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攻める中小企業 勝負の一手

第7回 建設業界の明朗会計を志し、情報の可視化と共有を徹底

第7回 建設業界の明朗会計を志し、情報の可視化と共有を徹底

 国内には現在、約380万社の企業があり、このうち中小企業に分類される会社は99%以上を占めます。国内の経済基盤を支え、地域経済の活性化を担う、日本経済の「根幹」 ともいえる中小企業には、長年培った伝統を生かして年月を重ねている会社もあれば、最新のIT(情報技術)システムを導入し、独自の経営戦略を打ち出して事業展開をしている会社もあります。
 この企画では、資金や人材が限られる中でITの利活用に積極的に取り組んだ結果、一定の成果を上げ、経済産業省の「攻めのIT経営中小企業百選」に選ばれる理由となった活動事例を基に、将来を見据えてしっかりと前を向く中小企業について焦点を当てます。
 今回は「フェアネス」「透明性」「顧客側に立つプロ」を企業理念に掲げ、ICT(情報通信技術)を駆使した建設プロジェクト情報の可視化と共有を率先して行うことで、顧客との信頼関係を構築する明豊ファシリティワークスをクローズアップします。

官民で需要が期待される発注者支援ビジネス

 建築工事費が膨らみ過ぎたことが原因で、2020年の東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場の設計案が白紙撤回され、新たに設計施工を担当する業者の公募が行われたことは記憶に新しい。

 中身(内訳)がわかりづらいブラックボックスのような建築工事費の推移を可視化し、自らのフィー(手数料)も顧客に開示して「建設業界での明朗会計」を実現させた会社がある。発注者支援ビジネスのフロントランナー、明豊ファシリティワークスだ。

 発注者支援ビジネスは、日本ではまだあまりなじみがないが、欧米では盛んに行われている。「コンストラクション・マネジメント(CM)」方式と呼ばれる工事の管理手法で、建築プロジェクトの品質・工期・コストを、発注者側に立ってマネジメントを行い、発注者の要望実現とリスクをコントロールする。そうすることでフィーを受け取る。

 日本の建設業界では長年、元請け会社(ゼネコン)が発注者支援の役割を担っていると考えられてきたことから、発注者支援ビジネスに単独で費用を払うという概念は定着していなかった。しかし近年、企業経営者層の「利益相反」への意識の高まりと透明性を求める発注者のニーズは高まっており、発注者支援に精通した第三者的な立場のプロが、企画構想段階から発注者の立場に立ってさまざまな方法を検討する発注者支援ビジネスは、民間を中心に着実に広がりを見せつつある。今では公共建築事業の停滞を防ぐ有効な手立てとして、国も発注者支援ビジネスを活用しようと動き始めている。

「隠しごとができない社会」の到来で事業転換

 同社の創業は1980年。創業当初は現在の発注者支援ビジネスとは無縁のウインドーフィルムの輸入・販売を手がけていた。事業領域を広げるため、建設業の資格をとり工事請負業などに携わるようになるが、その際に顧客との信頼関係を構築するために生み出されたのが「明朗会計」だ。従来型の一括発注方式では元請け会社の工事原価や取り分を顧客に開示することはなく、請求金額も一括して示されることが多い。そこで、同社は一部の受注案件について、元請け方式(明朗会計にする必要のない元請け契約)であっても原価と自社の取り分の割合を明らかにし、内訳をはっきり示すことにした。

 1990年、明朗会計に基づいた設計&プロジェクト・マネジメントでオフィスづくりに進出。90年代後半以降、インターネットの普及によりデジタル時代が到来すると、当時社長だった坂田明会長は「隠しごとができない社会がやってくる」と直感し、全面的な事業転換を決意。2001年に社名を現在のものに改め、「フェアネス」「透明性」「顧客側に立つプロ」を企業理念とする発注者支援ビジネス1本に絞ることにした。

顧客と社員の双方にメリットが生まれる

 同社の最大の強みは、ICTシステムの内製化を一手に引き受けるSI部と、約20年分のデータを処理・分析して、現場で活用できるようにするデータ活用推進室を社内に設けている点だ。02年から導入した「明豊マンアワーコスト管理システム」は、顧客に対して根拠のあるフィーを提示できるように強みを生かして開発した代表例といえる。全社員の業務とアクティビティーが可視化されるため、社員の能力に合わせて時間当たりのコストを定量化できるほか、労働時間や給与計算はもちろん、業務の品質管理やプロジェクトの進ちょくをシミュレーションする場合も精度の高い予算を見積もることができる。

 さらに、優秀な人材の確保を目指し、テレワークを用いた「どこでもオフィス」を、全社員を対象に長年にわたって活用している。04年にはクラウドサーバー上で個々のプロジェクトに関わるすべての情報が社内外の事業関係者とリアルタイムで共有できる、完全ペーパーレスのシステム「BCP(ビジネスプロセスコラボレーション&マッピングシステム)」の運用も開始した。こうした取り組みはさまざまな方面から評価され、17年版の総務省の情報通信白書にも取り上げられている。

情報通信白書にも取り上げられたペーパーレスへの意識は非常に高い情報通信白書にも取り上げられたペーパーレスへの意識は非常に高い
 当初は、自らの仕事の種類や時間を会社側に細かく申告することを負担に感じる社員もいたが、申告されたデータはさまざまな切り口から目に見える形で活用され、今では社員の負荷の調整を行うなど、社員の労働環境の改善にも役立っている。「会社からやらされているという意識ではなく、自分たちのシステムなのだと納得してもらうことが重要」と坂田会長はアドバイスする。

 「デジタルな働き方」と「見える化」活用のスキルが向上した結果、16年度の社員1人の1カ月当たりの残業時間の平均は6年前と比べ、半分以下になったそうだ。どんなに素晴らしいシステムを導入したとしても、利用者がそのシステムの価値を認めず、高い納得感が得られなければ効果は期待できない。利用者の声をその都度反映するなど改善策を施しながら、利用者本位の仕組みを構築することが、会社の進化を支えるようなシステム開発に結び付く。

トップの素顔

坂田会長は大手プラント会社出身で、建設業界とは無縁の立場。完全なベンダーフリーの立場を貫くため、全社員に対し関係する業者との飲食を禁止している。顧客も含め、仮に飲食を共にすることがあれば割り勘にするそうだ。愚直ともとれるこの正直で誠実な姿勢こそが、顧客の信頼を勝ち取り、成長の源泉になっているのかもしれない。

勝負手

  • 情報システムの内製化を支えるSI部とデータ活用推進室を自前で設置
  • 「明豊プロジェクト管理システム」と、「明豊マンアワーコスト管理システム」の導入
  • 「BCP(ビジネスプロセスコラボレーション&マッピングシステム)」の導入
  • どこでもオフィスと、柔軟性の高い全社テレワーク制度の導入

結果

  • 過去4年間の売上の伸びは、約1.6倍に拡大。公共機関、大企業からの直接受注(件数の3分の2はリピートオーダー)はフィーベースでは7割弱を継続。

会社概要

社名:明豊ファシリティワークス
住所:〒103-0022 東京都千代田区平河町2丁目7番9号 JA共済ビル6階
事業内容:建設サービス業(発注者支援事業)
http://www.meiho.co.jp/

攻めのIT経営中小企業百選

【攻めのIT経営中小企業百選】とは

ITの効果的な活用に積極的に取り組み、製品やサービスの付加価値を高め、競争力を高めている中小企業をベストプラクティスとして選定する経済産業省の取り組み。2015年から3年間にわたって1年ごとに数十社ずつを選び、今年5月に合計100社を選定した。

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