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攻める中小企業 勝負の一手

第8回 世界最高レベルの技術力と最新の工場で業界の先駆者に

第8回 世界最高レベルの技術力と最新の工場で業界の先駆者に

 国内には現在、約380万社の企業があり、このうち中小企業に分類される会社は99%以上を占めます。国内の経済基盤を支え、地域経済の活性化を担う、日本経済の「根幹」 ともいえる中小企業には、長年培った伝統を生かして年月を重ねている会社もあれば、最新のIT(情報技術)システムを導入し、独自の経営戦略を打ち出して事業展開をしている会社もあります。
 この企画では、資金や人材が限られる中でITの利活用に積極的に取り組んだ結果、一定の成果を上げ、経済産業省の「攻めのIT経営中小企業百選」に選ばれる理由となった活動事例を基に、将来を見据えてしっかりと前を向く中小企業について焦点を当てます。
 今回は、年々要求レベルが高まる顧客の要望やニーズをくみ取るため、「一拠点一貫生産」「自働化生産ライン」「最新設備の導入」などの生産体制を構築し、「印刷・パッケージ業界のオンリーワン企業」を目指す横浜リテラをクローズアップします。

品質低下と製造原価高は工場の分散化にあり

 スーパーの食品売り場などでは、客が商品を選びやすいようにカテゴリー別に分け、似たような商品を1カ所に集めて陳列しているが、目移りしてしまうこともある。そんなとき、商品選びの決め手の1つとなるのがパッケージではないだろうか。店頭で瞬間的に客の心をつかむ役割を担うパッケージは、商品の顔ともいえる。商品の第一印象を左右しかねないパッケージづくりで、企画・提案から製造・配送まで一拠点一貫生産体制で請け負っているのが横浜リテラだ。

 同社の創業は1933年。67年に現在の本社がある横浜市戸塚区(横浜印刷工業団地) に進出し、印刷や表面加工、打抜、製函までを請け負う一貫生産体制をスタートさせた。時代の移り変わりとともに最新の設備を導入しながら、工場などを次々に建設、増床してきた。「付け焼き刃のように設備の拡張や修繕を行った結果、工場は分散化。工程ごとに場所(工場)を変えながら作業を行わなくてはいけなくなった」と星野社長は自戒を込めて振り返る。

 分散化した工場は動線も悪く、時間のロスはもちろんのこと、工場を移動する際に製品を外気にさらすため汚れのリスクが発生した。それらが品質低下と製造原価高を招く原因となっていた。問題解決のためには分散化している工場を1カ所に集約し、再編する必要があったが、かなりの費用が必要になる。星野社長が二の足を踏んでいた、ちょうどその頃、大手食品会社の集団食中毒事件が起きる。

食中毒事件をきっかけに新工場建設を決意

 この食中毒事件をきっかけに、食品の包装資材などに対して顧客から厳しい要求が突き付けられることが多くなった。技術力が下がったわけでもないのに、何十年も同じスペックで納めていた製品が、ある日突然、返品される。返品対応や原価高によって経営が圧迫され、星野社長は経営者として危機感が非常に強くなった。さらに就職氷河期という時代背景のなか多数入社した優秀な新入社員の将来を思うと、現状を突破するには分散化している工場を集約して新工場を建設するしかないと決断を下す。

 新工場の建設にあたり、神奈川県や横浜市の助成制度をフル活用した。新工場の建設候補地には神奈川県外や横浜市以外の地域も挙がっていたが、星野社長は「人生を預けてくれている従業員たちとともに、長年慣れ親しんできた戸塚の地での工場再編にこだわった」と新工場を戸塚に建設した理由を明かす。労働力確保の面や都内からも30分という地の利も魅力的だった。

 2004年、大規模な業務改革プロジェクトの一環として、トヨタ生産方式の研修を全社員で受講。これまでのアナログでの生産体制では限界があると感じ、09年には本社・工場・物流センターを一拠点に集約。防虫・防塵・抗菌対策を徹底した世界最高水準のクリーン工場を建設する。

 工場には物流の効率化や人的負担の軽減などを実現させるため「自働化生産ライン」を導入。外部の協力を仰いで開発した生産管理システム「LETS(Litera Evolution Technology System)」と連動させることで、製造の進捗状況をはじめ、材料、見積もり作成、受注、売上、支払い、会計などの情報を一元管理し「一拠点一貫生産体制」をサポートする体制を整えた。

