、自分としては必ず総合商社の役に立てると考えているのですが……。

職種は、人材開発や国際商取引に焦点を絞っています。官公庁勤務者が総合商社に転職する場合、どのような着意が必要でしょうか?

公務員としてのキャリアを振り返り、総合商社でスペシャリストとして自分にしかできない仕事は何かを考えてみては?

キャリアコンサルタントとして仕事をしていると、さまざまな業界、職種の人と会う機会があります。その中で一番会う機会が少ないのが公務員の方です。現在の経済不況下では、公務員になりたいと思う人は大勢いても、公務員から民間に転職したいという転職希望者は、非常に少ないためでしょう。そのような見方をすれば、緑の公務員さんにとっては、非常に良い転職環境が整っていると考えられます。単純に公務員人材の需要と供給をみると、供給が極端に少ないので、転職マーケットにおいては有利になるのではないでしょうか。

しかし、採用のニーズ自体が低迷しているのも事実です。業界、職種を絞って転職をしたいと思った場合、転職先を見つけるのは簡単ではありません。

まず、緑の公務員さんの今回の転職について整理してみましょう。
○年齢:38歳
○経験:国家公務員 15年
○希望業界:総合商社
○希望職種:人材開発、国際商取引

今回の質問では、書類選考が通過しない理由として公務員という点に着目しがちですが、それ以外の要素が重要です。緑の公務員さんは38歳で異業界への転職を希望しています。職種に対する知識は持っていたとしても、その道の専門家ではないと思います。その点から考えると、ご希望通りの転職は非常に難しいでしょう。一般的に30歳を過ぎての異業界、異職種への転職は難しいと言われています。30歳を超えると即戦力の人材が求められるので、異なる経験の人材の採用ニーズは減少するからです。

また、35歳を過ぎるとさらにハードルが高くなります。35歳を超えるとマネジメント能力を問われるからです。一般的な会社であれば35歳前後で係長になり、その後課長、部長と昇進していくはずです。35歳以上の転職希望者には、仕事や業界知識だけでなく、マネジャーとしての能力(もしくはポテンシャル)が重要になってきます。

緑の公務員さんが書類審査をクリアできないのは、現職が公務員だからではなく、上記の理由が大きいように推測します。とは言うものの、35歳以上の年長者であっても異業界に転職している人は大勢います。その方々に共通しているのは、何か特別な専門性を持っていて、そのスペシャリストとしての力を発揮するための転職です。もし総合商社をご希望されるのであれば、その会社で自分にしかできないことは何かを考える必要があります。

いただいた質問には、「海外勤務や組織経営の経験を積み、語学力を磨き、自分としては必ず総合商社の役に立てると考えているのですが……」と書いています。会社の役に立つという観点で考えると、その通りかもしれません。しかし、総合商社では同じような点を強みにしている人は大勢働いています。同じようなスキル・能力を持った社員がいるのに、それでも外部から採用をするには、相当高いレベルのスキル、知識が求められます。もし緑の公務員さんが「絶対に総合商社で働きたい」という強い思いがあるのでしたら、総合商社で自分にしかできない仕事は何かと考えることをしてみてください。

最近、私の知人(元公務員)が民間企業に転職しました。彼は国税庁で仕事をしていました。しかしMBA(経営学修士)で勉強していく中で、民間で仕事をしたいという気持ちが強くなり、転職の相談にやってきました。転職を決断した当初は、「投資銀行業務をしたい」と言っていたのですが、32歳の未経験者を投資銀行部門で採用してくれる金融機関はほとんどありません。そこで私から提案したのは、「とりあえず金融機関で仕事をしてみては?」ということでした。彼は税理士ではないのですが、税金のスペシャリストです。特に法人税の分野に非常に強く、とても深い知識を持っていました。

そこで紹介したのが、某銀行の法人部門の仕事でした。こちらの金融機関では、さまざまな大手企業のコンサルティング業務を行っています。そこには税理士などのスペシャリストも多数いますが、国税庁(局)出身者はいませんでした。役人側の知識、見識を持っている彼であれば、必ずその銀行に役立つのではないかと思い、紹介・応募しました。その後、数回の面接を経て、想定通りのポジションに就くことができました。将来的には社内の公募制度を活用して、投資銀行業務に携わりたいと考えているようです。

このように、緑の公務員さんにも自分にしかできない仕事が必ずあるはずです。公務員としてのキャリアを振り返り、総合商社で自分にしかできない仕事は何かを再度検討した上で、転職の方向性をもう一度考えてみてはいかがでしょうか。