パッケージには消費者の興味をそそる細やかな工夫が随所に見られるパッケージには消費者の興味をそそる細やかな工夫が随所に見られる
 その結果、品質管理の「ISO9001」、環境管理の「ISO14001」、工程管理能力を認証した「Japan Color認証」を取得することに成功。有名印刷機メーカーとも連携し、菊全版両面10色刷オフセットUV印刷機を生産ラインに導入するなど、生産力と品質が格段に向上し、100万個単位の大ロットの受注から、高品質・多品種少量・短納期が可能になった。来季からはLETSをバージョンアップさせ、オペレーターが使う機械の電流波形を分析して、働き方の見える化プロジェクトをスタートさせる予定だ。

 また同社では日報や勤怠管理、顧客からのクレームや取引状況をまとめた顧客情報を社内で共有するため、グループウエアLIPS(Litera Information Potal Site)も活用しており、全体最適を実現するIT基盤として役立てている。

日々の業務における無駄を徹底的に洗い出す

 食品加工工場に匹敵するクリーン工場の運用実績を背景に、パッケージ製造の後工程となる「菓子詰め作業」など高付加価値の新しい仕事が舞い込むようになった同社。業績アップにより、多様な人材の採用が可能になり、障がい者の雇用をはじめ、産休・育休、時短勤務の利用促進など雇用環境の整備にも積極的に取り組んでいる。

 星野社長に攻めのITでの成功の秘訣を聞くと「社内で見えていた無駄を取り除いただけ」と控え目な答えが返ってきた。日々の業務で何が無駄なのか徹底的に洗い出す作業が必要ということなのだろう。単にITを取り入れるのではなく、経営者は自社のビジネスモデルを再確認したうえで 、業務とITとの橋渡しを行っていくことが重要になる。改革のタイミングを見極め、将来も見据えたIT投資を行うことが経営者に求められる最も重要な資質といえる。

トップの素顔

星野社長と商品・パッケージ業界とのつながりは、幼稚園児だった頃、箱折りの内職をしていた祖父の仕事を手伝ったことがきっかけ。「内職を手伝うことでもらえた小遣いで駄菓子を買った喜びは、今でも忘れられない」と懐かしむ。小学生時代には先代の社長で父親の星野尚氏に配送助手として同行していたこともある。家族と大切な時間を過ごしつつ、子どもながらに働く喜びを実感していた星野社長にとって、業界に新風を吹き込み続けることは働く喜びを教えてくれた業界への恩返しなのかもしれない。

勝負手

  • 一拠点一貫生産を実現させるため、2009年に「自働化生産ライン」を導入した世界最高水準のクリーン工場を建設
  • 総合管理システム「LETS(Litera Evolution Technology System)」の導入
  • グループウエア「LIPS(Litera Information Potal Site)」の導入
  • 印刷機メーカーと連携し、世界初の菊全版両面10色刷オフセットUV印刷機を生産ラインに導入

結果

  • 新工場の稼働で2交代制が可能になり、生産力も倍増。パッケージ製造の後工程となる「菓子詰め作業」など高付加価値の新しい仕事も舞い込むようになり、売上高、雇用数、加工高はともに上昇の一途をたどる。売上高は40億円から50億円(見込み)、加工高は7億円から16億円(同)、雇用数は205人から256人と、それぞれ大幅にアップ。協力指定会社は2社から8社に増加している。国際規格の「ISO9001」「ISO14001」の認証を取得しているほか、安定した品質の印刷物を作成できる工程管理能力を認証した「Japan Color認証」を取得することに成功。

会社概要

社名:横浜リテラ
住所:〒245-0053 神奈川県横浜市戸塚区上矢部町1965-4
事業内容:製造業
http://www.yokohamalitera.com//

攻めのIT経営中小企業百選

【攻めのIT経営中小企業百選】とは

ITの効果的な活用に積極的に取り組み、製品やサービスの付加価値を高め、競争力を高めている中小企業をベストプラクティスとして選定する経済産業省の取り組み。2015年から3年間にわたって1年ごとに数十社ずつを選び、今年5月に合計100社を選定した。

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